子どもが心配2

「今」の喜びを体験できず、幸福が先送りされてしまう


養老 昨今はますます、子どもの時代が「大人になる為の準備期間」の様に
   捉えられていますね。
   そうして「幸せの先送り」が進んでいく。すると子どもたちは、自分
   がいつ幸せを享受できるのか、一向に実感できない。
   若い世代の自殺が多いのは、幸せな瞬間が未来に回されるばかりで、
   「いま」を体感できていないからだと思います。子どもの時代に幸福
   を味わっていれば、そう簡単には自殺に走らないのではないでしょう
   か。
   
別の言い方をすると、子ども時代が出区立した人生ではなくなってい
   る。人生の一部としか見られていないのです。
   子どもの時期がハッピーであれば、人生の一部がハッピーになる。
   その幸せが先送りされるから、「いつになったら、自分は自分の人生
   を生きることが出来るのか」という迷いが生じてしまう訳です。
高橋 最近はやりの「自己肯定感」という言葉、実はあまり好きではないの
   ですが、あえて使うならば、人は生まれてきた瞬間が最も自己肯定感
   が高い筈です。「産まれてくるんじゃなかった」と思って生まれてく
   る赤ん坊はいませんからね。
   そういう幸福感に満ちた子どもの心が、成長するにつれて、家族や周
   囲、そして社会からのプレッシャーを受けてしだいに擦り減ってい
   る。
   ところが親はそうとは知らず、先ほどお話ししたように、ネットに
   流布する様々な「正しい子育て」に直面し、親としての自信をなくし
   てしまう。
   そもそも「正しい子育て」なんてないと開き直ってほしいというの
   が、小児科医としての私の切実な思いです。
養老 現代は人生がカーナビに従う車の様になってしまった時代であると、
   しみじみ痛感しますね。ナビの案内に従えば、目的地まで効率よく
   たどり着けるでしょう。しかし、道中にこんな山があるとか、奇麗な
   花が咲いているといった道草を食う行為をが忘れ去られてしまった。
   目的に向かって最短距離で走り続ける人生は、まさしくカーナビその
   ものです。
   よそ見したり、道草を食ったりしながら、カーナビには絶対に出てこ
   ないルートを進む中で、様々な実体験を積み上げていくのが人生だと
   思うのですが。
高橋 
そうですね。子育てというのは、「将来どの大学に進み、どういう仕
   事に就くか」というように、目的達成を重視してやっていくと、いず
   れ裏切られることになる。「ああやってあげれば、こうなる」という
   ことがないのが育児ですから。
   教育や子育ての本質は、効率主義の先にはないはずです。
   むしろ、無駄な事や遠回りした先に待っていいる様に思います。

今日の2本目を読まれた方はどう感じられたでしょうか?
子育ては、国の為にやるものでも、ネットで言われる通りにやるものではないと私も思います。どんな子に育てたいか、ご夫婦なりご自分が考えられる通りに育てることがこどもさんにとっても、嬉しく幸せならそれが正しい子育てではないでしょうか?