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1つのネタでここまで引っ張る?全身タイツとピンポンゲーム、2つのMVをご紹介(オススメMV #135)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の135回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は「このネタだけで最後まで引っ張るの?」という、1つのネタ、しかも結構しょーもないネタだけで首尾貫徹しているMVを2つ紹介します。
もちろん、その結果、素晴らしいMVとして仕上がっており、最終的に「よくこのネタだけで飽きずに最後まで観せてくれた!」というMVとなります。

では、まず最初のMVに参りましょう。
とその前に、皆さん、ピンポンゲームってご存じですか?
正式には「PONG(ポン)」という名称のビデオゲームなのですが、たくさんのコピーが世に出ており、私もそうですが皆さんもコピーのほうを目にされたことが多いのではないかと思います。
モニター画面の左右にラケットが1つずつあり、それを上下に動かすことで左右に動くボール(ピンポン玉)を打ち返すゲームになります。

1つ目は、そのピンポンゲームを題材にしたオススメMVです。
アイゼンファンクの「Pong」です。どうぞ!

最初の「PONG」の画面から始まり、ダンサーやバンドメンバーまで巻き込みながら映像に変化をつけ、同じテーマの映像かつ単調と言えなくもない楽曲にもかかわらず、最後まで飽きずに一気に観させてくれます。
見終わったあとに「えっ、6分近いMVだったんだ...」と気付くというのは優れたMVである証(あかし)ですね。

アイゼンファンク(Eisenfunk)は、2006年に結成し2014年に既に解散してしまっているドイツのバンドです。
EBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)と呼ばれる1980年代にヨーロッパから始まったパンクとテクノを掛けたようなちょっと攻撃的な電子音楽の分野があり、アイゼンファンクはそのEBMのバンドとなります。
実は私自身あまりEBMに詳しくなく、EBMのバンドとのお付き合いもこのアイゼンファンクだけ、しかもMVだけのお付き合いとなるので、詳しくは分からないのが正直なところです。
しかし、アイゼンファンクのMVは、数は多くないもののお気に入りのMVが多く、たまーに今でも観ているのですが、このオススメMVの連載で紹介するタイミングをうかがっていたところ、今回ようやくそのチャンスが巡ってきてちょっとホッとしています。

しかし、この「Pong」のMVはよくできています。
最初はビデオゲームの「PONG」の画面から始まり、それが3D化した映像に切り替わり、続いてダンサーが表れてそのダンサーがボールを手足や体を使って打ち返していきます。
ダンサーがボールをはじく映像も、最初は2D、つまり平面のボールの弾き合いですが、次の場面ではなんと3D、上下左右だけでなく前後や奥行きのある空間でのボールの弾き合いに発展しているところがスゴイですね。
そして最後にはバンドメンバー自身がボールを弾き合うという、楽しい映像で終盤を迎えます。
途中でダンサーのダンスだけの映像やバンドメンバーの演奏だけの映像も少し差し込まれますが、基本は「PONG」をテーマとした映像で貫かれており、1つのネタでここまで楽しませてくれるMVはなかなかありません。

この「Pong」のMVは、1つのネタとはいえ様々な変化を加えているので飽きずに観れるのですが、そうではなく本当に1つのネタだけでほとんど変化が無いのに飽きずに観せてくれるという不思議なMVがあります。

それが2つ目に紹介するオススメMV。
ジョナサン・ブリーの「Until We're Done」です。

全身タイツと思(おぼ)しき複数の女性がひたすら踊るという、よく言えばシンプル、ありていに言えば単調な映像のみで構成されるものの、5分近い時間がすぐに終わってしまうのが、不思議かつ理解不能なMVです。

ジョナサン・ブリー(Jonathan Bree)はニュージーランドのアーティストで、以前はブルネッツ(The Brunettes)というバンドで活動していたのですが、2009年に解散後はソロ活動とプロデュース業に専念しており、この「Until We're Done」は2020年にリリースした4thアルバム「After the Curtains Close」に収録されている楽曲になります。
ちなみに、ブルネッツ時代にも面白いMVをリリースしていたものの、楽曲的にはあまり好みではなかったのでほとんど再見はなかったのですが、ソロに転向してからは楽曲のテイストが変化し、かつ全身タイツに取りつかれたかのようなMVが目白押しで、私のお気に入りのアーティストの仲間入りをしているお方になります。(また特集を組んで紹介させてもらえればと思っています)

この「Until We're Done」のMVでもご本人は全身タイツで登場されていますが、それよりもメインとなる女性陣の登場の仕方が異常です。
白い全身タイツに白の衣装を身にまとい、ゆったりとした楽曲に合わせてユルユルと踊る女性だけですべての映像が構成されています。
楽曲の印象付けも弱く、かつ映像もほとんど白のみでかつ登場人物も同じ全身タイツの女性のみ、そしてその動きも緩慢という普通であればすぐ飽きてしまいそうな映像なのですが、画面構成や女性の踊る構図の変化により飽きが来るギリギリのところで微妙な変化をつけながら最後まで引っ張って行ってしまいます。
途中に30秒強ほど、床に円形に寝そべっているであろう複数の女性を真上から映しながらスパイラル状に奥に進んでいく、えんじ色のフィルターが掛かった映像がありますが、それも左右に立って並んで踊る構図が円形で俯瞰の構図に変わっただけで基本的な構成は変わっておらず、しいて言えばその変化ぐらいしかありません。
更に不思議なのが、終盤に女性が踊る映像が流れる中で、たまに映し出されるジョナサン・ブリーの顔のドアップが邪魔に思えることです。
本来であれば単調な映像の中での変化となるため良いイメージを残すはずですが、逆に顔のドアップが表示されるたびに「早く消えて女性だけの絵に戻ってくれ!」と願っている自分に気付き驚きます。
それだけ、この女性陣のユルユルした踊る映像に脳が侵されているのではないかとすら思うほどです。

さて、今回の1つのネタだけで貫きながらも素晴らしいMVとして仕上がっている2つのMVはいかがでしたでしょうか。
アイゼンファンクは「動」のMV、ジョナサン・ブリーは「静」のMVとテイストは反対ですが、2つともレアかつオススメのMVですので、ぜひ見比べながら楽しんでください。

ではまた次回に。

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