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DUNE2の皇女イルーランは超絶イイが、ロイシンマーフィーの被り物MVも一見の価値アリだ(オススメMV #146)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の146回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は、私の中では「被り物(かぶりもの)女王」(英語では「Headgear Queen」でしょうか)と命名しているロイシン・マーフィーの「被り物MV」の特集をお送りします。(勝手に命名シリーズとも言えますね)

今回のロイシン・マーフィーの被り物MV特集をお送りするきっかけは、前回のファットボーイ・スリムの「Weapon Of Choice」のMVの話の中で出た「皇女イルーランの被り物は超絶素晴らしい!」という話となります。(前回のファットボーイ・スリムの回はコチラ⇒「やっぱりクリストファーウォーケンが最高だ!」

DUNE2の映画の中でのフローレンス・ビュー演じる皇女イルーランの被り物が超絶最高で、「これに類する被り物を身に付けた方が登場するMVで特集を組もう!」と思ったのですが、おぼろげな記憶の中にはいくつか思い当たるMVがあるものの、どうしてもそのMVのタイトルやアーティストが思い出せず、1つだけ思い出したのが今回最初に紹介するMVとなります。

では、DUNE2の皇女イルーランの被り物に似ている被り物を身に付けた女性が登場するMVはコチラです。
モロコの「Sing It Back」です。どうぞ!

鏡のような金属片で構成された被り物とコスチュームに身を包み、サイケデリックな映像効果の中で踊るロイシン・マーフィーが際立つMVです。
皇女イルーランの鎖の被り物と鎖帷子(くさりかたびら)と比べても、金属片と鎖という違いはあれど、イイ線いっていると思いませんか?

モロコ(Moloko)は、上のコメントにあるロイシン・マーフィーという女性のボーカリスト(作詞もしますが)とマーク・ブライドンという男性のプロデューサーからなるイギリスのエレクトロデュオですが、1994年に結成し2004年に既に解散しています。
この「Sing It Back」は、1998年の2ndアルバム「I Am Not a Doctor」に収録され、翌1999年にシングルカットされますが、直後にリミックス版も発売され、そのリミックス版のほうが全英チャートで4位とモロコの楽曲の中ではNo.2のヒットとなっています。

MVのほうは、なんといっても特徴的な衣装に身を包んだロイシン・マーフィーのインパクトが強く、かつそれに負けない程のサイケデリックな映像効果が加えられ、映像の押し出しが極めて強いMVとなっています。
楽曲も悪くはないのですが映像が強すぎて印象に残らず、そういう意味ではバランスの悪いMVですが、何よりロイシン・マーフィーのインパクトが強く、尖ったMVとしてゆるぎない存在価値を得ているMVとなっています。

さて、肝心の被り物ですが、このMVでロイシン・マーフィーが被っているのはコスチュームと同じく鏡のような金属片で構成された被り物で、DUNE2の終盤、アラキスでシャッダム4世が皇位をポールに継承する際に皇女イルーランが被っていた被り物と若干似ていますね。

本当は、私が一番好きな被り物である、アラキスに到着した際に皇女イルーランが被っていた被り物(鼻筋に沿って額から顎に延びる鎖から左右に肋骨のように伸びる金属の細いプレートで構成される被り物)と似た出で立ちのMVがあればいいのですが、さすがに記憶をたどっても存在せず、まさしく唯一無二の被り物と言えそうです。

MVとは関係なく、この皇女イルーランの被り物に似たコスチュームは無いのか、ネットで色々検索したところ、似たテイストの被り物を含むコスチュームを見つけました。
それは、今から遡ること4年前のパリ・ファッション・ウィーク、いわゆるパリコレでのパコ ラバンヌ(PACO RABANNE)の2020年秋冬コレクションのランウエイショーで登場した衣装になります。
まさしく皇女イルーランの被り物を含めたコスチュームと同じテイストの衣装が複数登場しているのです。
これはGoogleの画像検索に様々な皇女イルーランの画像を投入し、探り当てた結果ですが、これを見つけたときは感涙モノでした。

