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フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年9月 一言感想

日本で戦争を起こさせないよう、米国の外交の動向を理解するために読んでいます。


中国経済の失速と台湾

①「中国経済の奇跡」の終わり-アメリカが門戸開放策をとるべき理由

アダム・S・ポーゼン ピーターソン交際経済研究所所長

コロナ対策の失敗、具体的に言うと、「政治に関わらなければ問題に遭遇しない」というスタンスをやめ、介入主義を強めた事により中国経済は停滞しているという論。米国は、China経済の封じ込めでなく、歓迎する国に戦略を見直すべきと結論付けている。
今月号では、本論文以外にも、Chinaと穏便な関係を取る事を推奨する論文が多いように感じました。

②新時代の米台関係-中国にどう対処するか

別記事にしました

先進国と格差

③欧米の所得二極化と社会混乱-ラテンアメリカ化する欧米社会

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学シニアスカラー

経済格差についての論文。Chinaの経済成長が世界的格差の平等化に寄与してきたが、今後のChinaおよびインドにも期待はできず、アフリカ諸国の成長程度に左右されるとしている。アフリカを次のグローバリズムのターゲットにすると読み取れる論文は先月号にもあったので、ここには注目していきたいと思います。
2018年のデータで、世界の富トップ1%に含まれる人が多い国は順に、米国、英国、日本、ドイツだそうで、3・4位が日独なのが以外(日本全体が豊かという事ではなく、金持ちがいるということ)。とはいえ金持ちのデータを正確に測れる訳は無いと思うので、参考データでしょうが。
今月号トップの論文『「中国経済の奇跡」の終わり』ではChina経済の衰退を論じていますが、本論文では、今後、Chinaの”富裕層”は米国と同じ水準となると論じています。2つの論文をあわせると、国が衰退しても、富裕層=グローバリストの金儲けには影響しない(当然格差は広がる)と読み取れ、直感的に正しいような気がします。

国際社会のイメージと現実

④大国間競争という幻想-曖昧で変動する世界

ジュード・ブランシェット 戦略国際問題研究所 フリーマンチェア(中国研究)、クリストファー・ジョンストン 戦略国際問題研究所  シニアアドバイザー

中国および世界各国と、米国がどう向き合うかという論文。各国は利害関係に応じ様々なグループ・関係性をつくっており、米国は、それらの目的を理解してうまく管理すれば、米国の利益と、同盟国やパートナーの繁栄を支える事が両立できるという理論。翻訳がうまくないのかもしれないが、他国を管理するという考えが米国らしいですね。

⑤民主国家インドという幻想-利益は共有しても、価値は共有していない

ダニエル・マーキー 米平和研究所シニアアドバイザー(南アジアプログラム)

インドは米国の同盟国という考えを改め、ビジネス的な関係の便宜的同盟国とした方がが良い論。
インドの、米国に賛同しなかったり曖昧な態度をとってきた歴史を丁寧に記載している(BRICS批判までしている。笑)が、私はこれを読んで、インドは立派な国だと改めて思いました。日本は見習うべき。
「ニューデリーが民族主義的になれば、インドの安定は揺るがされる」という記載があるが、米国が内政干渉して揺るがすぞ、という脅しとも捉えられる、と私は思いました。怖いですね。

⑥米中対立とドイツの立場-微妙なバランスを維持できるか

リアナ・フィックス CFRフェロー(ヨーロッパ担当)、
ゾンユアン・リュー CFRフェーロー(中国研究担当)

②に続いて、CFR(Council on Foreign Relations:米外交問題評議会)メンバーの記事です。ドイツの、中国との関係性についての論文。
ドイツの、「地政学的リスクを回避しつつ(言及を避け)、中国との貿易を通じて利益を得る方針」に対し、「軍事、安全保障についても立場を明確にせよ」と圧力をかけている論文だと読み取りました。怖いですね。

