(前提)文通欄/通信欄とは?
昔語りついでに解説/記録しておいたほうがいいかなと思ったのが、文通欄/通信欄の存在。インターネットもスマホもなかった時代(パソコンとパソコン通信と伝言ダイヤルとポケベルはあったかもしれない)。出会いといえば、直接、バーやイベントに行くか、通信欄が定番でした。
念のため、最初に説明しておくと、「文通」とは手紙でコミュニケーションすること。一般的には恋愛相手を探す手段というよりは、例えば、遠方に引っ越してしまった学友と交流を保つために手紙をやりとりする、とか、語学の勉強のために外国の人とエアメールを送り合う、とか、近くに同じ趣味の人がいないので雑誌を通じて情報交換できる相手を探す、とか、そんな感じで行われていました。
かつては、メジャーな芸能雑誌『明星』や『平凡』などにも文通コーナーがあったそうです。「東京に住む秀樹ファンの方、お手紙ください。一緒に応援しましょう」てな感じで、自分の住所や名前を誌面に載せて手紙が届くのを待つ(または、掲載されている住所に自分が手紙を送る)。
1971年7月創刊のゲイ雑誌『薔薇族』の文通欄には「百合族の部屋」という女性向けのコーナーがあり、それが女性同士の恋愛を表す「百合」の語源になったと言われています(当時のことは詳しくないので、そのコーナーがいつからあるのか、レズビアン&バイセクシュアル女性同士が出会い目的で活用することが多かったのか、ゲイとの交流や偽装結婚を望む女性のためのコーナーだったのか等は不明です)。
セクシュアルマイノリティの女性たちのメッセージが多く掲載されていたのは、『アラン』(後に『月光』)などのいわゆるカルト雑誌。
これらの雑誌の場合、住所や名前を誌面に掲載するのではなく、編集部を介して手紙を転送してもらう、という手段をとっていたと記憶しています。
音楽雑誌のバンドメンバー募集やタウン誌の「売ります/買います」などはわりと最近まで(個人情報保護法の成立は2003年、全面施行は2005年)住所を掲載していたようなので、特別な配慮がなされていたのだと思います。
ここで名称について触れておくと、それらのコーナーは一般的に「文通欄」「文通コーナー」などと呼ばれていました。『フリーネ』のコーナー名は「交際メッセージ」、『アニース』は「MAIL BOX~おとめの通信欄」。文通だけでなく、サークルのメンバー募集なども掲載していたため、「通信欄」のほうが正確なのですが、以下、わかりやすいように「文通欄」で統一します。
ミニコミ誌『LABRYS(ラブリス)』(1992-1995年)にも文通欄がありました。同誌についてもまた詳しく記録したいと思いますが、今、手元に資料かないので、記憶だけで記しておくと、確か、「本誌」と「情報版」に分かれていて、情報版のほうに文通希望のメッセージが掲載されていました。ラブリスは購読者に郵送で届けるミニコミだったので、それでなくても発送作業が大変だったのですが(最大時で約1700名、のべ2300名が講読)、手紙の転送作業はプライバシーに関わることなので、わたしももちろん手伝っていたはずですが、掛札さんが地道に作業をしてくれたと記憶しています。作り手側からの、文通欄がなぜいかに大変だった~という話もまた改めて。
※いらすとやさんで「文通」と検索したらさすがになかった。これは「手紙を運ぶ鳥のイラスト」。「運命の赤い糸のイラスト(2人の女性の小指が赤い糸で繋がったイラストです)」はあるのに!
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