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場面かんもく支援【親・先生向け】 家では話せる!でも、学校や保育園・幼稚園で話せない子どもたち。どう支援するのか?

なぜ、「場面かんもく」を学ぶのか?

◆場面かんもくの子どもに出会う可能性は意外(?)と高いから。

500人に1人! 場面かんもくの子どもがいる。(Matsushita. et al., 2019)
0.2% といったらかなり少なく聞こえるかもしれんけど・・・
幼稚園の3割 小学校の4割 中学校の5割 の園や学校に在籍している
と言われると多い気がする。
もし学校の先生やったら、場面かんもくの子どもがいる学校に赴任する可能性もけっこうあるんじゃないかな。

◆日常生活でも授業でも、子どもも先生たちも困っていることが多いから。

だから、場面かんもくを正しく理解して、早く支援をしていくことが大切
そして、正しく理解するために、この記事を読んで一緒に勉強していこう♪


◎はじめに 場面かんもくって何?

◆主な症状は?

主な症状:家庭で、家族となら話せるのに、幼稚園や学校では声が出ない。
※さらに、声が出ないだけでなく・・・
 感情(喜怒哀楽)が出ない、「感情表出の抑制」
とか、
 歩きたくても足が動かなかったり、ペンが持てない、「行動の抑制」
とか、
 給食を教室で食べられない といった症状がでることもある。

◆どうやって判断するの? 5つの判断基準

①言語能力はある
 ⇒家では話せるんやから、言語能力はある んよね。

②場面によって話せなくなる
 ⇒学校などの特定の場面ではなせない ってことよね。

③1ヵ月以上続く
 ⇒入学したときは話せなくても、徐々に話せるようになる場合は、場面かんもくじゃない。 みんな入学したては緊張してるよね。

④母語が日本語
 ⇒日本語に慣れていない場合には、他の支援が必要になってくる よね

⑤吃音やASD(自閉スペクトラム症)などが主要因じゃない。
 ⇒これらの場合は、学校で話せないとしても、「吃音」や「ASD」と診断されることになる。
 ※でも、話せなくて困っているという状況は同じやから、
  それぞれの障害特性を踏まえたうえで支援を考える っていう、
  より一歩進んだ支援が必要になってくるんよね。

◆よくある4つの誤解

①ただのおとなしい子ども
 学校で話せないだけで、できることは多いから、こんな誤解をうけるんやな。
でも! 困った場面が多くなり、学校がつらいところになる前に、早めの支援が必要やねんな。

②反抗的な子ども
 返事もないし、表情が変わらないこともあるからこんな誤解を受けるんやな。でも無視して反抗してるわけじゃないんよな。
※上で書いたけど、感情(喜怒哀楽)が出ない、「感情表出の抑制」とか、
 歩きたくても足が動かなかったり、ペンが持てない、「行動の抑制」とか、
 給食を教室で食べられない といった症状がある子どももおるんよな。

③放っておけば治る
 本とかインターネットをみたら、「自分で(自力で)治した」っていう人もでてくるから、こんな誤解を受けるんやな。
 でも、何の支援もされずに話せないままの人もけっこうおるんよ。
だから、早めの支援が大切なんよね。

④何かトラウマがあるから場面かんもくになる。
 なにかきっかけとかトラウマになる出来事を探したくなるからこんな誤解を受けるんやな。
 でも、きっかけになる出来事がなくても、場面かんもくになる人はたくさんいるんやで。

(早めの支援が大事やっていうのはわかったから、どうやって支援をすすめていくのか教えてくれー!)

◎早期発見のポイントは「担任の先生」

◆担任の先生が判断しやすい

5つの判断基準(①言語能力はある、②場面によって話せなくなる、③1ヵ月以上続く、④母語が日本語、⑤吃音やASD(自閉スペクトラム症)などが主要因じゃない。)を踏まえたうえで、
”その子が学校(園)で話さない”、”その子の声を聞いたことがない”場合には、ためらわずに保護者に連絡をして、家で話しているかを確認する。
⇒もし家では話していたら、場面かんもくといっていい。
(ただし、「場面かんもく」という診断に関しては、医学的に明確な診断基準が定められているので、お医者さんが診察・診断を出す必要があるよ!)
⇒ここが支援のスタート!!

◆”話せるようになる支援”をする前にできること  話せない子どもとの信頼関係をどうむすぶか?

