見出し画像

雪とサイレン。

わたしは子どもの頃から雪が大好きでした。

ずっと関東で暮らしているので、雪が積もるのは1年に1回か2回、積もらない冬もある。だから、雪の日は貴重で、小学校でも授業をしないで雪合戦させてくれたりしたなあ。

小さいときは雪が積もるといつまでも外で遊んでいたし、大人になってからも必ず雪だるまを作っていたし、今好きなアイドルはスノーマンだし(関係ない笑)。

でも、11年前の2月の大雪の夜から、雪景色を見るのが怖くなりました。


11年前の2月。

わたしの母が、夜中に突然タクシーでわたしの家にやってきて、認知症が発覚したこと。

このことはここにも何度か書きました。

その、母がわたしの家に滞在してた1ヶ月くらいの間に、高熱を出しました。

ついこないだまで、普通に会話をしていた母の突然の変貌ぶりにいっぱいいっぱいだったから、熱が出てることに気づくのが遅かったのかな。

熱を計ってみたときにはもう、立ち上がることもできなくなり、意識も朦朧としてました。

確か、夜の10時くらい。救急車を呼びました。

外は大雪。

病院で診てもらった結果、母はインフルエンザでした。

インフルエンザとわかったら入院はできないので、連れて帰るように言われました。

外は大雪。

わたしの家には車がなく、タクシーを呼ばなきゃならない。大雪の深夜。タクシーは出払っている。

一晩だけ泊まれませんか?って頼んでみたけど、全く却下される。

うっすらと寒くて暗い、深夜の病院のロビーで、外の雪を見ながら、車椅子に座ってる母を気にしながら、電話をかける。ずっとかける。

その間に、何度も何度も到着する救急車。そのサイレンの音。

途方に暮れるってこういうこと。

母とふたりだけど、ひとりぼっちだった。

ひとりよりも心細い、永遠に続くみたいなひとりぼっち。



何時間電話をしていたのか、もう覚えていないけど、やっとタクシーが捕まって、どうにか家に着いたのが夜中の3時すぎでした。

夫がタクシーまで迎えに来てくれて、家の玄関まで、母をおぶって連れてってくれた。

相変わらずの大雪。


❄️


雪の思い出に、サイレンの音が重なって、雪を見るとあのロビーを思い出して、あの途方に暮れた、ゾッとするほど心細い時間を思い出す。


そのあと、わたしにインフルエンザがうつって、高熱が出て、でも母は治ったので元気になり、まさかの昼夜逆転。

夜中に、家族が寝てる部屋に入ろうとする母を連れ戻して、寝かせて、わたしも横になって、でもまたすぐに母は他の部屋に行こうとする。

わたしは高熱で立ち上がるだけでふらふらする。全く眠れず、熱は全然下がらない。

何日続いたのかな。

あれよりも辛くて長い夜を、わたしは知らない。


❄️


サイレンの音は、「誰かを守りに行く音」って教えてもらってから、怖くなくなった。

あれは、不安をあおる音じゃない。助けにきたよーって安心させてくれる音。


でもまだ雪は怖い。

子どもの頃に遊んだことや、好きな人と雪の日に手袋同士で手を繋いだことや、雪だるまを褒められたことや、そんな楽しい思い出全部で戦っても、敵わない恐怖。


すっごく強くて優しくて楽しい、雪の思い出を作って、怖い雪をやっつけないとな。



手放したいことの2つめ。やっと書けました。ありがとう。



✳︎サイレンの音を怖くなくしてくれた歌がこれです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?