アサクリーYASUKE(弥助)-ロックリー問題を整理してみる
発端はゲームの歴史考証問題
弥助はサムライか?問題から
ゲーム内の「弥助は織田信長に仕えた剛腕の伝説的武将であった」
という設定に関して、ゲーム配給元の仏UBIソフト社が、「史実に基づいた」といったことに端を発し、
日本のゲーマー・歴オタたちが、違和感を表明、
元ネタとして、トーマス・ロックリー氏の著書が浮かび上がり、そこからさらに多方面に飛び火して、炎上中。
実証系の歴史学者の呉座勇一氏によると、
その時代に信長に扶持を賜った黒人はいたようで、史料は一つだけあるものの弥助が「侍だった」ことを断定できるかについては慎重であるべき…ということのようだ。
ものがフランスのゲームであるため、のっけから欧米ポリコレに曝されている。「弥助をsamuraiと認めないのは人種差別」とか「フィクションであるゲームを批判する者は差別主義」とかいった言説が飛び出してくる。
だが、問題は数年前から水面下で進行していた
「弥助が伝説的な活躍をしたという偽史」が本当の歴史として海外で拡散していたようだ。
ゲームより先に海外でかなりの書籍が刊行されている。
なんと、塗り絵まであった。
2023年のブラジルのカーニバルでは、弥助をテーマにした山車で優勝…とか
まあ、フィクションという認識であれば…別段気にするほどの事態ではないのかもしれないが…どうもその辺があいまいになってしまうには
「弥助」の実在を信じることからスタートして、日本のあれやこれやが、実は黒人であったという言説まで登場しているらしい。
これでは、なんでも日ユ同祖論や、なんでも韓国起源説のようになってしまいかねない勢いであうる。
本邦でのアサクリ問題炎上の構図
流れを図にするとこんな感じ。
どうしても横広がりになる…、すなわち、問題は複雑極まりない。
とりあえず問題がフェーズをぶったぎってみる。
UbiSoftによる「アサシンクリードシャドウズ」の設定や演出に関する疑義とUbiSoftの批判への対応に関する炎上(ゲーマー勢同士のポリコレ論争含む)
トーマス・ロックリー氏とUBIソフト社の関係に関する疑義
トーマス・ロックリー氏の言動とその背後関係に関する疑義
「黒人侍」が事実として広まることによる歴史改竄、ポリコレ化に対する危惧の声
トーマス・ロックリー氏擁護勢の発言とその背後関係に係る炎上(デービッド・アトキンソン氏、平山優氏、岡美穂子氏)
デービッド・アトキンソン氏
平山優氏
岡美穂子氏
日本の人文社会学の問題に関する批判と疑義
外務省のアフリカ政策(主に広報)に関する疑義
初期部分の概略については、下記、がおがおくんの動画がよくまとまっているのでそれを挙げておこう。
反日プロパガンダ疑惑としての「弥助-ロックリー問題」
なぜ炎上したのか?
