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介護の仕事はカッコイイのだ!〜100年の人生の幕引きに寄り添える奇跡

 親の死に目にも会えない時代、高齢者施設では毎年必ず幾人かの100年の人生を閉じる瞬間に立ち会うことができる。
 自然に枯れていくひとりの人間の一生の最後の場面は必ずしも美しいばかりではないけれど、波乱万丈の人生のラスト・ステージをこの施設で過ごしてくださったことに、そして人生のラスト・シーンに、ご家族とともに私たちを寄り添わせてくださったことに、いつも感謝している。
 戦争を生き、戦争で大切なものをたくさん失い、戦後の混乱期を逞しく乗り越え、復興を支えてきた方々の月日は尊い。
 経年劣化した身体は麻痺しても、老朽化した脳の回路は誤作動しても、私の目の前にいるこの方々はみな愛おしい。
 100年。おそらく人生最後のなかまに選ばれた私達は、明日死にゆく方々に、今日何をすべきなのか。自宅ではなく、施設が死に場所になる方々に、明日、何ができるだろう。
 人間の最後の暮らしを演出できる私達は、実はとてもカッコイイのだ。自分というまだまだ青かったり、黄色かったりする未熟者が、今の自分の精一杯を注いで、その暮らしにゆっくりゴールまで寄り添い歩む仕事。
私達だけに与えられたかけがえのない役割。

 今年も、何人、見送らせていただいただろうか。この奇跡に感謝して、また新しい年を迎える。

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