「ヨーロッパで戦争が激化し、2024年の米大統領選が目前に迫っているいま、中国との関係断絶のリスクヘッジだけでは十分ではないだろう」と記述がありますが、独中の関係の話の中に突然”米大統領選”という単語を入れてくるあたり、米国がいかに米国中心なのか理解できます。CFRの記事なので当然と言えば当然で、そこは日本も見習う部分があるかとは思いますが。

Current Issues

⑦中露、イランの政治的強さの秘密-革命が授ける独裁体制のレジリアンス

ルーカン・アフマド・ウェイ トロント大学教授(政治学)

中露イランを世界の3大悪党とする論文(直球すぎでしょ笑)。
「独裁国家で反対運動が成功したケースは、独裁者の側近が離反して反対派に加わったため」、とあるが、米国の内政干渉の成功例を示していると、私は捉えました。

参考

革命だったか、デモマニュアルも公開されていたはず。
見つけたら追記しておきます。


⑧半導体と米中台トライアングル-TSMCとサプライチェーン

ラリー・ダイアモンド フーバー研究所シニアフェロー
ジム・エリス フーバー研究所特別客員フェロー
オーヴィル・シェル アジア・ソサエティ米中関係センター ディレクター
 
北京、台湾、ワシントン間で、「シリコン(半導体)トライアングル」をどう管理するかという論文。 
半導体サプライチェーン確保が、台湾の安全保障をワシントンが懸念する理由の一つとして挙げているが、台湾国民よりも、そっちを重要視しているような気がする。(最後、台湾の民主主義と世界のマイクロ半導体のサプライチェーンを守るため、台湾の能力を強化しようと締められている。台湾の民主主義という言葉も、過去の米国の内政干渉(革命)をみると、訝しんでしまう)
台湾で武器を生産する事も提案している。戦争に繋がるような事は、止めて欲しい。
 

⑨準備通貨、ドルの運命

アンシュー・シリプラプ、ノア・バーマン 共にCFR経済担当エディター

今月の、CFRメンバーの記事3つ目。
準備通貨の説明から始まり、通貨体制の歴史、ドルによる決済能力の遮断による経済制裁までも説明している(ロシアには効かなかったはずだが、「デフォルトに追い込まれた」と説明)。
ドルの代替として5つ(①BRICS通過、②ユーロ、③人民元、④SDR、⑤暗号通貨)を考察しているが、その中に円は含まれていません(④SDRの5通過の一つですが)。悲しい現実です。SDR代替の考察の中に、「IMFにSDRの供給を管理する権限を与える必要がある」という記載には注意が必要と思います。
あくまで考察の論文で結論めいた内容は書いていませんが、このタイミングで、本書にこのような記事が掲載された意図は考える必要があると思います。

⑩中東の外交戦略と中国-中東諸国の真意は何か

ジェニファー・カヴァナ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(アメリカ外交)、フレデリック・ウェフリー カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(中東)
 
下記のような、意外と温和な提言をしている論文。
「ワシントンは、中国の影響力拡大に対抗する親米防衛ブロックの形成をめざす、時代遅れの安全保障重視戦略を強化すべきではない。むしろ、人的資本の向上、教育、グリーン・テクノロジー、デジタル・プラットフォームなど、アメリカが比較優位をもつ分野への政策ツールと投資を拡大していくべきだろう。」
 
I2U2グループの事は、初めて知った。
インド、イスラエル、アラブ首長国連邦、米国によるグループ。 2022年7月14日に発表されたグループの最初の共同声明:各国が「水、エネルギー、輸送、宇宙、健康、および食料安全保障における共同投資と新しいイニシアチブ」で協力することを目指している。


最後に、

全体の感想

傾向
・Chinaとは穏便にやっていく方針のようだ
・反面、ロシア・イランは積極的に革命を狙っていく
・インドも、もっと米国寄りにならないと、革命が狙われそう

参考
外務省 (仮訳) 日米韓首脳共同声明「キャンプ・デービッドの精神」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100541771.pdf

米国は挑発やめろ、日韓をけしかけようとするのを、やめろ。

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