見出し画像

読書メモNo.81 『流浪の月/凪良ゆう』


読み易くて、考えさせられるところもあって次々読み進められました。先日旅行に行った時の移動中に読み終わってしまったので3h位で読める本です。

度々、登場する【事実と真実】という言葉。
情報化社会に生きる私たちにとって、重い言葉で、大事な考え方だと思えました。

自由奔放に暮らしてきた、小学生の更紗。ある日、お父さんが亡くなり、大好きなお母さんは新しい恋人と出掛けたきり帰ってこなかった。。。

母方の親戚に引き取られた更紗。夜な夜な彼女の寝室に忍び込んでくる従兄弟の男子中学生に更紗は傷つけられていた。

そんなある日、同級生といつも遊ぶ公園で、子供たちからロリコンの不審者と言われている男の人と二人きりになった。
更紗は不思議と怖くなかった。自分から彼の家についていきたいといった。親戚の家にいるくらいなら。との思いで。

男性の名前は文(ふみ)。大学生だった。
文は更紗自身には無関心で、彼女を傷つけることもしなかった。ただただ、二人で過ごしていただけだった。暗くなるから帰るように提案した文。でも、ずっとここにいたいという更紗を追い出しはしなかった。
二人でレンタルDVDをみる。
ご飯を食べる。ありきたりの日常のおかげで、更紗は久しぶりに眠られるようになった。更紗にとっては、両親がいなくなってはじめての安息の地だった。

それでも、世間一般からみれば、文は変質誘拐犯であり、当然のようにこの共同生活は終わりを迎える。

それから、約10年後。社会人になった更紗。少し検索すれば、彼女がかつての誘拐被害者ということは、すぐに自分の周りに広がっていた。

居心地が悪いながらも、いまを懸命に生きる更紗。ある日、、、文を見つける。文が働いている喫茶店を見つけた。

更紗は、自分のわがままのせいで、自分の身の上のせいで、文を犯罪者としたことを悔いていた。文には優しくされたのに、勝手に更紗は変質誘拐の被害者として同情と好奇の目でみられてきた。どんなに自分が警察に世間に本当の事を言っても、子供だからと真実は曲げられて人々の印象に残っていた。

だから、更紗は文に会いたいのに声をかけられなかった。
文に責められるのが怖かった。

一方、文もお客としてやってくる更紗に気付いていた。文もまた、声をかけるのが怖かった。更紗に責められると思っていたからだ。

文は、性的な悩みを抱えていた。自分の性別と身体の微妙な解離、男性として成長しない体に悩んでいた。そんなとき、更紗が家にやってきた。警察にいつか捕まるだろうとは分かっていた。むしろ、捕まっていいとさえ思っていた。性でなやんでいたことで、病院に行きたいけれど行けない。自分が何者か知りたかった。

そんな、悩みを打ち明けないまま、更紗と過ごしたことに、後ろめたさがあった。


それでも交流を始めた二人。更紗の恋人が文のことを、更紗をかつて誘拐した犯人だと調べるのに時間はかからなかった。
世間にも暴露され週刊誌からも追われ、職場にもばらされた。

事実と真実は違う
私は被害者じゃない。
とどんなに更紗が声を上げても、世間はその声をかきけした。


事実と真実の違い。コロナの報道に不信を抱いて、テレビをあまりみなくなった私ですが、正しく事実と真実違うよねぇ。と思うことが多々あります。
目に見えたものが本当に真実か見極める必要があるなと改めて思いました。

おすすめ度:★★★★☆
コスパ  :★★★★☆(文庫本なら)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?