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病院退院時のマナー

~在宅医から病棟医へ~

 若い先生は在宅診療の経験値が不足しており、病院から在宅に患者さんの診療をつなぐときのマナーを知らないこともあるのかと思います。大学病院勤務、地域中核病院勤務、民間病院の病院長を経験した経験者が、在宅医療に携わる日々の診療の中で、よく遭遇する同じ課題への気づきをまとめて、円滑な連携に役に立つようにしておきたいと思います。

 また、今後、気がついたらこれらに追加していくのでまたたまに見直してもらう、または、こんなこともあるよとご意見いただけると良いかと思います。

1. 処方日数の目安

 
 退院分しか出さない医師がいます。逆に90日分処方する医師もいます。
前者は病院間の転院での過剰処方が算定されないことという2020年頃の診療報酬改定の内容を誤解しているのではないかと思います。在宅でない施設の場合(老健や特養など)はそのとおりですが、自宅、老人ホーム、グループホーム、サ高住などは診察医が診察をするまでは指示が出せませんので、何かの都合で退院日に診察に行けないなどの状態となることがないとは限りません(なので、土日での入居はなるべく避けてほしいのはこの制度があるからです)。退院したら即、在宅医とはならず、不備がある場合は最悪、出戻りで入院となるかもしれません。在宅医は病院入院でもそうであるように患者さんと契約を交わして初めて診療に当たります。それ以外でも対応はできますが、緊急往診という形をとることで指示をだすため、初回から予定している隊員としてはあまり良い形というわけでないのは想像に難くないかと思います。
 在宅診療では一般的に居宅管理加算料を算定して月2回定期訪問診察することが基本となります。ですので、特殊な場合を除いて2週間分の処方を出しておくことで施設・家族・医療関係者の情報錯綜のトラブルや、本来不要な緊急往診をしなければいけない、などのトラブルを回避できます。基本的に訪問日から処方箋を発行できますので、すぐに届けられない状況が回避できます。
 では、最大限3ヶ月分出しておけば大丈夫だろうというとそうではありません。大量の一包化処方があると、新たに処方の変更をしたときに残薬使用するのが通例ですので(患者さんが費用負担していますので当然ですが)、多量の包装を開封して薬を抜いたり、加えたりしなければいけないという多大な不毛な労力を薬局に負担していただかなければいけません。変更のたびにすることになるのを知っているので、処方しなければならない在宅医は申し訳ないというバイアスがかからないとも限りません。意図しないうちに、病棟主治医・処方医の在宅医療への無知が実名入りで広まりますので、今後もしくはこれまで期にしていなかった医師はご注意を!

2. 処方内容の記載について


 情報提供書の処方内容と薬局からの薬剤情報内容が異なることがあり、確認作業に病院連携室・看護師・薬剤師、訪問薬局への確認など多大な時間を労します。間違った情報を記載するくらいなら、別紙参照で薬剤情報を確認して添付していただくほうが助かります。

3.情報提供書のタイミング


 情報提供書を診察日ぎりぎりに当日初めて渡されることが大きな病院ほどよく見られます。在宅診療の現場では、限られた時間で必要な内容を適切に把握するためにも準備8割と認識しております。その中には、患者のすでにこれまで行われた診療情報は非常に大きな比重となります。当日はその情報を事前に把握した上でさらに生活するために必要なサービスについて相談したり、必要なサービス関係者に声をかけたりしていきます。現時点ではこの情報共有ネットワークツールがFAX送信に頼るしかないという情けない日本医療の現状ですが、最悪でも2日前までには情報提供していただけるとスムーズに診療引き継ぎが進みます。毎度、情報提供が遅いと界隈ではすぐに評判になり受け入れにも影響がでてくることになるのは避けられないことかと思います。

4.加算管理料の算定はどちらがどれを算定、もしくは同時算定するか


 月次の管理加算項目、たとえば在宅酸素や訪問看護指示書など、引き継ぎ月は両方の医療機関で算定できる内容もあれば、一方でしか算定できない項目もあり、把握した上で算定されるかどうかについて、医療事務の知識・経験が大きく影響します。残念ながらそのあたりの認識がしっかりできている医療機関は少ないのが実情です。お互いに手出しがない方がよいに決まっていますので、管理加算をとるからには必要な医療資材をご提供いただく、指示ができない項目については算定を移行する相談を事前にしておくなど、スムーズな引き継ぎが必要かと思います。これは医師よりも医療事務に関わることが大きいかもしれません。

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