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【高校物理】力学分野 「原則編」     

私が毎年行っている「早朝物理講習」を 𝕏 上で再現しようという試みです。
力学の基本から実戦問題までを扱います。
公式の導出も可能な限り行っていきます。
特に,力学問題の取り組み方に重きをおき,
受験生が誤るポイントなどにも触れていこうと考えています。
問題の選定にあたっては,
力学の考え方が体系的に学べる
解いて楽しい,新たな発見がある
この2点を念頭に置きました。

力学分野「原則編」で,力学問題の解き方を学んだ後,
「さまざまな運動編」で,身の回りで見られる運動を扱う予定です。


【原則編1】 
「力のつり合い」(講義・例題)
  電気通信大学 過去問解説

物理基礎の教科書は,
速度,加速度の定義から始まり,等速度運動,等加速度直線運動,
重力だけを受ける運動(自由落下・水平投射・斜方投射)を扱います。
そして,そのあとで「力のはたらき」へと入っていきます。
しかし,加速度が生じるのは「力」がはたらいた結果です。

この講義では,
力のベクトルの描き方(作図の仕方)」を紹介したあと,
入試問題を解きながら物理用語(物理独特の言い回し)についても
説明していきます。


【原則編2】 
「等加速度運動」(講義・例題)

等加速度運動の公式を導出して,例題を1問解きます。
初速度,初期位置,変位,速度,速さ,加速度,相対速度など,
教科書を見て,再度,定義を押さえておきましょう。
等加速度運動問題の解法」も示しておきました。
やはり基本は「作図をすること」です。
相対運動に関しては,後ほどこの【原則編】で改めて取り上げます。


【原則編3】 
「等加速度運動」(実戦問題)
  工学院大学(1986年) 過去問解説

等加速度運動の問題を探してみると,
テニスやバスケットボールなど,スポーツに関するものが見つかります。
もうちょっと夢のある入試問題がないかと探してみたら,ありました!
ちょっと設定に問題点はありますが,
実戦問題①は,なかなか楽しい問題です。
毎年,実戦問題②で「束縛条件」の紹介をしています。
ただし講習では,「座標軸のとり方」に重きを置いて解説しています。


【原則編4】 
「斜方投射と自由落下」(講義・例題)
  河合塾第2回全統私大・短大模試(1990年)
  <改題> 過去問解説

「斜方投射と自由落下」 味もそっけもない名称の問題ですが,
現象としてはものすごく興味深いものがあります。
「なぜ空中で衝突するのか」の考察では,
水平方向の運動と鉛直方向の運動の双方からのアプローチ,
そしてベクトルを使った「視点を移動」させた見方などを紹介しました。

この現象の具体例を長年見てきましたが,
例題はなかなかうまい設定を見つけたなと個人的に感心しています。


【原則編5】 
「運動方程式」(講義・例題)

いよいよ力学の核心である「運動方程式」です。
「運動方程式」を力学の第1の原理におく参考書もあります。
運動方程式の使い方をこれから学んでいきましょう。
糸の運動方程式を立てることで導いた
軽い(質量の無視できる)糸の両端の張力の大きさは常に等しい」
という事実は重要です。

例題2の最後の「素朴な疑問」は毎年受講生に問う問題で,
問われると返答に困ってしまう者が多数出ます。
「運動の法則」の理解度が問われます。

ポスト内でも紹介していますが,運動の3法則の解説動画です。
どこからでも観ることができます。

【原則編6】 
「運動方程式」(実戦問題)
  武蔵工業大学(1985年)・
  北海学園大学<改題> 過去問解説  

運動方程式の立て方をの手順として,まず初めに,
「1つの物体に注目する」があります。
「部分」に注目するのか「全体」(物体系) に注目するのか,
もしくは「両方」ということもありえます。
この「視点の移動」を意識しながら問題を解いていきましょう。