ここで一旦、話をDUNE2の皇女イルーランの被り物に戻して、この皇女イルーランのコスチュームはジャクリーン・ウエストという衣装デザイナーが担当しているのですが、皇女イルーランの被り物を含むコスチュームをデザインしたプロセスを知りたくなり、そのジャクリーン・ウエストのインタビュー記事を読み漁っていく中で、その源流を把握するとともに驚愕の事実を知ったのです。
まず最初は、DUNE2でのコスチュームデザインのトータルコンセプトで、「modieval(モディーバル)」と名付けられ、中世(mediaeval)を近代的(modern)にアレンジした世界観を指している造語となります。
その情報を知ったうえでDUNE2のコスチュームを見ると、進歩した科学技術をもつ文明を描きながらもクラシカルな雰囲気を醸し出している要素のひとつにコスチュームが寄与していることが分かります。
コスチュームのベースとなるデザインとしては、バレンシアガやティファニーなど様々なデザイナーからインスピレーションを得ているのですが、具体的なコスチュームも参考にしているのです。
参考にしたコスチュームは2つあり、1つはアレキサンダー・マックイーンの2012年春夏コレクションですが、こちらは皇女イルーランの衣装に対してはそれほど影響は与えていないかと思われます。
そして、もう1つが皇女イルーランの衣装に大きく影響を与えたコスチュームであり、それが上で紹介したパコ ラバンヌの2020年秋冬コレクションなのです!
この事実を知ったときは、歴史研究家が様々な情報から推測して立てた仮説が、古文書等の発見で事実と裏付けられた時の感動にも匹敵し(チョット、いやだいぶ大げさですが...)、我ながら結構やるな...と思った次第です。

ちなみに、鎖帷子と鎖の被り物を身に付けた皇女イルーランの等身大パネルが、DUNE2の制作会社であるレジェンダリー・ピクチャーズの通販サイトで販売されており(しかも45ドル弱と結構安価!)、買おうかどうしようか迷ったあげく、『買ったところで、どこに置くんだろう...』と我に返ってギリギリで購入を踏みとどまったというのがつい先日のことになります。

このまま行くと、DUNE2の皇女イルーランの話ばかりになりそうなので、まだまだ語りたいところですが、泣く泣くMVの話に戻らせてもらおうと思います。

ここからは、ロイシン・マーフィーの怒涛の被り物MVの紹介となります。
では、2つ目の被り物MVはコチラ。
ロイシン・マーフィーの「Let Me Know」です。

紙のお皿かと思いきや、編み込まれたような模様のある一点物であろう帽子をかぶり、これまたなかなか無い衣装を身にまとったロイシン・マーフィーのインパクトが凄(すさ)まじいMVです。
実は楽曲もイケてるのですが、映像のインパクトが強烈過ぎて、楽曲が余り入ってこないというMVでもあります。

ロイシン・マーフィー(Róisín Murphy)は、上でも少し紹介しましたが1994年からモロコというエレクトロデュオで活動を開始したアイルランドのアーティストで、2004年のモロコ解散後はソロとして活動しています。
ソロとなった翌年の2005年からソロ名義でのアルバムをリリースしており、昨年2023年には最新となる6thアルバムをリリースしています。

「Let Me Know」は、2007年の2ndアルバム「Overpowered」からの2ndシングルとして同年にリリースされ、彼女の最大のヒット曲となっていますが、上でもコメントした通り、楽曲はいいもののMVの映像のインパクトが強く、MVとしてのバランスはそれほど良いとは思えません。
しかし、バランスがイイだけでは良いMVではなく、逆にバランスがイマイチでも素晴らしいMVということもあり、この「Let Me Know」のMVはまさしくその種のMVと言えるでしょう。

続いての被り物MVはコチラ。
ロイシン・マーフィーの「Overpowered」です。

上の「Let Me Know」と比べると、映像のインパクトも帽子のインパクトも弱いため、楽曲とのバランスはいいMVです。
しかし、優れたMVかというとそうも言えないのが難しいところです。
バランスが良いMV=イイMVではないことを、この「Overpowered」のMVは教えてくれます。
(バランスが悪いものの、「Let Me Know」のMVのほうが再見率がメチャクチャ高いことがその証拠です)

この「Overpowered」は、上の「Let Me Know」同様、同名の2ndアルバムに収録されており、リードシングルとしてリリースされたのですが、クオリティがメチャクチャ高く、ロイシン・マーフィーの才能の高さが分かります。
2ndアルバム「Overpowered」もそうですが、彼女のアルバムはすべて完成度が高く、何度聴いても飽きません。
日本での知名度や人気は余りないのが残念でもありますが、逆にそこが良かったりするのが私の天邪鬼(あまのじゃく)なところでもあります。

さて、少しMVの話をさせていただくと、「Overpowered」のMVでは、なんといってもヘンテコな形のそんなに大きくない黒い帽子を被るロイシン・マーフィーが、ある女性のイメージそのもの...という点が私の記憶に刻み付けられています。
その女性とは、スティーヴン・キングの名作小説「ドクター・スリープ」に登場する「ローズ・ザ・ハット」そのヒトであり、美しくも陰のある女性というローズ・ザ・ハットのイメージと同じということだけでなく、どんな体勢でも落ちることがない小さな帽子を被っているという点が共通しており、この「Overpowered」のMVを(そんなに回数は多くないですが)観るたびにドクター・スリープを読みたくなってしまいます。(ちなみに、ドクター・スリープはスティーヴン・キングの小説の中でもお気に入りで、4回は読んでいるかと思います)

