過ぎた年月、知ってるのはほんの一部
豆と小鳥エピソード185は
先週に引き続き「地球村でDJがかける曲〜邦楽の巻」がテーマです。
こちらもみなさんの推しの曲、教えてくださったらうれしいです。
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秋、日本に帰った時に高校のクラスメートを見かけました。仲良くなかったのに直ぐに名前を思い出した。何十年もたってるのにお顔と猫背気味の背中がほとんど変わってなかったから。
その時、私は地元のデパ地下の
お茶屋さんの座れるコーナーで
ほうじ茶とオハギをいただきながら、
ひとり小さな日本を楽しんでいた。
平和な間延びしたような平日の午後。
何色とも形容しがたいくすんだ色の服を着て、
メイクはほとんどなしで
デパ地下で、
お母さんらしき方と一緒だった。
彼女はクラスでも圧倒的な地味さで
逆に存在感が立っていた。
口数が本当に少なく、私は個人的に口をきいたことは一度もなかったと記憶している。マセてて中途半端に悪かった私とはかぶるところが一切なく、でも好奇心から自分と対極にいる彼女が何を考え何を感じ生きてるんかなと時々、気になったりしてた。
ある日のホームルームの時間、何かの役員を決める際に、今までなんの役員もしてこなかったからだろう、彼女に白羽の矢が当たった。
彼女がどんな肉声をしているのかも知らなかったので、発言する時に密かに注目した。
真ん中の列の1番最後尾の席に座ってた彼女はスクッと立ち上がり、低い声で「わかってもらえないかもしれないけど信仰している宗教で役員になることは禁止されてるので、すみません、辞退させてください」と言った。
声にならないどよめきが教室に走った。
その頃は新興宗教が今のように話題に上ることもないのどかな時代。
ペアで布教してるモルモン教の白人の兄さんが「ちょっといいですか?」と声をかけてるのを見かけるくらいだったから、宗教は新鮮なトピで、彼女の発言はインパクト大だった。
無理強いするものではないから、役員は結局、他の人になったはず。多分、彼女の声を聞いたのはこの時だけポッキリだった。この時から47年の月日が流れた。
年相応のおばちゃんになった彼女はお母さんらしき人とにこやかに和菓子を選んでた。その様を見ていて、私たちは学校での彼女しか知らなかったけど、プライベートでは高校生の時もこんな風に明るい表情で楽しい時間を過ごしたりしてたんかな?
そうやったらいいなと思った。
人は多面体でいろいろな顔を持ってるから、
私が知ってるその人が全てではなく、よってこの人はこんな人だからって決めつけてかかるのは残念なことですね。
そして、自分自身においてもおんなじで
「私はこんな奴だから」と決めつけて可能性や意欲に蓋をしてしまうんは、もったいない話しで。
会わなかったこの47年間、彼女が過ごしてきた人生を想像しながら、私はもうひとつオハギを食べることにした。
今回のピックはナミンです。
元パンクバンド「イヌ」のボーカリスト
町田康さんの「湖畔の愛」をオススメさせて頂きます。抱腹絶倒なラブストーリー。
第二章からホンマにブラボーと起立したくなるスピード感です。笑いたい方にはいいかも。
忙しい師走、深呼吸して、しっかり息を吐いて
クリスマスケーキのレシピを選びながら
そろそろこちょこちょ大掃除しながら
お聴きくださったらお聴きくださったら嬉しいです!
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