ポスト内でも紹介していますが,
下は,北海学園大学(実戦問題②)の問題解説動画です。


【原則編7】
「フックの法則・弾性力」(講義・例題)
  早稲田大学理工学部(1962年)・
  早稲田大学教育学部<改題> 過去問解説    

【原則編5・6】で運動方程式の立て方・基本を押さえました。
ここからは,
運動方程式(の右辺)に現れるさまざまな力の性質を学んでいきます。
まずは「弾性力」。
ばねのような弾性体が変形して元の形に戻るときにはたらく力です。
変形が小さいときに成り立つ「フックの法則」を使って,
並列つなぎ,直列つなぎのときの「合成ばね定数」を求めましょう。
また,フックの法則にしたがわないゴムひもの扱い方についても
入試問題を通して考察していきます。

例題2が笠原邦彦さんにリポスト(リツイート)されました。

https://x.com/ILP_bot/status/1790728864450457884


【原則編8】
「摩擦力」(講義・例題)
  東北大学(1972年) 過去問解説    

摩擦力は運動を妨げる向きにはたらきます。
この「運動を妨げる」というのがなかなかくせもので,
接触している面に対しての運動」であることが重要です。

静止摩擦力と動摩擦力の区別に関しては,
例えば,
積み重なった2枚の板全体(物体系)は動いているけれど,
上の板が下の板に対して動いていないならば,
2枚の間にはたらく摩擦力は静止摩擦力となります。
また,動いているベルトコンベア上で,
物体につけられた糸の張力とベルトコンベアからの摩擦力が
つり合って物体が「静止」しているとき,
その摩擦力は「動摩擦力」となります。


【原則編9】
「抵抗力(空気抵抗力)」(講義・例題)
  東京大学(1977年)<改題> 過去問解説    

空気抵抗力は,大学入試問題などで出題されるときには,
「速さ 𝒗 に比例する」という条件であることが多いです(例題2)。
しかし,2023年の共通テスト(本試)の大問2のように,
「速さ 𝒗 の2乗に比例する」と考えるとうまくいく,
という設定も見られるようになりました。
理論的には高校物理範囲外であったとしても,
その結論だけ利用して実験結果をうまく説明する

というような問題はこれからも出題されるでしょう。


【原則編10】
「液体中における圧力・浮力」(講義・例題)
  名古屋大学(2000年) 過去問解説    

物体が水の中で受ける「浮力」は,
上面と下面にはたらく水圧による力の差によって生じる,
と教科書にはあります。
そして「水圧」は,水の重さによって生じる,とあります。
この2つを合わせると,浮力は鉛直下向きに働くことになります。
…どこで間違えてしまったのでしょうか。

例題は,「アルキメデスの原理」を大前提として,
秤(はかり) は何をはかっているのかを問うています。
感覚で解くのではなく,その瞬間瞬間で式を立てて考察しよう。
力学において,瞬間に注目して立てられる式は,
「運動方程式」「力のつり合い」です。


【原則編11】
「相対運動」(講義・例題)
  センター試験本試験 物理ⅠA(2002年)
  倉敷芸術科学大学(1997年) 過去問解説  

相対速度・相対加速度・相対変位など,
「相対運動」は受験生が苦手としているものの一つです。
公式どおり相対速度を求めるならば当てはめるだけですが,
問題文に相対速度が与えられ,そこから速度を求める問題や,
そこに運動量保存則が絡んできたりすると,途端に解けなくなります。
まずは一次元での相対速度を押さえた上で,
平面運動での相対速度の公式を導いて,それを使えるようになろう!


【原則編12】
「相対運動」(実戦問題)
  慶應義塾大学理工学部・大阪大学
  過去問解説 

相対運動の実戦問題を2問。
これらの問題は「慣性力」を利用しても解くことができますが,
ここでは「相対加速度」を使って解いてください。


【原則編13】
「慣性系・非慣性系,慣性力」(講義・例題)
  九州工業大学(2000年) 過去問解説

慣性力(inertial force または fictitious force)は不思議な力です。
fictitious(架空の)という単語で表されるように,
「見かけの力」とよばれることもあります。
加速度運動する観測者にしか見えない力であり,
この力には反作用がありません。…不思議です。
後ほどこの講義で扱う「遠心力」も慣性力の一種です。