だいぶ語りが長くなってしまったので、そろそろ締めに入りましょう。
最後に2つ、驚愕の被り物MVをお送りします。
なにはともあれ、2つのうちの1つ目、インパクト絶大のこのMVをまずはご覧ください。
ロイシン・マーフィーの「Murphy's Law (Cosmodelica Remix)」です。

スゴイとしか言いようのない、ぶっ飛んだ被り物MVです。
衣装も映像の特殊効果もスゴイですが、何より被り物がスゴイ!

自宅で撮影したライブ映像に特殊効果を施した動画で、純粋なMVでは無いとも言えなくもありませんが、特殊効果を施した段階でMVという範疇(はんちゅう)に入れても良いと判断してます。
つまり、それぐらいクオリティが高い動画でありMVであるのです。

そして、映像のインパクトが強すぎて印象に残りませんが、楽曲も素晴らしく、できれば連続して3回以上、このMVを観てみていただきたいのです。
そうすると、インパクトの強い映像に慣れてきて、映像の良さだけが認知され、そこに素晴らしい楽曲がしっかり認識されることで、バランスの取れたMVとして評価することができます。
この「3回連続視聴」という手間を掛けた方にしか得ることのできない、至福の陶酔感を与えてくれる稀有なMVなのです。

続いて、2つ目の自宅ライブ動画の被り物MVをご覧ください。
ロイシン・マーフィーの「Sing it Back」です。どうぞ!

一見ふざけているように見えますが、しっかり構成された特殊効果の組み合わせと、一番最初に紹介した被り物MV「Sing It Back」の映像を背景として組み込み、恐ろしいほどの高次元のMVとして完成させています。
もう自宅のライブ動画という域は完全に超えていますね。

この2つの自宅のライブ動画をベースにした名作と言える被り物MVを観て、2つのことが分かります。
1つ目は、タモリさんの「狂気を演じることができるのは理性だけだ」という名言が事実であるということ。
2つのMVを観ると一見メチャクチャなように見えますが、計算と試行錯誤の結果であることが容易に想像できます。
そして2つ目は、このロイシン・マーフィーのという女性が、類まれなる資質の持ち主であることです。
誤解を恐れずにいうと、私の大好きな電気グルーヴのふたりの役目をひとりで実現しているかのようです。
楽曲を作りプロデュースし、それを自ら楽曲だけでなくパフォーマンスとしても表現していく...これをひとりで実現することは至難の業です。
そして、これを実現しているロイシン・マーフィーという女性には拍手しかありません。(ホント、スゴイ...)

以上が今回紹介する被り物MVですが、最後に1つ、DUNE2の皇女イルーランの被り物つながりのみでMV(というか動画)を紹介させてください。
オティリア・ブルマの「Deli Gibi (Anas otman Remix)」です。

皆さんにご覧いただきたいのは、このYouTubeにアップされた動画のサムネイルのみとなります。
中近東の女性と思(おぼ)しき美しい女性が金属製の鎖をベースとした装具を顔につけた様(さま)は、DUNE2の皇女イルーランにも匹敵するインパクトと高揚感を与えてくれます。

この動画は、DUNE2の皇女イルーランの鎖と金属プレートで構成される被り物に類する被り物を被った女性の映像を探す中で見つけたのですが、実は動画の中にはこのサムネイルの姿の女性は一切登場しないという、ガッカリ感がハンパない動画となります。
なお、もう2つ、同様にこのサムネイルと同じ動画がYouTubeにアップされていますが、コチラも動画の中では一切登場せず、かつ楽曲も動画も別物というワケの分からない動画となっています。(2つのうちの1つは全く同じサムネイル画像、もう1つは同じ女性の違う角度の画像となっています)
このサムネイルの女性の映像や画像の元ネタをご存じの方がおられたら、ぜひ詳細をお教えいただきたく、切にお願いする次第です。

さて、今回のロイシン・マーフィーの被り物MVの特集はいかがでしたでしょうか?
今回を機に、ロイシン・マーフィーという日本での知名度や人気は低いものの、素晴らしい楽曲とパフォーマンスを提供してくれるアーティストを、ぜひ皆さんにも知っていただければ嬉しく思います。
また、今回はDUNE2の皇女イルーランの話が全体の30%を占めるほどメチャクチャ多くなりましたが、もしDUNE2の映画を鑑賞される機会があれば、ぜひ皇女イルーランの被り物に注目して観ていただければ、なおうれしい限りです。

ではまた次回に。

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