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緊急事態宣言 26日目

朝は寝坊する。昼頃から、同居人とさんぽに出かける。去年の暮れ頃に近所のスポーツセンターでピックアップした、区内の畑がある地域のおさんぽマップに則って出かけようということになった。しかし、いざ行こうとすると結構な距離があったので、近くまで自転車で行って、周辺を徒歩で散策してまた自転車で帰ってくることになった。

わたしたちはつい半年前にここに引っ越してきた。当時、そろそろ広いところに引っ越すか、そのためには都内から出るか、みたいなはなしをしはじめつつも、まだそこまで本腰ではなかったのにもかかわらず、ちょうど良さそうなマンションに空きが出るというので、わりと弾丸で引越しをした。内見さえしていない。しかしマンションの外観を見て、周りの地域も確認して、まあいいだろうということで決めたのだった。しかも引っ越しの2ヶ月後から、わたしのフィンランドでの在外研究3ヶ月間も始まるところだったので、なぜいま、というタイミングでもあった。しかし、本当にこのとき引っ越してよかった。まさかコロナで家に籠ることになるなんて思っていなかったが、もし前の家だったら十分なスペースがなく、わたしは発狂していたと思う(同居人はぜんぜん気にしない)。オンライン講義するのもかなりきつかっただろう。

そんなこんなで、まだこの地域にはそこまで慣れていない。なので区内と言われてもその広さはまったくピンとこなかった。しかし自転車を漕ぎ出してみると案外遠く、けっこうな移動となった。ついてすぐ、大きめのお寺を散策する。そこには小さいながら藤棚もあり、そのしたでねこがくつろいでいていかにもゴールデンウィークという風情があった。お寺の掲示板には、志村けんさんへの追悼メッセージが達筆で書かれていた。肝心の農地は丘のうえにあり、見晴らしもとてもよかった。あまり人もおらず、これなら知事にも怒られないだろう。いろいろと植物の写真を撮ることもでき、ひさしぶりの遠出をたのしんだ。

帰りにマクドナルドでテイクアウトをする。いまはテイクアウトでしか営業していないということで、それでも店の前には多少の人だかり程度にはお客さんがいた。食事のあとは昼寝をしてしまったが、そのあとは大学時代のバイト先の塾の友人たちとオンライン飲みをする。日本全国に散らばりつつあるので、なかなか集まるのはむずかしいメンバーなのだが、オンラインだとこうして話ができて近況を報告し合うことができる。なんだか、オンライン飲みの興隆でむしろふだん会いにくいひととのほうがよく話すようになっている。逆に、研究室の仲間などふだんであれば頻繁に会うはずの人たちと話すことがまったくなくなっている。ゼミをオンラインでやるにしても、スモールトーク的な会話をすることはないので、近かったひとたちがどんどん遠くなっているような気もしてきた。家から出られず、すべてがオンライン化されると、物理的な距離の大小は消失してしまう。

夜はなかなか寝つけず、まず現代思想の「特集・感染/パンデミック」の冒頭の翻訳原稿のあたりを読む。そのあと、トニ・モリスン『青い眼がほしい』を読み始めた。『ソロモンの歌』よりもずっと肉迫するものを感じるが、しかしどちらが好みかというとわたしは『ソロモンの歌』派かもしれない。なんだかんだで半分くらい読んで、3時ごろようやく寝た。

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