見出し画像

「寝かしつけ後に仕事する」とか「子どもが一人で遊び進められる」とか、それがいいのかい?

35歳、総合職、2児のワーママという属性からか、いろんな企業から、いろんな媒体でターゲティングされる。

たとえば、転職サイト。「フルリモート・フルフレックスの企業に転職。子どもを寝かしつけた後に1時間仕事をすることで、時短勤務ではなくフルタイム勤務を実現」というストーリー。

わたしは、これを読んで「んんっ?」と思ってしまった。これは、実は、5年前のわたしと同じである。


次に、子ども向け通信教育のDM。「お子さん一人で遊び進められるように改良しました」。これも、わたしは首をひねってしまった。




わたしの違和感をひとことに収れんさせると、「それでいいの?」である。

まず、第一の例について。
実際にわたしは、子どもを寝かしつけた後に仕事をするというスタイルを取っていた時期がある。仕事の責任が増し、そうせざるを得なかった頃だ。

時短勤務のデメリットを「時給が減るし、責任のない仕事ばかりでキャリアアップできない」とするならば、この「寝かしつけの後に仕事をする」ことでフルタイムが維持できるのは、魅力的な解決案のように思える。

しかし、わたしはこのスタイルは「よくない」と思って、やめた。理由としては、以下の3点。

1. 22時過ぎは深夜残業になるし、そもそも、体に良くない
2. 子どもに「早く寝ろ!」とイライラするし、それが態度に出る
3. 寝落ちした翌日の焦燥感がヤバイ


子どもが20時~21時に確実に寝るご家庭なら、1. は問題にならないかもしれない。しかし、わが家の長女は2歳ごろから体力がついて、保育園でお昼寝をする平日は寝る時間が遅くなった。

20時半にはベッドに入っても、寝かしつけに1時間はかかる毎日。そこから仕事をしようとすると、22時は確実に過ぎてしまう。
残業をつけないという考え方もあるけど、健全ではありません。やめましょう。


次に、これが一番大きな理由だったのだが、いつも子どもに「早く寝ろ!!」と思う日々に疲れてしまった。
日中は保育園に預けられているわが子と、ゆっくりできる唯一の時間のはずなのに、わたしはいつもイライラして、しまいには「早く寝てよっ!」と怒鳴ることもあった。

そんな日は、怒鳴られた子どもの申し訳なさそうなしぐさと、その奥にあるであろう小さな心の孤独に、申し訳なさを感じると同時に、自分が心底嫌になった。


最後に、今日やるつもりでいたアレ、できなかった次の日の焦りといったら精神衛生上よろしくない。
できていないことを子どものせいにしたり、朝早く起きてこない夫に当たったり、とんでもない様相であった。だから、わたしはこのスタイルを辞めた。


次の事案について。「お子さん一人で遊び進められるように改良しました」、これは、顧客の声を反映した素晴らしい改善のように思えるが、果たしてそれでよいのだろうか?

子どもが一人で遊ぶということは、人間と人間のかかわりをしないということだ。機械相手では、どうしても一方通行で、ワンパターンになってしまう。人間とのかかわりで生じる偶発性は存在しない。

いや、ちがうな……それが知能にどう影響するとか、偶発性からうまれる好奇心を大事にできる子になってほしいとか、そういう教育的なアプロ―チがしたいんじゃなくて。「未就学児が、一人で遊び続ける」ことって、どういうことだろう。「未就学児に、一人で遊んでほしい」という心境って、なんだろう。


それって、「子どもには邪魔されたくない」という大人側の事情ではないだろうか。本来は大切な、いつくしむべき親子の時間が、「やらなければいけないことがあるから、それが終わるまでは時間がとれない」せいで、省略可能な時間とカテゴライズされてしまい、畢竟、「大人の邪魔しないで、一人で遊んでてね」になってしまっているのではないか。


では、なぜ大人がそう思ってしまうのかというと、時間の余裕がないからだ。忙しすぎる。やらなければならないことが多すぎる。

なぜ、やらなければならないことが多すぎるのか。家事の負担が重い。パートナーが仕事ばっかりしている。仕事の時間が長い。エトセトラ、エトセトラ。


短期的には、「寝かしつけの後に仕事をする」も「子ども一人で遊び進めてもらう」も、良い提案だと思う。だけど、みんな、本当に、恒久的に「それがいいな」と思ってる? 「【今は】それでいい(けど、本当はこれがいい)」、これが回答ではなかろうか。


わたしたちが感じる違和感が、次の世代を良くすると仮定するならば、わたしは「それでいいの?」をとことん突き詰めて、要望に変えていきたい。

時間が必要なこととキャリアを積むこと、どうしたら両立できるのか。もしかしたら、完璧な両立はムリかもしれない。だとしたら、どういう状態なら、心の底から「これでいい、これがいい」と納得できるのか。

その答えを知るために、今日も本や新聞を読んでいるのかもしれない。


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?