問題文に「地上で静止している観測者の立場から考える」
という指定がありますが,
ここでは「加速するエレベータ内の観測者の立場」からも考え,
同じ結論が得られることを確認します。

注:細かいことを言うと,
[3](7)を「地上で静止している観測者の立場から考える」と,
一定加速度で上昇するエレベータの床に,鉛直投射されたおもりが衝突する
という非常に複雑な運動となります。
ここは,相対加速度もしくは慣性力で考えるのが自然でしょう。


【原則編14】
「慣性系・非慣性系,慣性力」(実戦問題①②)
  東京電機大学(1986年)・九州大学(1972年)
  <改題> 過去問解説

「慣性力」問題を2問。
実戦問題①は聖文社の全国大学入試問題詳解では《やや難》という評価。
初速度を与えた際の斜面上の物体の運動は静止系で述べるのは難しく,
斜面上の観測者(加速度系)から見ると単純な運動となります。

また,実戦問題②の設定は,大学入試問題でよくみかけるもので,
2023年にも同じ問題が東京医科歯科大学で出題されました。
(途中までまったく同じ問題でした…)
ただし東京医科歯科大学は問題文中に静止座標系を与え,
運動方程式からそれぞれの加速度を求め,
相対加速度で議論を進めていくものでした。


【原則編15】
「慣性系・非慣性系,慣性力」
  (実戦問題③④⑤)
  河合塾第1回全統記述模試(1996年)<改題>
  ・関西学院大学 過去問解説

「慣性力」問題をあと3問。
実戦問題③は,
問題の流れとしては静止系で考えるという誘導が入っていましたが,
こちらで改変して,加速度系で考えるようにしました
「摩擦力は最後に図示する」は鉄則です。向きも含めて考えてください。

実戦問題④は,
図示させる問題ですが,
それぞれの観測者から見た軌道を説明できるようにしてください。

実戦問題⑤は,
慣性力のはたらく向きと大きさを考慮して,ばねの伸びを答えさせる問題。
非接触力である「重力」と「慣性力」を先に図示して,
弾性力(ばね)は最後に考えます。
「宇宙船は描かない」こともポイントのひとつです。

ただし最近の入試問題は,加速度系で「慣性力」を考えさせるのではなく,
静止系で運動方程式を立てさせ,足りない条件は束縛条件で補っていく
という傾向が多いように感じます。


【原則編16】
「仕事と運動エネルギー」(講義・例題)
  東北大学 過去問解説

運動方程式を立てて,加速度を求めて,速度や変位の時間変化を探る…
「原則編」のこれまでの範囲では,基本的に「時間追跡」をしてきました。
しかし力学問題の解法は「時間追跡」だけではありません

今回の講義から力学問題の新たな解法を手に入れることになります。
「はじめの状態」と「あとの状態」の2つの状態に注目をする解法です。
どのような力がはたらき「あとの状態」になるかを考えることで,
「あとの状態」のさまざまな物理量を求めることができます。

まずは「仕事と運動エネルギーの関係」から。
「エネルギー」という言葉は日常的に使いますが,
その定義を説明しろ,と言われてもなかなか難しいと思います。

「運動エネルギー」が速さの2乗に比例するということ
を実感する場面はボーリングのときかもしれません。
(ペットボトルのキャップと簡易速度計を使った「ボーリングゲーム」
を紹介している本があります → 「枠を超えよ」(著者:辻本明彦))


【原則編17】
「力学的エネルギー」(講義・例題)
  宇都宮大学(2013年) 過去問解説

物体にのみ注目すれば,「仕事と運動量の関係」。
全体(系)に注目すれば,「力学的エネルギーの変化」を考えよう。
全体というのは,「ばねそして重力場などの空間」を含みます。
非保存力に仕事をされれば,力学的エネルギーは変化をし,
非保存力に仕事をされなければ,力学的エネルギーは保存します。

