逐条解説 EUのAI規正法(1条~4条、規則1条~4条)

第1章
総則
第1条
主題
本規則は以下の事項を規定する:
(a) EU域内における人工知能システム(「AIシステム」)の上市、使用開始および使用に関する調和された規則;
(a) 特定の人工知能業務の禁止;
(b) リスクの高いAIシステムに対する特定の要件と、そのようなシステムの運営者に対する義務;
(c) 自然人との対話を目的とするAIシステム、感情認識システム、バイオメトリクス分類システム、画像、音声、映像コンテンツの生成または操作に使用されるAIシステムに関する調和された透明性規則;
(d) 市場の監視とモニタリングに関する規則
第2条
適用範囲

  1. 本規則は以下の者に適用される:
    (a) 組合内にAIシステムを市場投入又はサービスインするプロバイダ。当該プロバイダが組合内に設立されているか第三国に設立されているかにかかわらず;
    (b) 組合内に所在するAIシステムの利用者

(c) 第三国に所在するAIシステムの提供者及び利用者であって,当該システムによって生成された出力が同盟国内で使用されるもの;
2. 製品又はシステムの安全コンポーネントである、又はそれ自体が製品又はシステムであり、以下の法律の適用範囲に属する高リスクAIシステムについては、本規則の第84条のみが適用されるものとする:
(a) 規則(EC)300/2008;
(b) 規則(EU)第167/2013号;
(c) 規則(EU)第168/2013号;
(d) 指令 2014/90/EU
(e) 指令(EU)2016/797;
(f) 規則(EU)2018/858;
(g) 規則(EU)2018/1139;
(h) 規則(EU)2019/2144。
3. 本規則は、専ら軍事目的で開発又は使用されるAIシステムには適用されない。
4. 本規則は、第三国の公的機関及び第1項により本規則の適用範囲に含まれる国際機関であって、これらの機関又は組織が、連邦又は1以上の加盟国との法執行及び司法協力に関する国際協定の枠組みにおいてAIシステムを使用するものには適用されない。
5. 本規則は、欧州議会および理事会指令2000/31/EC60(デジタルサービス法の対応する規定に置き換えられる予定)の第II章第IV節に定める仲介サービス提供者の責任に関する規定の適用に影響を与えないものとする。
第3条
定義
本規則の目的には、以下の定義が適用される:
(1) 「人工知能システム」(AIシステム)とは、付属書Iに列挙された技術およびアプローチの1つまたは複数を用いて開発され、人間が定義した所定の目的に対して、コンテンツ、予測、推奨、またはそれらが相互作用する環境に影響を与える決定などの出力を生成することができるソフトウェアをいう;
(1) 「提供者」とは、AI システムを開発する、又は AI システムを開発させ、有償であるか無償であるかにかかわ らず、自己の名称若しくは商標の下に市場に投入し、若しくはサービスを開始することを目 的とする自然人若しくは法人、公的機関、代理店又はその他の団体をいう;

(3) 「小規模プロバイダ」とは、欧州委員会勧告2003/361/EC61の意味における零細企業又は小規模企業であるプロバイダを意味する;
(4) '利用者'とは,AIシステムが個人的な非専門的活動の過程で使用される場合を除き,AIシステムをその権限の下で使用する自然人又は法人,公共機関,代理店その他の機関をいう;
(5) 「認定代理人」とは,AIシステムの提供者から,それぞれ,この規則が定める義務及び手続をその代理として履行し,実施する旨の書面による委任を受けた,域内に設立された自然人又は法人をいう;
(6) 「輸入者」とは,域外に設立された自然人又は法人の名称又は商標が付された AI システムを市 販し又は稼働させる,域内に設立された自然人又は法人をいう;
(7) 「販売業者」とは,供給者又は輸入者以外のサプライチェーンにおける自然人又は法人であ り,AI システムをその特性に影響を与えることなく同盟国の市場で入手できるようにする者をいう;
(8) 「事業者」とは,提供者,使用者,公認代理人,輸入者及び販売業者をいう;
(9) 「上市」とは,連合市場において AI システムを最初に利用可能にすることをいう;
(10) 「市場で入手可能にする」とは,商業活動の過程において,有償であるか無償であるかにかかわ らず,同盟市場における頒布又は使用のためにAIシステムを供給することを意味する;
(11) 「使用開始」とは,使用者に直接最初に使用するため,又は意図された目的のために連合 市場で自ら使用するための AI システムの供給を意味する;
(12) 「意図された目的」とは,使用説明書,宣伝用又は販売用の資料及び説明書並びに技術文書において提供者が提供する情報に明記されている具体的な使用状況及び使用条件を含む,提供者が AI システムを意図する用途をいう;
(13) 「合理的に予見可能な誤用」とは、その意図された目的に沿わない方法でのAIシステムの使用を意味するが、合理的に予見可能な人間の行動又は他のシステムとの相互作用に起因する可能性がある;
(14) 「製品又はシステムの安全コンポーネント」とは、製品又はシステムのコンポーネントであって、その製品又はシステムの安全機能を果たすもの、又はその故障若しくは誤動作が人若しくは財産の健康及び安全を危険にさらすものをいう;
(15) 「使用説明書」とは、特に AI システムの意図された目的及び適切な使用方法を使用者 に知らせるために提供者が提供する情報をいい、ハイリスク AI システムの使用が意図され ている特定の地理的、行動的又は機能的設定を含む;
(16) 「AIシステムの回収」とは、利用者に提供されたAIシステムの提供者への返却を達成することを目的とする措置をいう;

