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シド・ローレンス・オーケストラ『ポール・マッカートニー・ソング ビューティフル・プレイ』(PHILIPS BT-5232)

 シド・ローレンス&ヒズ・オーケストラ(Syd Lawrence & His Orchestra)という人たちのいわゆるイージーリスニングと呼ばれるジャンルのレコードですね。原題は『McCartney, His Music and Me』。ポール・マッカートニーの作品を華麗なビッグバンドのインストアレンジで聴かせてくれるアルバムです。このジャンルではパーシー・フェイスとかポール・モーリアとか、人気のある方々がたくさんいらっしゃいますが、このシド・ローレンスという方は初めて知りました。実際、日本ではこのアルバムが初紹介だったようです。

 当時はこういう作品もそれなりに需要があったのかもしれませんが、今となってはビートルズであれば見境なくなんでも買ってしまう私のような人間にしか見向きもされないでしょう。別に本人が関係してなくても、何か面白いものがあるんじゃないかとつい期待してしまうのです。

やさいしアンサー」???

 曲目はこちら。個人的に目をひいたのは、ビートルズ時代の作品とソロ時代の作品が混ざっていることです。「レット・イット・ビー」も「ヘイ・ジュード」もないのでオール・タイム・ベストにはほど遠いですが、それでもちゃんとポールのことを好きな人が選んだんだろうということがよくわかる選曲です。「ホエン・アイム・シックスティ・フォー」「ハニー・パイ」という特にポールの本来の趣味がよく出た2曲をピックアップしていることもそうですし、同系統の「やさしいアンサー」ペギー・リーに提供した「レッツ・ラヴ」が入っているのもシブいですね。

 内容としては本当に想像通りのイージーリスニング。グレン・ミラーカウント・ベイシーのようなオールドスタイルで楽しませてくれます。「レッツ・ラヴ」はコーラス入り。「心のラヴ・ソング」だけなぜか高速ディスコです。ポール自身がパーシー・スリル・スリリントン名義でリリースした『ラム』のインストカヴァー・アルバム『スリリントン』が好きな方には楽しく聴ける作品です。

 ポピュラー、ジャズ系の解説では大御所の宮本啓先生のライナーノーツは当時は正体不明なシド・ローレンスの解説と、もはや説明の必要がないポールの経歴をあらためて書かなければならないという二重の苦しみが感じられる内容でした。こんなものもあったんですね。というレコード、さすがはビートルズ。けっこうあります。うっかり見つけてはけっこうな量になってきました。見つかり次第また紹介します。

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