これは、「弥助サムライ説」が、ポリコレプロパガンダor反日プロパガンダとして機能していないか?ということに尽きるだろう。
作り話が「事実」として捉えられることによって外交問題にまで発展…というケースの最たるものが「従軍慰安婦問題」である。
国内世論の混乱を招いただけではなく日韓の分断にも繋がる問題となったのは、記憶に新しい…というか、一部のフェミニスト活動家や活動家学者は「強制性」の拡張をして、いまだに退かないといった気配である。
今回の件で問題なのは「戦国大名が黒人奴隷を集めていた」という、でっち上げが史実としてまかり通る可能性があるということだ。
日本をしばしば悩ませてきた「プロパガンダ」という問題
弥助-ロックリー問題がなぜここまで炎上するのか?について、もう一つの観点を提示しておこう。
こういう前提があるからこそ、炎上し続けるのである。
現状は概ねこんなところだろう
放置すれば弥助問題は第二の慰安婦問題に?と危機感を持つ人がいるのは何ら不思議ではないだろう。
アサクリ-弥助-ロックリー問題を整理する
ちょっと繰り返しになるが、前述のリストを再度引っ張り出しておく。
UbiSoftによる「アサシンクリードシャドウズ」の設定や演出に関する疑義とUbiSoftの批判への対応に関する炎上(ゲーマー勢同士のポリコレ論争含む)
トーマス・ロックリー氏とUBIソフト社の関係に関する疑義
トーマス・ロックリー氏の言動とその背後関係に関する疑義
「黒人侍」が事実として広まることによる歴史改竄、ポリコレ化に対する危惧の声
トーマス・ロックリー氏擁護勢の発言とその背後関係に係る炎上(デービッド・アトキンソン氏、平山優氏、岡美穂子氏)
デービッド・アトキンソン氏
平山優氏
岡美穂子氏
日本の人文社会学の問題に関する批判と疑義
外務省のアフリカ政策(主に広報)に関する疑義
トーマス・ロックリー氏による珍説流布と氏の対応等(上記1~4)
トーマスロックリー氏は、「信長に仕えた弥助という黒人侍」に関するフィクションを作り込み、ノンフィクションとして、世界中に流布させていた。
トーマス・ロックリー
Thomas Lockley、イギリス出身 1978年生まれ
2000年、JETプログラムの参加者として来日、鳥取でALTを2年間。
2019年より 日本大学法学部准教授(研究分野:内容言語統合型学習(CLIL))、また、2019年よりロンドン大学東洋アフリカ学院客員研究員
流布の媒体は、英語版Wikiペディアの編集やら、ブリタニカの編集、書籍媒体等、様々である。
アサクリの配給元であるUBIとの関係は、ロックリー氏は否定していたものの、同ゲームのプロモーション用のポッドキャストにロックリー氏が出演していた模様で、信ぴょう性はない。
問題の第一は、ほとんど珍説レベルのロックリー説が、世界に広まってしまっていることである。
その中で最も問題になるのは「戦国大名で黒人奴隷を抱えるのが流行ってた」という部分である。
Xで炎上が派手になってくると、ロックリー氏はアカウントを消している。いわゆる垢消し逃亡状態。
問題の部分については「小説パート」に含まれているためにロックリー氏の著書に問題はないとする言説も出てきているようであるが、プロパガンダ化の可能性を問題とするのであればそこは関係ない。
巧妙な逃げ道を用意した書籍であると考えることもできる。
なにより、どうみても「ノンフィクション」扱いで、ロックリー氏のYASUKEが、東京書籍の英語の教科書に一部掲載されていたり、
さらに、こんな本まで…
帯を見ると「信長と弥助」がノンフィクション扱いである。
東京書籍は言わずとしれた教科書出版大手である。
なので、この問題、教育の問題という側面が付与されてしまった。
トーマス・ロックリー
Thomas Lockley、イギリス出身 1978年生まれ
2000年、JETプログラムの参加者として来日、鳥取でALTを2年間。
2019年より 日本大学法学部准教授(研究分野:内容言語統合型学習(CLIL))、また、2019年よりロンドン大学東洋アフリカ学院客員研究員
トーマス・ロックリー氏及び擁護勢の発言とその背後関係に係る炎上
デービッド・アトキンソン氏
デービッド・アトキンソン氏はアナリスト出身の財界人、小西美術工芸の社長であり、菅義偉元総理のブレーンとしても有名。
アトキンソン氏はどういうわけだか、突如トーマスロックリー氏の著書に対する批判に対する強烈な批判を開始。
ここから数日でアカウントに非公開にした模様。
