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ロバートパーマー特集だ!女性キャストのMVもいいが、楽曲も素晴らしいのでぜひ聴くべし(オススメMV #107)

こんにちは、吉田です。
オススメMVを紹介する連載の107回目です。(連載のマガジンはこちら)

今回は「ロバート・パーマー特集」ということで、3つのMVを紹介します。
3つのMVとも「女性キャストのインパクトが強い映像だが、楽曲自体も素晴らしい」という共通点のあるMVとなります。

では、まず最初のMVはコチラ。
ロバート・パーマーの「Addicted To Love」です。どうぞ!

シンプルな構成でありながら強いインパクトを与えるMVです。
最後まで同じ構図でありながらも飽きさせないのは、その映像に負けることのない楽曲と、ロバート・パーマーの歌声があればこそです。
名曲であり名作MVであることは確実です。

ロバート・パーマー(Robert Palmer)は、1974年にデビューしたイギリスのミュージシャンで、シンガーという側面もありますが素晴らしい楽曲を作るソングライターでもあります。
デビュー後は大きなヒットに恵まれていなかったようですが、1985年に当時人気絶頂だったデュラン・デュランのアンディ・テイラーとジョン・テイラー、そしてトニー・トンプソンと組んだ「パワー・ステーション」というバンドがUSでヒットし、そこから流れが大きく変わります。
ちなみに、パワー・ステーションのMVも当時人気があり、この「Addicted To Love」同様、楽曲のヒットにMVが大きな影響を与えた事例のなかのひとつと言えます。(楽曲ももちろんGoodです!)

私はパーマーのファンではあるのですが、実は最初からではなく、パーマーを知ったのはパワー・ステーションのMVとなります。
「このシンガー、メチャクチャかっこいいし、歌もめちゃくちゃパワフルだ。誰なんだ!」と調べ、いつものように作品を遡って聴き、「このヒト、スゴイ!」とファンになったのです。

話を戻すと、パワー・ステーションのヒットを機にパーマーも波に乗るのですが、そのきっかけとなったのが「Addicted To Love」のMVとなります。
「Addicted To Love」は8thアルバム「Riptide」の2ndシングルですが、アルバムのリリースは1985年11月です。
パワー・ステーションのヒットは1985年3月にリリースした1stアルバムからですが、バンドのツアーを断りソロアルバムの制作を行ってリリースしたのが「Riptide」となります。(半年ほどで制作されたのではないでしょうか)
ソロ活動を優先したことには賛否両論あるのですが、この「Riptide」は名盤ともいえるので、ツアーに参加していたらリリースされていなかった可能性もあり、その意味ではこれでよかったのではないかと思います。
それに、「Riptide」の制作にはパワー・ステーションのメンバーも参加しているので、メンバー了解の上でのことだったと推察しています。

そして、この「Addicted To Love」がUSで1位となり、そして初のグラミー賞とMVA(MTV Video Music Awards)を受賞したことで、ロバート・パーマーは名実ともにスターとなったのです。

この「Addicted To Love」のMVは、ご覧の通り無表情で楽器を演奏する女性キャストが特徴ですが、この構成とテイストのMVは今までになく、リスナーというか視聴者に大きなインパクトを与え、パーマーの名が認知されることになりました。
なんとこの女性キャストの面々は全く楽器を演奏できず、この場で演奏方法を教えて形だけでもそれっぽくしようと試みたようなのですが、講師役の方が断念し、テキトーなままで本番の撮影に臨んだとのこと。
MVを観ていると確かに全くでたらめで、ギターはもちろんのこと、ドラムのいい加減さにはあきれ返るほどです...

詳しい解説は他の2つのMVと併せて行いますので暫しお待ちいただくとして、実は今回の特集は前回の連載で取り上げたMV、アレックス・ガウディーノの「Destination Calabria」の原点を遡る内容となっているのです。
そうです、大勢の女性が楽器を演奏するMVは数多くリリースされていますが、その原点はこの「Addicted To Love」ではないかと考えています。(気になる方は、前回の連載「エロオモMVと勝手に命名」でご確認を!)
つまり、「Addicted To Love」は業界にも多大な影響を与えたMVなのです。

話は尽きないので、2つ目のMVに参りましょう。
ロバート・パーマーの「I Didn't Mean To Turn You On」です。

少し雑然とした感もありますが、女性キャストが「これでもか!」というぐらい出てくる押し出しの強い映像です。
もちろんパーマーの歌声も抜群で、渋い楽曲にワチャワチャとした映像とのアンマッチも逆にいい味となっています。

この「I Didn't Mean To Turn You On」は、「Addicted To Love」と同じ8thアルバム「Riptide」からの5thシングルとしてリリースされ、USでチャート2位となるヒットになりました。
ちなみに、パーマーのオリジナルの楽曲ではなく、シェレール(Cherrelle)という女性シンガーが前年の1984年にリリースした楽曲のようです。
この連載を書くにあたり少し調査したところその事実を知り、今までてっきりパーマーのオリジナルと思っていたので驚きました。
それぐらいこの楽曲はパーマーの声や歌い方にばっちり合っていて、この楽曲をパーマーにカバーすることを提案した方の目利きのスゴサとアレンジ能力の高さに拍手を送るばかりです。

