色んな人がいるんだよ。これから先も必ず。

特養の介護主任という立場だと、自分のところにはさまざまな話が舞い込んでくる。入居者の対応に困っている、苦情、職員同士のトラブル、他部署からユニットの業務について指摘、コロナの対策、急病による欠員、採用や人事、マニュアル作成や修正…。余裕のある日は自分のデスクにどっかり座ってあーでもないこーでもないと考えを巡らせるが、月20日のうち15日くらいは施設の端から端まで駆けずり回って現場のフォローで半日終わる。私がちょっと(いや、だいぶ?笑)要領悪いのもあるのだと思うが、それにしたって『私のこと、"精神と時の部屋"に行ける人だと思ってます?』と聞きたくなる扱いの時もある(ごく一部のユニット職員がそういう仕事の投げ方をしてくる)。以前に書いたが人を育てることができないことで人手不足だけでなく人材不足に陥りつつあるため、なんとか次のリーダー育成のために自分の出来ることを模索しているところでもある。

次のリーダーが居ない状況は単純にリーダー不在のユニットを作ってしまうことによってユニット内の業務が滞るということだけでなく、当然そのフォローをすることになる私やもう一人の介護主任の業務が圧迫される。本来介護主任がやるべき業務に手が回らないことでさらなる人手不足へと負のスパイラルが続いて行くことになる。そしてそんな状況の中でリーダーをやりたいです!となる職員はなかなか居ないし、出来る職員もなかなかいない。その原因はやはり、意図的に人を育てる仕組みを作るということが出来ていないことなのだろうと思う。

9年前、自分が24歳でリーダーになった(ある日突然人事について貼り出された紙を見たら自分のユニットに自分の名前がなく、探すと違うユニットのリーダーになっていた笑)時、突然リーダーに任命されリーダーの仕事とは何かを一切教えてもらえないまま、フルシフト常勤として一人分の介護業務にあたりながら「リーダーなんだから」「リーダーなのに」とさまざまな話をぶつけられて、さらにはリーダー業務について一切教えてくれない上司からリーダー業務が出来ていないと怒られたりもした。「いや、だったらやってはいけないこととやらなければいけないことを教えてくれよ」と思うのは当然だろうと思う。私はたまたま周りに良い手本となるリーダーや先輩・同僚が居て、訳分からん怒り方をする上司が退職したりしてその状況でもなんとか続けることが出来たがそうで無ければ退職していたかもしれない。当然、自分が上司の立場になったのに同じ思いをさせるわけにはいかないので試行錯誤しているが、未だに試行錯誤状態である。

今年度からようやく始動できたのはリーダーの仕事は何かということを、リーダーでは無い人も含めて介護課全員が把握できるようにすること。リーダーが業務でパンクするパターンは「誰かがやらなければいけないこと」と「リーダーでなければできないこと」の線引きが出来ておらず「誰でもできるけど誰かがやらなければいけないこと」までリーダーの仕事になっていることが多い。その線引きをしっかりとして全員に分かってもらうことで、「これは介護職員だったらやらなければいけないこと」「これはリーダーがやらなければいけないこと」と整理をして『リーダー=とにかく仕事が多くて大変な仕事』というイメージをなくし且つ「とにかくリーダーに投げればいいだろう」とサボるやつをサボらせない作戦である笑

当たり前のことのように思われるかもしれないが意外と介護の現場だと職務分担をはっきり書面にしているところは多く無いのでは?と思う。勤怠の書類や提出物、体重測定にカンファレンス、発注作業や消毒作業、ユニット会や誕生日祝い…毎日・毎週・毎月・年単位でやることやチェック項目があり意外と『オムツ交換』とか『入浴介助』という介護業務以外のことはたくさんある。毎日違う時間に出勤する複数の人間が同じ仕事を共有するのは中々難しく、気の利く人や文句を言わない人に仕事が偏ることもよくあるため、なるべくそうならないようにルールを決めて書面にした。

同時に決めたのがトレーニング期間。ユニットリーダーを任せるにはちょっと心配だけど「やります!」と言ってくれている…とか、「リーダーはちょっと荷が重いです」と言っているが絶対この人出来るんだよなあ…という人とか。とりあえず、やってみる?の期限付きリーダー制度。期限が決まっていることはいいことも悪いことも案外受け入れやすいものだが忘れがちなところでもある。また、期限を決めることでその前に今後について必ず話をする機会を作ることが出来るため「期限まではやってみよう」「今後の面談で相談してみよう」と前向きな気持ちになってもらえるのではという希望もある。前述の職務分担は「ユニットリーダーのみ」「ユニットリーダー・サブリーダーのみ」「すべての介護職」という枠で分担を決めている。期限付きリーダーは"サブリーダー"という名称で、ユニットリーダーとの違いは人事考課や職員間のトラブル対応といった介護業務以外の管理業務を行わないことのみとした。

前置きが長すぎて記事のタイトルが意味不明になりつつあるが、こうした取り組みで今年度はあらたに4人、サブリーダーが誕生した。しかしやはり相手は人間、仕組みが出来たところでそうそう上手くいかない。サブリーダーを引き受けてくれた中で最年少は25歳。業務はそつなくこなせるが人間関係がちょっと…いやだいぶ不器用。許せないことが一つあると今まで良好な関係だった人とも突然挨拶すらまともにしなくなってしまう。よく言えば裏表がない。「ケッ」と思っていたら『ケッ』という態度になってしまう。私から見ると「へたくそか!」と言いたくなってしまうがその正直さが憎めない笑 なにより自分も24歳でリーダーになったあの頃、自分が周りからどう見えているかなんて全然分からずに正しいと思うことだけをやろうとしていたから、自分と重なって見えてしまってどうにかこの先の彼女の人生が良きものになるよう視界が広がってほしいと思っている。歳とったなあ…笑

さて、ようやくタイトルに辿り着くがこうして誕生した新人リーダーたちは特に、扱いづらいベテランに悩まされ痛いことを突かれる日々から逃げたくなってしまう。本当に"逃げ"として私に自分の仕事をぶん投げてくる人も居れば不器用なりにぶつかって、玉砕しかける人もいる。私はどんなタイプにもこのタイトルを伝える。仮に扱いづらいベテランを田中さんとして、「田中さんが困った人だからといって例えば自分が異動したりさせたりしても、次のユニットで第二の田中さんは必ず現れるよ?スーパーエリートでも直すべきところがあるし、ポンコツクズ野郎(失礼)でも必ずいいところがある。これから先、ここで働き続けても、違う職業についても、専業主婦(夫)になったとしても、色んな人と付き合わなきゃいけないのは変わらないよ。嫌だな、変わって欲しいなと思う人と出会ったら、自分の何を変えられるかを考えよう」

「本当に辛くなっちゃったら何もかもぶん投げていいよ。せっかく頑張ってるのに体壊したり仕事辞めたくなっちゃうのが1番もったいない。万が一、リーダーやっぱ無理!ってなっても大丈夫なように準備してる。だからこれはトレーニング、練習なんだよ。とりあえず試しにやってみなよ」こんな風に話をした後、やってみます!と面談室を颯爽と去っていく姿を見ると何故だか自分も元気になっている。

自分を変えるのは難しい。でも他人を変えるよりずっと簡単。人間は絶対に変わらない。この世で唯一変えられるとしたら、自分自身しかいないのだ。生きるって、お金を稼ぐって大変なことだよね。どうせ何やったって大変なんだから、面白くてかっこいい方がよくない?

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