例1:子どもが返答しなくてもいい言葉がけをする。
   ・「~だね」「おもしろそうだね」など、
    子どもがうなずくだけでもできる言葉がけをする。
   ・用事を頼んで褒める とか、 「ありがとう」を伝える。
例2:話せなくても授業に参加しやすくする。
   ・「授業では指名しないから、答えがわかったら手を挙げてね」
   ・朝の健康観察(元気ですか?)をグーパーやカードで答える。
   ・グループに分け、全員で音読や歌唱をする(口パクでもいいよ)。
   ・ノートやタブレットに書いたことを、代わりに読んでもらう。
   ・問題の答えや言いたいことなどを黒板に書かせる。
   ・選択肢を出して手を挙げる。
※大切なこと
場面かんもくの子どもは、たとえ話せなくても、人の話は聞いてるし、理解もしてる。

(じゃあ「場面かんもくや!」っていうのがわかったら、次はどう進めるん?)(次からは具体的な支援についてみていくで!)

①支援の前に確認すること

じゃあ、具体的に支援をしていくぞー!!
ってなる前に、確認しておきたいことがいくつかあるんよね。

1⃣保護者との連携協力がとれること

 ・そもそも支援は学校だけではできない
  ⇒家・家族を中心にして話せる場所・人・活動を増やしていくイメージ  
   だから、最初は特に家庭の協力が不可欠!
 ・こまめな連絡の取りあい
  ⇒連絡帳、電話、面談など、なんでもいいけど、
   親と先生、両方が積極的に情報交換していける。
 ※特に保護者が支援に主体的に参加することが大切。
  ⇒話す場所・人・活動を増やすために、
   子どもの「一緒に」活動をしたり、
   子どもと「一緒に」でかけたり、 することが大切。

2⃣子どもが話したいと思っているか?

 「子どもは話したがってる」という、話したい気持ちがある前提で支援を進めがちになってしまう。
でもちょっとまって!子どもに確認した?
支援は子どもの納得で効果が大!になる。

でも学校で話さないのに、どうやって確認するの?
⇒保護者に家で確認してもらう。だって、家では普通に話してるんやから。

3⃣実態把握 「ちょっとしたこと」で話せる・話せないが決まる。だから、この「ちょっとしたこと」を把握する必要がある。

やっぱりその子がどんな状況でしゃべって、どんな状況でしゃべれないのかを把握するのが、支援のステップを考えるうえで大切になってくるんよね。

「ちょっとしたこと」って何?
⇒家で家族といても、親せきが1人来ただけで話せなくなる。 とか
⇒クラスメイトの姿を遠くに見ただけで話せなくなる。 とか。

実態把握のポイント:「場所」「人」「活動」の3つを分けて把握すること
 例:「教室」(場所)で「クラスメイト全員」(人)の前で、「音読する」(活動)という状況では、声を出すことができずにとても緊張している。
 例:「校舎裏の空き地」(場所)で「幼馴染で仲良しの友達と2人だけ」(人)で「あやとりをする」(活動)状況では、周りに聞こえない声で話している。

「こういう状況(場所・人・活動)」では話せないが、
「こういう状況(場所・人・活動)」では話せる。  がわかるのが大切!

(なるほど。ここまでを確認したうえで、いよいよ具体的な支援方法にすすんでいくんやね?)(そうやよ!)

②どうやって支援する?

◆これだけ覚えて! スモール・スモール・スモール・ステップ

●よく使われる支援の最初の一歩
 ⇒保護者と本人が、放課後のだれもいない教室で遊ぶ。
  ※家庭と同じような状況を作って話せる可能性をアップ!
   子どもが安心して話せる状況(場所・人・活動)
   「家で、親と、遊ぶ」という状況の「場所」だけ変えてるんよね。
   (「場所」を「家⇒教室」にかえてるんよね。)
これで会話が可能になったら・・・
 ⇒担任(もしくは逆に関わりのない先生)がほんの数秒、教室をのぞく
これで会話が途切れなければ・・・
 ⇒時間をおいて、次は数十秒間、のぞいてみる。
  というスモール・スモール・スモール・ステップで、
  話せる「場所・人・活動」を広げていく。

◆話せる「場所・人・活動」を広げていく

例えば、「家」で「家族」と「遊ぶ」ときには話すことができる子ども
◎「場所」をかえていく
  家 ⇒ 教室 ⇒ 近所のお店 ⇒ 親せきの家 ⇒ 学校どこでも
◎「人」をかえていく
  家族 ⇒ 兄弟姉妹 ⇒ 仲の良い子 ⇒ クラスメイト ⇒他学年
◎「活動」をかえていく
  遊ぶ ⇒ ボードゲーム ⇒ 返事 ⇒ 音読 ⇒ 自分の意見をいう

これらをスモール・スモール・スモール・ステップで、少しずつ、すこーしずつ話せる範囲を広げていく。
※もちろん個人差があるから、個別にステップを考えていくことが大切。

(わかってきたけど、実際に支援していけるか不安やなぁ)(大丈夫!じゃあ、支援をすすめていくコツを学ぼう!)