「今,何に注目をして式を立てるのか」
今後はこの視点をもって力学問題に取り組む必要があります。


【原則編18】
「力学的エネルギー」(実戦問題)
  静岡大学(1976年)・九州大学(1975年)
  岡山大学(2017年)<類題> 過去問解説

力学的エネルギー実戦問題を3問。
それぞれ初見ではなかなか解くのが難しい問題です。
重力場(空間)まで含めた「全体」に注目をして解いてみよう。

実戦問題②(九州大学の問題)は,
「浮力にされた仕事」を考えてほしい問題なのですが,
金属球が高さ 𝒉 下がり,その分位置エネルギーが減少し,
その代わりに,同じ体積の水の球の高さが 𝒉 上がり,
その分の位置エネルギーが増加する,という見方もあります。
(金属球と同じ体積の水球を入れ替えたと考えます)

実戦問題③(岡山大学の類題)は,初出は信州大学であり,難問。
重力による位置エネルギーの基準を
小球 𝐀 と小球 𝐁 とで別々にとることができます。
結局,位置エネルギーの変化量が求まればいいのです。


【原則編19】
「なぜ力学的エネルギーが保存するのか」
  (講義) 
  金沢大学(1991年)・北里大学医学部(2019年)
  東京工業大学(2016年) 問題設定考察

「力学的エネルギー保存則より」「力学的エネルギーが保存するので」
と問題集には書かれているけれど,
「なぜ力学的エネルギーが保存するのか?」
と問うと即座には答えられない設定というのはよくあります。

「摩擦力がはたらかないので」「内力のみなので」
などと理由めいたことを書いている問題集はありますが,
本来それらは理由にはなりません。
摩擦力がはたらかなくても垂直抗力が仕事をすることはあるし,
2 物体系で内力と考えられる動摩擦力がそれぞれの物体に仕事をし,
それらの和が 0 にならないことは普通に起こり得ます


今回の講義では,3つの問題設定について,
なぜ力学的エネルギーが保存するのか,を検証していきます。
キーワードは「束縛条件」です。

二体問題の力学的エネルギー保存則導出は下の動画で。
2体問題 なぜ力学的エネルギーが保存するのか その1
2体問題 なぜ力学的エネルギーが保存するのか その2

「束縛条件」に興味をもった人は,「特講 束縛条件」をどうぞ。
今回扱った入試問題もこの中で扱っています(出題パターン1と3)。
探してみてください!


【原則編20】
「力積と運動量」(講義・例題)
  京都工芸繊維大学(1986年)・
  大学入学共通テスト本試験(2023年)
  過去問解説

「力積と運動量の関係」は「仕事と運動エネルギーの関係」とともに
問題を解く上で常に意識をしたい視点です。
例題1:日常生活で無意識に行っている行動やよく見かける現象にも
力学的な理由があることが分かります。
例題2:力学でよく見かける放物線の接線の特徴をまとめておきました。
例題3:2つの保存則の成立条件が分かりますかと問うています。

「力積と運動量の関係」の導出および例題1に関しては
解説動画をつくっています。
動画内で「力学的に興味深いニュース」について触れています。
なぜ膝を曲げるの? 力積と運動量の関係

また,運動量保存則の導出および大相撲の力学的な考察もしています。
小兵力士が勝つには? 運動量保存則


【原則編21】
「科学マジック」(実演・解説)

マッチ棒2本を使った科学マジックです。
まずは動画を観て,力学的に考察をしてください。
なぜ上のマッチ棒ははね上がるのか?
スロー動画でも一瞬なので,撃力を受けていると考えられます

マッチ棒マジック(無音)YouTube動画

音楽をつけた動画もつくっています(音量注意!)。
マッチ棒マジック(音楽あり)YouTube動画


【原則編22】
「力積と運動量」(実戦問題①②)
  滋賀医科大学(2011年)・千葉大学(1991年)
  過去問解説

力学的エネルギー保存則や運動量保存則は立てられるけれど,
「仕事と運動エネルギーの関係」や「力積と運動量の関係」
は立てられない受験生が多いことが気になります。

今回の実戦問題は少しレベルが高い問題です。
運動量保存則を成分ごとに立て(誘導がなければベクトル図を描く),
力学的エネルギー保存則と連立させたときの式変形を含んでいます。
どの運動に注目するか,どの物体系に注目するか,
を判断する訓練(問題演習)をしていきましょう。


まだまだ続きます
マナブ




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