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ウイスキースクールで本坊のマルス信州・津貫について学ぶ…

 10月1日、都民の日に念願だったウイスキースクールが開校した。ウイスキー文化研究所が入る広尾のビルのワンフロアが空いたので、思い切って6月に借りることにしたのだ。大阪フェスや横浜フェス、TWSCの授賞式などで多忙を極めていたため、工事等が遅れてしまったが、8月には構想も決まり、業者も選定して9月に内装工事に入ってもらった。完成したのが9月20日過ぎで、10月1日の開校に間に合った形だ。

 と同時に、箱だけ作ってもしょうがないので、7月くらいからカリキュラム、講座、セミナーの内容をスタッフと話し合ってきた。とりあえず、できるものからスタートしようということで、まずはシリーズものの第1弾、〝ジャパニーズウイスキートレイル”の第1回として、本坊酒造の津貫工場長(所長)の折田さんにやってもらうことにした。マルス信州と津貫を中心に、その立ち上げ、そしてリノベーションすべてに携わってきた折田さんならではの話をしてもらうことに。

 節目節目で、私もいろいろな行事に関わらせてもらっているが、印象的だったのが2011年2月のマルス信州の再オープン。『ウイスキーワールド』の取材で何度も訪れており、試験蒸留にも立ち合った。その上で4月上旬の再オープンセレモニーでは、私が駒ヶ根で基調講演をする予定でいたが、例の3月11日に起きた東日本大震災で、会そのものが中止を余儀なくされた。

 そんな長い付き合いもあり、今回本坊酒造さんにお願いしたが、もうあれから12年が経ち、その間に2016年には津貫、そして同じ本坊グループとして、ここ1~2年で熊本の山鹿、さらに鹿児島県枕崎市の火の神蒸留所が、新たに加わっている。そうした話も、折田さんならではの視点で語ってもらった。4蒸留所のスチルの違い、そして目指すウイスキーの酒質の違いは、特に興味深かった。また屋久島のエージングセラーの新熟成庫など、未来に向けての青写真も、興味深く聞いた。2016年の津貫のオープンイベントに参加した折に、足を伸ばして高速船で2時間40分という屋久島まで行っていたので、その屋久島エージングセラーの拡張は、期待して待ちたいと思っている。近いうちに屋久島にも行きたいものだ。

 今回のセミナーでテイスティングしたのは、マルス信州と津貫の2023年エディション、そしてマルスY.A.02、さらにそれぞれのローカルバーレイで仕込んだカスクサンプル、さらに津貫のチョコレートモルトの同カスクサンプルの合計6種。ローカルバーレイは、それぞれ長野県と鹿児島の大麦を仕込みに用いたもので、今鹿児島の蒸留所では津貫だけでなく嘉之助も、他でも取り組んでいる。最近嘉之助では仕込みをワンバッチ1トンから1.1トンに上げたが、その0.1トン、つまり100kg分がローカルバーレイ、つまり地元産大麦だった。

 9月上旬に嘉之助に行った時、その大麦畑を見せてもらったが、なんとコガネセンガンの芋畑の裏作として栽培しているという。つまりウインターバーレイということになるだろうか。本坊さんはどういう畑のどんな大麦を使っているのか、その詳細については今度聞きたいと思っているが、そのカスクサンプルを今回テイスティングできたことになる。明らかにそれぞれ麦のテロワールを感じるものになっていて、ウイスキー造りにおける原料穀物、特に大麦のテロワールについて、世界でも今、日進月歩の勢いで知見が積まれているということなのかもしれない。



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