③支援を進めていくコツは?

安心して話せる状況(場所・人・活動)に少しずつ、すこーしずつ、不安や緊張を感じる刺激(場所・人・活動)を入れていく。ってことやな。

刺激!? なんか急に変な言葉が出てきたけど・・・、刺激って何?)
 ⇒「刺激」っていうことばを理解したほうが、支援を進めていくステップを考えやすいと思うねん。やからここらか、理論編ということで、少し学びを深めよう!

◆理論編 段階的エクスポージャー

・段階的:すこしずつ
・エクスポージャー(暴露療法):不安や恐怖を感じる刺激に直面させる

例えると、熱めの温泉に少しずつ身体を慣らして入るイメージやな。
お風呂が熱い(=不安を感じる刺激)としても、少しずつ慣らしていったら同じ熱さ(=同じ不安)でも、お風呂にはいれるっちゅうことやな。

◆刺激フェイディング : 段階的エクスポージャーをするときに役立つ考え方


・フェイディング:徐々に
 ⇒つまり、「刺激」を徐々に増やしていったり、減らしていったりするってことやね。

◎「刺激」には2種類あるよ!
・安心刺激:安心して話せる場所・人・活動(家庭・家族・兄弟姉妹など)
・不安刺激:少し不安を感じる場所・人・活動
       (教室・担任・クラスメイトなど)

この2種類の刺激を踏まえたうえで、支援を進めていく。

◎最初は、
 安心刺激を多く。
 不安刺激を少なくする。

〇これで話せたら・・・
  安心刺激を減らす
     か
  不安刺激を増やす
※スモール・スモール・ステップやから、どっちかでいいよ!

×これで話せなかったら・・・
話せるようになるまで
  安心刺激を増やす
     +
  不安刺激を減らす。

〇そして話せるようになったら・・・
  安心刺激を減らす
     か
  不安刺激を増やす
※スモール・スモール・ステップやから、どっちかでいいよ!

⇒スモール・スモール・スモール・ステップで、少しずつすこーしずつ、「安心刺激を増やす か 不安刺激を減らす。」を繰り返していく。

そうすることで、不安を感じていた場面で話せるようになっていく、
ちゅうことやね!

(これで場面かんもくの子どもへの支援を頭では理解できた!あとは実践あるのみ!やね)(ただ、目の前の個人が大事なのはいうまでもないから、目の前の子どもの特徴とか反応をみながら丁寧にやっていく必要があるよ)

参考書籍

①園山繁樹著『幼稚園や学校で話せない子どものための場面緘黙支援入門』株式会社学苑社刊(2022年)。 ※動画中にあった論文
・Matsushita, H., Okumura, M., sakai, T., Shimoyama, M., and Sonoyama, S. (2019) Enrollment rate of children with selective mutism in kindergarten, elementary school, and lower secondary school in Japan. Journal of Special Education Research, 8(1), 11-19.

今回の感想

 場面かんもくは、子どもも大人も困ってる場合がほんまに多いと思う。だって、「しゃべる」ってコミュニケーションの基本として、基本的に使うやん。それが伝わらない人と急に出会ったときに(どうしよう?)ってなっちゃうんよね。具体的に場面かんもくの子どもと接したときには、(どう接したらいいんやろ?)とか(どこまで理解してるんやろ?)とかいう疑問がわいてくるし、なんか一人でしゃべりかけてる感じになってなんかさみしい気持ちにもなっちゃうし・・・。  でも、大切なのは子どもの側は大人の話をしっかりと聞いて理解しようとしてるってこと。むしろ、他の子どもよりも大人をより観察してる部分があるし、接し方が今後の信頼関係の構築に大きく関係してる気がする。  早く支援をすることで本人が「話せるようになる」ということはめっちゃ大事。これは本人が今も、これからも困らんために大事。でも、ほんとうは話を無理にしなくても、本人が安心して過ごせる場所になれればいいとも思うよね。話さなくてもいいし、話してもいい。話したいときに話せる。そんなときに話せる手伝いをしたいなぁ。

思うところ、間違ってるところ、コメントをぜひしてほしいです!
よろしくお願いします!!


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