春どころか、冬さえ知る由もなかったキミへ今、何とかして伝えたいこと。

一つの時代が終わり、新たな時代へ移ったあの日あの時。
多くの人が思い願ったことだろう。
「希望に満ちた良い時代になりますように」と。

かく言う私もまた、翌月には誕生を迎えるであろう新たな生命とともに、同じようなことを漠然と願っていたと思う。

あれから10ヶ月余り。
私を取り巻く「市井」レベルの小さな世界も、大きな世界も、何もかもが予期せぬ方向に変わってしまったのではないか。
それも、あまり良いとは言えない方向に。

高校時代、現代社会担当だった恩師の言葉が頭を過ぎる。
「これからの人生、予期しない大きな出来事っていうのが必ず起きる。それも、これまでの前提が覆りかねないような大きな出来事が」

例えば恩師にとってそれは、
「ソビエト連邦の崩壊」だったり「ベルリンの壁解体」だったりしたそうだが。

平成初頭に生まれた私。確かに今までもそれなりには色々あったと思う。
物心ついているか否かはさておき、

「阪神淡路大震災」
「地下鉄サリン事件」
「同時多発テロ事件」
「リーマン•ショック」
「東日本大震災」

といったところであろうか。
どれもそれぞれに衝撃的ではあったし、リーマン•ショックの煽りを受け、就職活動はそれなりに苦労したのは今も記憶に残ってはいる。

地下鉄サリン事件も発生当時は幼かったものの、後に事件の背景を知って驚愕のひとことであった。

また、大きなふたつの震災はもとより、近年は毎年のように起こる災害の惨状を鑑み、日本はそもそもが災害大国であり、我々はこの国に暮らす限り、否、こうして生きている限り、どこにいても被災者になり得るのだ、ということをその度に身を以て学んできた…つもりだった。

そして、今。
まさに未曾有と言って差し支えないような事態が日本はおろか、世界中を襲い、猛威を振るっている。

言うまでもない。
新型コロナウイルスだ。

今起こっていることは、これから先、ずっと忘れることはできないだろうし、今静かに眠っている9ヶ月の息子が大きくなったら、日本が、世界がこんなにも大変だったのだと話して聞かせることになるのは間違いない。

自然災害のように惨状が目に見えず、音も聞こえることはないため、得体の知れない「不安」や「恐怖」「ストレス」が我々を支配し、単純に罹患しての身体的な被害のみならず、精神的な健康をも蝕んでいく。

かつて、東日本大震災の時も、日本全体が一時期自粛ムードとなったことがあった。
しかしながら、これ自体は今回のように国から直接要請があったわけでもなく、結局いつの間にか解除された(しかもそれほど長期間ではなかったと思われる)ことだけは覚えている。

いずれにしても、これほど日本中を巻き込んでの非常事態体制が敷かれたことは、私は知らない。

色々なことを言い出したらキリがないので最小限に留めておきたいのだが、望むのはただひとつ、一刻も早い終息に尽きる。
ただ、1ヶ月や2ヶ月で簡単にどうにかできる話ではなさそうだ、ということは薄々分かっている。しばらくは、我慢をしなければならないのだということも、織り込み済みだ。

ただ、私もひとつ、参加を心待ちにしているイベントがある。開催までもう少し時間があるため、変わらず希望は持っていたいが、この話はまた改めて。

ウイルスも所詮は我々と同じ生き物に過ぎないから、いつまでも生き長らえるものではないはずだ。だから、皆言うように「春は必ず来る」。できることは皆やって、その時を待つだけだ。

でも、こんな状態になっていることさえ知らないまま、ひとり遠いところへ行ってしまった人がいる。

春どころか、冬さえ知らないまま、彼は行ってしまった。

私の息子に会うことを心待ちにしてくれていたのに。
何なら後3日、待っていれば会えるはずだったのに。

確かに今、かつてキミが当たり前のようにいたこの場所は、大変なことになっています。
ただ、もしキミが変わらずここにいてくれていたとして、やるはずだった、やりたかったことはしばらくできず、少しの間我慢を強いられることになるのはまず間違いありません。

でも、相変わらずキミは運がないよね、いつもどうなっているんだろうね、ってどうして笑わせてくれなかったんだよ。
もう、こんなことで二度と笑えなくなってしまったじゃない。

キミとこんなにも早く、道を分かつことになってしまったということに何か意味があったのか、なんてそんなこと、私は思いたくもないし、これからも思うつもりはありません。
きっと何もかもが不本意だっただろうキミも、そんなこと言われて嬉しいわけがないよね。

だけど、私がここに残った、残っている、という事実だけは曲げようがない。それを無駄にはしたくないから。

だから、私はもう少しここで踏ん張ってみることにします。

春どころか冬さえも知らずに行ってしまったキミに、少しでも何か伝わるように。

この彼のことは、また少しずつ書きます。
そして、全く関係のない雑談やくだらない話も、とにかく何でも、たくさん書いていきたいです。
とんだ初投稿ですが、どうぞよろしくお願いします。



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