日本の会計分野における実証研究はこれから。

「経済学を味わう」の首藤先生のページにおいて冒頭気になる点があったのでnoteしておきます。

それは、日本の会計分野における実証研究の少なさについてです。記事をたどると徳賀先生、大日方先生が調査でまとめられた図表が「原価計算研究 2022」あったのでグラフにあらわしました。

に日米でかなりの差がありますね。解説した首藤先生のコメントも引用しておきます。

徳賀・大日方2013の調査図表をもとに著者グラフ作成

それでは日本の会計学の現状はどのようになっているのであろうか。図表1は,日米の代表的なジャーナルである雑誌『會計』とThe Accounting Reviewの財務会計の実証研究の数を年代別に比較した結果である(徳賀・大日方 2013)。日本の『會計』は,The Accounting Reviewと比較した場合,実証研究の数は非常に少ないことが見て取れる。例えば,2008年では,米国では実証研究の割合が90%を超えるにもかかわらず,日本では20%程度にとどまっている。これは,日本では規範的・記述的研究が支配的であることを示唆している。

出所:日本の管理会計研究の現状と将来展望―財務会計研究の視点から
首藤 昭信


この結果はなんとなく、日本的だなという印象をうけました。と同時にまだまだ日本の会計は実証研究、首藤先生の言い方を使うと実証的会計研究が道半ばであることがわかります。

では、ここでいう実証的会計研究とは何をさすのか、首藤2020のP225図表11-1の会計体系で以下のようにあらわされています。(桜井先生2019の財務会計講義からの引用)

企業 →「①測定」→ 報告書 → 「②伝達」 → 投資家他

①測定:規範的会計研究
②伝達:実証的会計研究

私はこの図式と解説により、日本企業の会計に携わる方の多くが財務諸表という報告書の作成に重きをおき、投資家、株主、債権者、消費者他への伝達に会計を使うことへの移行が進んでいないともいえるのではないかという解釈を得た。なるほど日本の会社の会計系組織をみていてもうなづける。まだまだこの測定領域にしめる偏りは大きなものではないだろうか。

今後、日本においてこの伝達会計、すなわち実証的会計研究が進むにつれて私の属する会計においても数理モデル化などによる理解が進むことに期待したいし、その役割の一端を自分自身も担いたいなと思う次第です。

この辺りは興味の領域なのでまた今後も調べていきたい。

参考: 
原価計算研究 2022 Vol.46 No.1 首藤
経済学を味わう -- 東大1、2年生に大人気の授業 単行本 – 2020/4/20

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