どうやら「日本で黒人奴隷を召し抱えることがが流行した」ことを認めないのはレイシストという主張のようだ。
平山優氏
歴史学者である。
おもに「弥助は侍だったか?」という点に関して、「弥助は侍だった」という持論を展開していたが、歴オタ衆から多くの疑義が寄せられてしまった。
なぜ「侍か否か」が問題になっているかという点をスルーしたまま、自分の専門知識という土俵上で、上から目線で話をされているようで、そりゃあ炎上するわな…と思う。
岡美穂子氏
平山氏の炎上が落ちつくか落ち着かないか…というたタイミングで、あらわれた東京大学歴史編纂所の歴史学者…、いやまてよ…この方が歴史学者であるのかは、微妙かもしれない。
少なくとも、一般的に思われている歴史学者像とはだいぶ異なるようである。しいて言うなら「感性重視の歴史学者」というニュータイプなのかもしれない。
炎上は下記まとめで見ていくとよいだろう。
この方はがいちばんいわゆるポリコレ色が強いようだ。
日本の人文社会学の問題に関する批判と疑義
どうも日本の大学、こと人文学方面はおかしい。
というのは、アベ政治を許さないムーブメントあたりからだいぶ露見していたようにも思うが、北村呉座騒動+オープンレターの流れ(人文学者達による呉座勇一氏の排除案件 一部は係争が続いている)、安倍元総理暗殺後の学者の動き等で、その実像が急速に明らかになってきてはいたが、岡美穂子氏の言動は、また一歩それを明らかにしてくれたようだ。
オープンレター騒動に関係する岡美穂子氏の言動は…、ポリコレ型排除そのものではないだろうか。
外務省のアフリカ政策(主に広報)に関する疑義
岡美穂子氏が「外交」を持ち出したことから、一気に話がきな臭くなってきた。
「黒人侍」を海外に売り出したのは外務省だった説が登場。
確かに2018年の在モザンビーク日本大使の挨拶に弥助のエピソードの記述がある。
https://www.mz.emb-japan.go.jp/itpr_ja/00_000213.html
これは2019年以前に作られ、注記部分は最近付け足された模様。
さらに調べていくと、2016年の外務省の記述にこんなものが出てきた。
Japan's ODA-related Stories from Africa 2016年7月21日
この表現は、弥助をかなり持ち上げている。
ちなみに、弥助の出身国については、ロックリー氏は、当初モザンビーク説をとっていたが、最近は南スーダン説を打ち出している模様。
弥助展
弥助展はカメルーンでも行われていた。
当時のカメルーンの日本大使館職員も登場している↓
ここまでくると「弥助」を海外に宣伝したのは外務省だった可能性まででてきてしまう。
そして、2016年の時点で外務省の記述があったのであれば、ロックリー氏の『信長と弥助(2017)』岡氏の『大航海時代の日本人奴隷(2017)』の刊行より前になる。
その物語を、外務省はどこで仕入れたのだろう。
11年前の世界ふしぎ発見
2013年、モザンビークにロケまでいって弥助を特集している。 この番組に関与した専門家…いたはずだわねえ。 企画段階で専門家の関与なしにできる番組とは思えない。
ふしぎ発見 をキーに掘り進んだら、東大史料編纂所教授の金子拓氏が飛び出した。
こうなると、金子拓氏の関与の可能性は疑われますね。
もう一つの謎
発見したのはこれ。
横文字であるが…一橋大社会学の紀要である。
この論文自体、純粋な歴史学というよりは歴史社会学といった論文であるが、そこに、今回アサクリ問題で出てきた「設定」がよくばりセットといった様相で1ページ目に書かれている。
注釈を辿ると…
出てきたのはこれ。
『They Came to Japan: An Anthology of European Reports on Japan, 1543-1640 Michael Cooper他 Univ of Michigan Center for 1995』
流石に海外文献でちょい高価なため、サクッと呼んでみることはできないが、戦国~江戸初期にかけて日本に来訪した外国人の記録が海外で編纂されているようである。
ところで元の論文の著者、日本にずっといるようではあり、リサーチマップにもお名前があるのだが、歴史社会学系の論文はこれ一本である。
どうやら、この問題、一筋縄ではいかないようだ。
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