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夏のおもいで

寝冷えした夏まで待てずに 小さいころ 走って 走って

まだ青いヤマモモの実をかじった

それはとてつもなく酸っぱくて かなしくて

ただそれだけの感情で

あのムカデの遊具のある公園で 一人夜に泣いた

月がとても綺麗で 知りもしない 私と同じように考える

世界中の誰かも きっと感動して泣くのかな 

稲光が奇妙で 空の上には誰かが住んでる

そんな事も考えてみる いい加減だな

飛行機に乗って見た雲の上は 真っ白がどこまでも続く

そのどこかに 真っ白な人間が隠れている

そんな感じがして 怖すぎた

夜はこわくないよ 

小さいころ 鏡の中に住む友達がいった

それは私自身でもあって 理想の私でもあった

タオルケットから足を出さずに寝る

どんなに暑くても おばけとかが 私に触れるかもしれない

そんな子供だった 未だにそんな感じ

夜の闇は月の光が照らしてくれる

わたしは夜の散歩が好きだった

パパと手を繋ぐ ただそれだけの事

水を張ったばかりの田んぼに 夕闇と月の光がまぶしくて

そんな事はもうできない 夢のまた夢

抜け出した窓を閉めてきたかなんてどうでもいい

ちぎれた様に切り取られた夏が去っていく

ピンク色に染めた髪は 暗闇では何色なんだろうか

たばこの煙がゆらゆら揺れて

深紅に染まったあいつの白くて細長い腕

何が彼女にふられただ みっともねえな

17の夏は 変な思い出があふれてる

18の夏は 嫌なこといっぱい

19の夏は 泣いてた

20の夏は 朝日が昇るまで起きてた

夏のない国に行きたいな

死んだように気だるい 暑い朝がまた来る

夏なんか死んじまえ 季節の変わりめのない国で

わたしは唸る 成仏できない夏の墓場の地縛霊のように

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