MVの話に移ると、「Addicted To Love」のシンプルな構成の映像に比べて少し複雑になり、かつ出演している女性も笑ったりと、ちょっと俗っぽいMVになってきているのは残念なところです。
MVについての詳細な解説は、まとめて後程させていただきます。

最後はこちらのMVとなります。
ロバート・パーマーの「Simply Irresistible」です。

てんこ盛りでごちゃごちゃしていますが、楽曲とパーマーの歌声が素晴らしく、それだけでもこのMVを観る価値があります。
しかし、露出が高く、ちょっと下品な感じもするのが残念なところです。

この「Simply Irresistible」は1988年リリースの9thアルバム「Heavy Nova」からの1stシングルで、「Addicted To Love」に次ぐUSでの大ヒットとなった楽曲です。
しかし、惜しくもチャートとしては2位にとどまったのですが、この楽曲でパーマーは2度目のグラミー賞を取ることになります。

「Simply Irresistible」については、楽曲はメチャクチャいいのですが、このMVの映像は上にも書きましたが露出が多く、かといってその露出の高さがプラスの効果を生んでいるかというと微妙でなところです。
実際に、「Addicted To Love」はグラミー賞とMVAの2冠を達成し、楽曲とMVの2つの側面で評価されましたが、この「Simply Irresistible」はグラミー賞は受賞したもののMVAではノミネートすらされませんでした。(ちなみに、「I Didn't Mean To Turn You On」は、受賞は逃しましたがMVAにノミネートはされています)

さて、ここからは3つのMVを比べて考察してみましょう。
まず最初は「Addicted To Love」です。
・女性キャストは1パターンのみ(演奏)
・女性キャストは常に無表情
・構図も最初から最後までほとんど同じ
・衣装も全く同じ
・タイトなミニスカートだが、それ以外の露出は少ない
・背景などチープ
続いて「I Didn't Mean To Turn You On」。
・3種類の女性キャスト(演奏、ダンス、撮影)
・女性キャストはたまに笑ったりする
・構成も3種類
・衣装も3種類
・全般的に露出は少ない
・比較的チープだが際立つほどでもない
最後に「Simply Irresistible」です。
・4種類の女性キャスト(女性軍団、ダンサー、水着、ギター)
・女性キャストは笑うようでもあり微妙
・構成は複雑
・衣装は3種類(暖色ワンピース、黒ワンピース、水着)
・演奏する姿はなく、ギターを弾く手元の抜き映像のみ
・チープでもなく凝ってもいない

3つのMVを比べると、「Addicted To Love」がシンプルかつ尖った内容で制作されていることが分かります。
つまり、大いなるチャレンジをしている作品と言えます。
しかし、残りの2作品はシンプルとはいいがたく、多様な要素を持たせていることが洗練さを低下させているように思えます。
特に「Simply Irresistible」はヘンに露出が高いことが裏目に出ており、楽曲が素晴らしいだけに残念でなりません。

この3つのMVは、全てテレンス・ドノヴァン(Terence Donovan)という写真家がDirectionしているのですが、複数の女性キャストをメインに打ち出したMVは「Addicted To Love」だけにしておき、残りの2作品は違ったアプローチでチャレンジしておればよかったのに...と(余計なおせっかいですが)思うことしきりです。

私としては、この3作品のヒットは、もちろんうれしいのですが、少し微妙な気持ちもあります。
MVのインパクトが強く、特に全体でのインパクトというより同じ衣装の女性キャストがたくさん登場するというシンプルな印象付けが強すぎるため、楽曲の良さが打ち消されているように思うのです。(特に、「I Didn't Mean To Turn You On」と「Simply Irresistible」は!)
このMVの映像により楽曲とパーマーが認知されたことはゆるぎない事実ですが、それゆえにパーマーの楽曲そのものの良さの認知を阻害しているのではないかと。
まあ、この印象付けが強い映像でもMV全体として違和感なく仕上がっているのもパーマーの素晴らしい楽曲と歌声あればこそで、それを考えるとこれはこれでアリかなとも思っています。

しかし、その素晴らしい楽曲と歌声を提供してくれるパーマーですが、悲しいことに2003年に54歳という若さでお亡くなりになられています。
私の好きなアーティストであるブライアン・フェリー(過去の特集はコチラ)は、パーマーとほぼ同年代(フェリーが4歳年上)ですがバリバリ現役でライブもされているので、パーマーも生きておられれば楽曲制作やライブ活動もされていたのかもしれません。
残念ではありますが、パーマーの歌う姿をMVで観ることができるので、その楽曲や歌声は今も生き続けていると言えるのではないでしょうか。

今回は「ロバート・パーマー特集」として、女性キャストのインパクトのあるMVを3つお届けしました。
このMVを観て楽曲も気に入られた方は、ぜひパーマーの他の楽曲も聴いてみてください。
オススメは多数ありますが、有名どころの「Bad Case Of Loving You」や若干マイナーな「Know by Now」もメチャクチャGoodです。

(今回はメチャクチャ文章が長くなってしましましたが、どうしても好きなアーティストとなると我慢できず...ご容赦ください)

ではまた次回に。

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