【高校物理】磁気分野② 「電流のつくる磁場」<大幅増補改訂>
「電流のつくる磁場」
公式導出・東京大学 過去問解説
電流のつくる磁場に関しては,
「ビオ・サヴァールの法則」から導かれる公式が3つあります。
この公式は導ける必要はなく(入試問題で導く場合は,誘導がつきます),
その結果だけ覚えておいてほしいのですが,
毎年,導出方法の質問を受けるので,ここにまとめておきます。
「電流のつくる磁場」練習問題 その1
大阪電気通信大学(1987年) 過去問解説
「基本とは何か?」とよく考えます。
生徒に入試問題をいきなり解かせると,
「もっと基本からやってください」と意見する者がいます。
その生徒にとっての「基本」とは「反復練習」のことなのです。
物理も数学と同じように,練習問題を解きまくり,
公式を習得していくものと考えているのです。
私は,物理にとっての基本とは「実験」だと考えています。
実験事実から導かれるものが「公式」です。
物理学者が行った実験を追体験する,これが「基本」です。
特に,「磁気分野」は様々な実験が考案され実行されてきました。
興味深い(と私が考える)ものを
ここでは取り上げていきたいと考えています。
磁石の話題ということで,「磁性細菌」の情報を載せておきました。
磁性細菌は酸素が少ない環境を好みます。
1,2本のべん毛を持っています。
体内にある磁石で地磁気を感じ,
北半球にすむ磁性細菌は磁力線に沿って北に向かって,
南半球にすむ磁性細菌は磁力線に沿って南に向かって泳ぎます。
すると,泥の中(酸素が少ない環境)にもぐることができるのです。
この磁性細菌から「脂肪の膜のついた磁石」を取り出すことができたなら,それを何に使いますか?
(「磁性細菌 農工大」で検索すると,さまざまな応用例が見られます。
興味深いですよ)
「電流のつくる磁場」練習問題 その2
神戸大学(1994年) 過去問解説
19世紀はじめ,エルステッドは,
電線に流れる電流が熱と光を発生させる公開実験の準備をしていました。
たまたまその近くに方位磁石が置いてあって,
電池から電線に電流を流すスイッチを入り切りしたときに,
北を指していた磁針が少し変化したことに気づいたのです。
この現象は,電線に電流を流すとその周りに磁場ができ,
磁針がその磁場の影響で振れるのだと考え,
磁場と電流の相互作用を示す直接的な証拠であると確信しました。
実験を繰り返し,
磁針の上または下に平行に電気を流すと針は大きくふれること,
電流の向きを逆にすると針は逆向きを指すことを確かめ,
そのことをわずか4ページの論文にまとめました。
電磁気学の始まりです!
「電流のつくる磁場」練習問題 その3
滋賀医科大(1992年)・立命館大(1989年)
過去問解説
様々な形の電流がつくる磁束密度(もしくは磁場の強さ)
を求める問題をたまに見かけます。
直線電流,円形電流,ソレノイドに流れる電流のつくる磁場を,
電流素片のつくる磁場(ビオ・サヴァールの法則)
を積分して求めました。
その作業をした者には,
正三角形電流のつくる磁場は「積分区間が変わっただけ」と考えられる
のですが,ビオ・サヴァールの法則は高校範囲外です。
これを前提にすることはできません。
実はこの問題はパズルとして解くことが可能なのです
(練習問題2の別解を参照してください)。
以上です。お疲れさまでした。
マナブ
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