「言葉」の力を改めて感じた本『本日は、お日柄もよく』[100 days challenge_day18]
普段何気なく話していること、書いていることについて、改めて考えさせられた本がある。原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』だ。
スピーチライターという仕事
主人公の二ノ宮こと葉は老舗お菓子メーカーの事務職の女性。片思いしていた幼馴染の今川厚志(通称:あっくん)の結婚式の場面から、物語はスタートする。あっくんの結婚式で、すべての参加者に感動を与えた”言葉のプロフェッショナル”ことスピーチライターの久遠久美と出会う。
この出会いをきっかけに、こと葉は久美に弟子入りし、政権交代を狙う野党の専属スピーチライターとしての道を歩み始める……というお話。
小説として、十分にストーリーが面白いうえに、スピーチの極意までわかるという2度おいしい作品だ。
スピーチライターは、企業の改革のときの社長の言葉や選挙のときの政治家のスピーチなど、多くの人に影響を与える言葉を作る人たちだ。広告会社の人たちを想像してもらえるとわかりやすいかもしれない。
みんなが知っている商品やサービスの認知の裏には、優れたコピーがあるように、有名になる人物や、心に残る式典の裏には、優れたスピーチ原稿がある。
スピーチライターは、限られた時間の中で「話すことで人の心が動く」原稿を書く人。
一方で、私が目指す「インタビューライター」は、限られたスペースの中で「読むことで人の心が動く」原稿を書く人。共通点は多い。だからこそ、勉強になる箇所が多くあった。
例えば、こちらの言葉は、ライターとしてそのまま覚えておきたい文章だ。
一生懸命書いても、読者に受け入れられ、読んでもらわない限り、それは存在しないのと同じ。そして「私の文章を読んでもらうことで、少しでも世の中を良くしたい」とか、希望を持てば持つほど、しっかりと多くの人に届くように工夫しなければならない。「1人でもいいから届けばいい」は、本音でもあるし、負けたときのための言い訳かもしれない。
この原稿で、人の心を動かしたい、という願いは、スピーチライターもライターも同じだと感じている。
書くために、聞く
スピーチライターになったこと葉のライバル、和田日間足(通称ワダカマ)は、同業の父親から「コピーライター養成塾に通うよりも、言葉を全身で受け止めてみろ」と言われ、『言葉の錬金術師』北原さんを紹介される。その人は「リスニングボランティア」の草分け的存在。老人ホームなどでお年寄りの話をひたすら聞いてあげるボランティアをしている人だ。
言葉の錬金術師は、言葉を発することよりも、受け入れることの重要性を説く。
インタビューライターは、基本的に聞かないと書けない。ただ、どこまで聞くことができるか、書く勇気が出るまで聞けているだろうか。そんな疑問が浮かんでくる。
こちらの聞きたいことを聞き出すためのコミュニケーションになっていないか。その方が、最も大事にしているものは何か。
ちゃんと聞き出せていない、上滑りしたような聞き方のインタビューのときは、筆が重いのはこのせいなのかもしれない。
元気になる言葉
この小説のすごいところは、セリフの中に、人を元気にさせ、覚えておきたいと思える言葉が多く入っているところだと思っている。
最も好きな言葉で、覚えておきたい言葉がこれだ。
私はずっと、悩んだときは本の中に答えを求めてきた。
そして、悩みが深ければ深いほど、ハウツー本のような本の中に書いてある言葉よりも、小説や詩の中の言葉のほうが心に沁みこんでいくと思っている。
その意味でも、この小説は、ライターを目指す私にライティングの基本を思い出させてくれる上に、落ち込んだ時の救世主としての役割まで果たしてくれる、すごい本なのだ。
2週間ほど眠っていた原稿①でした。
この本の良さを、どうやったら伝えられるのだろう……と悩んで、やめてしまっていた。
「自分のできない部分に目を向けて、逃げないでやり切らないと、いつまでたってもうまくならない」というさとゆみさんからの金言をいただいたので、今日は成仏原稿第1弾です。明日はこれのブラッシュアップを試みたいと思いますので、皆様、ぜひに、感想やアドバイスをお願いしたい所存です。
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