眠り

クッション代わりのぬいぐるみの形を潰しながら、ソファに横になった。
クマは哀れ、腕と足を大きな生き物の体に潰されて、苦しそうな顔に歪んでいる。その代わり、私の頭の座りは良かった。
姿勢の落ち着きと肌に触れる柔らかな生地の感触は私を脱力に向かわせた。
散らばった疲れを底に沈めるように、ゆっくり静かに呼吸する。段々と体はソファを突き抜け、重たく底に落ちていく。ざわざわとした思考もぽつりぽつりと言葉を失い、操縦者を持たない様に静かになってきた。

今日のやり残しも明日の予定もあの人の言葉も全て、追いかけては来られない。自分の思考すら黙りこくって、ぬるい粘度のある液体に沈められる。
海の様に浅いところには水泡やプランクトンやマリンスノーがある様に、意識あるところの思考もまた何処かしこに散乱しているものだ。コントロールを手放せばいつの間にか周囲は静かになり、腰も背骨も両目も両耳もそれぞれが不思議な手に掴まれ、それぞれ遠くに運ばれていく。
眠りという一つの死を迎え、毎夜存在は散り散りになる。
明日は果たして在るのだろうか。

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