見出し画像

落ちるところまで落ちるのが大事

少し前までメンタル面が絶不調で、ここまで落ちるか!?というぐらい落ちまくっていた。

理由は日本滞在後、フランスへ戻ってきたときの現実と心のギャップの違和感。
心が置いてけぼりで宙ぶらりんの状態で「自分が今なぜここにいるのか?」「何のために生きているのか?」を完全に見失っていた。

その直前、子どもの冬休みに合わせて3週間、日本に帰国していた。
毎日、愛情を感じられる美味しい食事。(主に母の手料理を毎日たらふく味わい、心もお腹も満たされまくっていた)
毎晩あったかいお風呂にゆっくり浸かれる至福の時間。
ポカポカな良い天気と気候で、見上げると頭上にスーッと広がる青空。(フランスのどんより暗い空が長く続く冬とは大違い)

どれもこれもがフランスでは簡単には手に入らないもの、日常では味わえないものばかりで、逆に日本に住んでいたら当たり前だと感じるものばかり。

おそらく日本にずっと住んでいたら気づけなかった感覚だろう。
そういう意味では人一倍、「ありがたさ」「幸福感」を味わえることには長けている気がする。(おそらく海外在住経験のある人ならわかるわかると、うなづいてもらえるはず)

毎日、両親と時間をともにし、みんなで団らんしながら食卓を囲み、近所のスーパーや買い物に出かけ、たわいもない話をし、ただただ普通の日常を過ごし、キラキラしてない生活の一つ一つをじんわり大切に味わう日々だった。
すべてのものがそこに居る・あるのが当然でなんら違和感もない状態だった。

安心感に包まれ、何不自由なく心の底から毎日「あぁ、しあわせ~」と満たされ、噛み締めながら過ごしていた。

それらがフランスに戻ってきたとたん、目の前に〝ない〟光景となってしまった。昨日までは当たり前にあったのに。

フランスでの日常がはじまると、夫や子どもたちは何食わぬ顔でそれぞれ会社・学校へとスッと戻り、フランスの社会へと自然と溶け込んでいく。戻っていく。
今の私にそんな場所はなかった。

突然置いてけぼりをくらった気分で、心が宙ぶらりんのままどこに身を置けばいいのかわからず彷徨うことになってしまい、自然なリズムですんなりと日常に戻っていくことができなかった。(結局3週間ほどかかって、やっとペースが戻ってきたところ)

その間、何をしていたかというと文字通り、ほとんど何もしなかった。
何もできなかったというほうが正しいのかもしれない。

とにかく何もしたくない、やる気がない状態で無気力すぎて、自分が自分でなくなってしまったようだった。「私って何?」とあずかり知らぬところでどんどん深みにはまっていく。

かといってやることがないわけではないのだけど、それすらも取り掛かる気力が沸かずただただ時間をむさぼるべく、ひたすらダラダラと生産性のない日々を過ごしていた。

でもそれが結果的によかったんだと思う。

ムリに気持ちを奮い立たせて何かしなきゃ!とがんばっても、きっと後からまたどこかのタイミングで強引に蓋をして消化されなかったモノたちが舞い戻ってきて、また自分に襲い掛かってきていたはずだ。

こういうときは無理しないということを過去の経験から学んでいた私は、ひたすら自分の状態と気持ちにあらがうことなく、どっぷり浸りまくることを選んだ。

そんな中でも幸い「最低限の身なりは整える」ということはできていたので、毎朝の小さなバロメーターとして「私、まだ大丈夫」とひそかに心の中でチェックマークを付けていた。

それでも、このままじゃヤバいという焦りがだんだん沸いてきたときなんかは、気晴らしや気分転換を兼ねて、心に栄養を与えてくれそうな本やYouTubeを慎重に選んで少しずつ心に水を与えたりもしていた。

気の許せる仲間にはおそるおそる自分の今の状態を打ち明けてみたりもした。
どんな反応が返ってくるか怖さもあったが、意外にも共感してもらえたり、何もしなくていい、ただいるだけでいいんだよ、と言ってもらえたことが何よりもの救いとなった。
空っぽでカラカラに乾ききった心のコップに、じんわりとほんのりあったかいものが注ぎこまれるような気がした。

この期間、何度涙を流しただろう。
自分の意志とは関係なく、勝手に流れ落ちることもあったがただただ流れるままに任せていた。自分の心と体なのに一向に制御がきかず、唯一操縦できるハンドルはいつの間にかどこかで落としてきてしまったようだった。
そんな私を見た夫は一瞬驚いた表情でギョッとしていたけれど、事情を軽く説明するとそっとしておいてくれた。

日常に戻ってきた今、やるべきことが目の前に山積みで、ただただぼんやり時間をやり過ごしていたあの時の自分に喝を入れたい気持ちではあるが、あの期間があったからこそ今の自分がいるんだと思うと人生に無駄なことなんか一つもなくて、どの私もすべてが愛おしい存在なのだと感じられる。

闇雲に道筋を見つけたり、無理やり気力を奮い立たせて這い上がろうとしなくてよかったと今は思う。
落ちるところまで落ちたからこそ、また浮上してくることができた。
人生の中できっと必要な体験の一つだったんだろうなとぼんやりふり返ってみる。

この記事が参加している募集

今月の振り返り

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?