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不器用な旅立ち

誰かの犠牲のもとに成り立っている わたしの欲望は
声が届かない あなたのその腕を求め
旅立ちを 不可能にしてしまいたくて
ただ 奇跡とか 青天の霹靂とか そんなのが起きるのを
いつもと同じようにして つっ立って待つだけ
あなたは 置いていくの 大切なものを 人を 夢を 未来を
その寂しい横顔だけで 何十光年もの愛で満たしたくなった
触れると 壊れてしまいそうで かわいそう
意味のない雑音までが その空間では特別で
一呼吸の切なさとか 自分勝手なまなざしとか
不思議な魔法
あれは 一体 何だったの?
わたしは反抗ばかりだったから 抗わないあなたに
不貞腐れたくなる 意地悪したくなる 困ってほしい
泣いてしまいそう 泣けないのに 泣きたいのに
行かないで なんて 口が裂けても言えない
わたしは天邪鬼だし 素直になれない
不器用にしるした愛は 受け止めてくれたかさえも
ずっとずっと わからない
抱きしめられたくなんてない ただ 心で繋がっていたいだけ
遠くに行ってしまう前に わたしの方から消えてなくなりたい
そんな為だけに あなたに出会ったんじゃないのは わかってる
泣き虫なあなたは すぐ泣いて わたしを困らせる
それが愛しかった
近道の愛情や 継ぎはぎだらけの欲望を 満たしてくれた
許された気がした
だから だからこそ あなたを許せないのかもしれない
ねえ そんな顔で未来を悲観するのはやめて
悲しいくせに 寂しいって言えないくせに
抱きしめてやる 今度はずっと 抱きしめてやる
心臓の鼓動が 世界の喧噪にかき消されるまで
そしたら ちょっとは愛してたって わかるでしょう?
掴めない心臓が 愛しくなるでしょう?
だったらいいか って 戻ってきたくなるでしょう?
あした消える涙は 未来で流すあなたのうれし涙
そんな魔法なら かけてもいいでしょう?

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