GFの平和な1日





テストが終わった後の自由時間。
エマが纏っている空気がこの上なく暗かった。

「どうしたエマ」

「レイ....」

そう言いかけてはエマは顔を上げた。
今にも泣き出しそうな顔にレイは少し驚いた。
訂正。泣き出した。

「うわぁぁん、レイどうしよう」

だっと勢いに任せて抱き付いてきたエマを受け止める。
エマの勢いがよすぎて少し後ろによろけた。
背中を軽く叩き落ち着かせる。

「何があった。とりあえず落ち着け」

うん、と小さく頷き深呼吸をする。
呼吸が落ち着いてきた頃に、レイがもう一度声をかけた。

「なにがあった」

「シェリーに、嫌われたかも」

その言葉を言えばまた目に涙が溜まっていく。
シェリーに嫌われた?
なぜ?シェリーは理由もなく嫌うような性格では無いし、エマも嫌われるような性格はしていない

いや、待てよ....?

「エマ、なにをしてるときに言われたんだ?」

レイはなんだか事情聴取している警察の気分になった。
今読んでいた本が警察のお話だからだろうか?
そんなレイの気持ちは知らずエマは質問に答える。

「あそこに花があるでしょ?」
 
エマがそう言い指差した方面には確かに白い花が沢山咲いていた。
あれはなんの花なのだろうか?と疑問に思いあとで調べようと思ったレイ。
小さな花畑には花を摘んだり、冠にしたりと様々な遊びをしている子供達の姿も見える。
その中にはノーマンとシェリーの姿もあった。

「ノーマンがこれをくれてね、そしたらシェリーが急に怒りだしちゃって....」

なにか悪いことしたのかな....?としゅんとするエマ。
レイはシェリーの怒った理由を全て察し、そして呆れた。
エマの左手の薬指に、あの花畑の花で作ったであろう指輪がついていた。
どうせ、好きだよ、なんて言いながら指に通してやったのだろう。
エマも家族的な意味で、私も!と返し、それを聞いたシェリーが怒ってその場の勢いで“嫌い”なんて口走ってしまったのだろう。
鈍感なエマもエマだが、ノーマンもノーマンだ。
ノーマン
元凶すべてお前じゃねぇか!

とても叫びたかったがここで堪えた俺をどうか、誰でもいいから誉めてほしい。
まぁ、今はどうでもいい。
後でノーマンは説教だ。
とりあえず今はエマが最優先だ。
シェリーはノーマンがどうにかしてくれるだろう。いや、してくれ

「まぁ、シェリーも本気で言った訳じゃねぇと思うから、元気出せ?な?」

うん、と答えれば小さなため息がエマの口からこぼれた。
それを合図にしたのか、それともタイミングが重なったのか、遠くから小さな人影がダッシュでこちらに向かってくる。
フィルだ。
エマの異変に気が付いたのだろう。
シェリーがノーマンのことを好きなように、フィルもエマのことが大好きなのだ。

「エマ~!」

「フィル?どうしたの?」

あくまでも笑顔で隠し通そうとするエマ。
心配をかけたくないのだろう。
しかし、フィルには全てバレているため意味がない。

「大丈夫?エマ、元気ない....」

しゅん、と心配そうに声をかける。
エマは精一杯笑って、なんでもないよ、すごい元気!と言いきる。
......無理してるの分かりやすすぎだろ

「フィルはエマが好きか?」

「大好きだよ!」

訊ねてきたレイに満円の笑みで答えるフィル。
つられてこちらも笑顔になる。
エマは嬉しそうにフィルの柔らかな頬をつついたりして遊んでいる。
フィルも嬉しそうだ。

「...エマ」

スカートの裾を引かれ、見てみると、自分のスカートを握りしめているシェリーがいた。
隣にはノーマンもいる。

「ほら、シェリー?」

そうノーマンが言えば、シェリーの唇が震える。

「さっきは、大嫌いとか、言って、ごめんなさい」

段々と涙が溜まっていく。
泣かないように堪えるシェリーが俯く。
そんなシェリーにノーマンが、よく謝れました、と優しく頭を撫でる。
エマはシェリーに目線を合わせるようしゃがんだ。

「大丈夫だよシェリー、言われたときはちょっと驚いたけど大丈夫怒ってないよ」

優しく笑いかけるエマに、シェリーはほんの少し顔を上げ、本当?と呟く
ほんとほんと、と答えればシェリーはエマに抱き付いた。


 


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