(17) 「AIシステムの撤回」とは、AIシステムの頒布、展示及び提供を防止することを目的とする措置をいう;
(18) 「AIシステムの性能」とは、AIシステムがその意図する目的を達成する能力をいう;
(19) 「認証機関」とは,適合性評価機関の評価,指定及び通知並びにその監視のために必要な手 続を設定し,実施する責任を有する国家当局をいう;
(20) '適合性審査'とは,AI システムに関連するこの規則の第 III 章,第 2 章に規定する要件が満たされているかどうかを検証するプロセスをいう;
(21) 「適合性評価機関」とは,試験,認証及び検査を含む第三者適合性評価活動を行う機関をいう;
(22) '認証機関'とは,この規則及び他の関連するEU整合化法令に従って指定された適合性評価機関をいう;
(23) 「大幅な変更」とは,上市又は使用開始後の AI システムに対する変更であって,AI システムのこの規則の第 III 章,第 2 章に規定する要件への適合に影響を及ぼすもの,又は AI システムが評価された意図された目的の変更をもたらすものをいう;
(24) 「CE 適合マーキング」(CE マーキング)とは,AI システムが,この規則のタイトル III,第 2 章に規定する要件及びその貼付を規定する製品の販売条件を調和する他の適用可能な連合法(「連合調和法」)に適合していることを提供者が示すマーキングをいう;
(25) 「市販後モニタリング」とは,必要な是正措置又は予防措置を直ちに適用する必要性を特定する目的で,AIシステムの提供者が,市場に投入し又は使用を開始したAIシステムの使用から得られた経験を積極的に収集し,レビューするために実施するすべての活動をいう;
(26) 「市場監視当局」とは,規則(EU)2019/1020 に従って活動を実施し,措置を講じる国内当局をいう;
(27) 「整合規格」とは、規則(EU)No 1025/2012 の第 2 条(1)(c)に定義される欧州規格をいう;
(28) 「共通仕様書」とは、本規則に基づき設定された特定の要件及び義務を遵守するための手段を提供する技術的解決策を含む、規格以外の文書をいう;
(29) 「訓練データ」とは、ニューラルネットワークの重みを含む、学習可能なパラメータの適合を通じてAIシステムを訓練するために使用されるデータをいう;
(30) 「検証データ」とは、特に、オーバーフィッティングを防止するために、訓練されたAIシステムの評価を提供し、その非学習可能パラメータ及びその学習プロセスを調整するために使用されるデータをいう。検証データセットは、固定又は可変の分割として、別個のデータセット又は訓練データセットの一部とすることができる;
(31)「テストデータ」とは、学習・検証されたAIシステムの独立した評価を行うために使用されるデータであって、当該システムの市場投入前又はサービス開始前に、当該システムの期待される性能を確認するために使用されるものをいう;

(32) 「入力データ」とは、AIシステムに提供され、又はAIシステムによって直接取得され、それに基づいてシステムが出力を生成するデータをいう;
(33) 「バイオメトリクス・データ」とは、自然人の身体的、生理的又は行動的特徴に関連する特定の技術的処理の結果生じる個人データであって、顔画像又はダクチロスコピック・データなど、当該自然人の固有の識別を可能にし又は確認するものをいう;
(34) 「感情認識システム」とは、自然人のバイオメトリクス・データに基づいて自然人の感情ま たは意図を識別または推論することを目的とする AI システムをいう;
(35) 「バイオメトリクス分類システム」とは、自然人を、そのバイオメトリクスデータに基づいて、 性別、年齢、髪の色、目の色、入れ墨、民族的出身、性的指向又は政治的指向などの特定の 分類に割り当てることを目的とする AI システムをいう;
(36) 「遠隔バイオメトリクス識別システム」とは、人のバイオメトリクス・データと参照デー タベースに含まれるバイオメトリクス・データとの比較を通じて、離れた場所にいる自然人を 識別することを目的とする AI システムであって、その人が存在し、識別され得るかどうかを AI システムの利用者が事前に知ることなく識別することを目的とする AI システムをいう;
(37)「リアルタイム」遠隔バイオメトリクス識別システムとは、バイオメトリクスデータの取 得、比較、および識別がすべて大幅な遅延なしに行われる遠隔バイオメトリクス識別システ ムを意味する。これは、即時識別だけでなく、迂回を回避するための限定された短い遅延も含む。
(38) 「ポスト」遠隔バイオメトリクス識別システムとは、「リアルタイム」遠隔バイオメトリクス 識別システム以外の遠隔バイオメトリクス識別システムをいう;
(39) 「公にアクセス可能な空間」とは、アクセスに一定の条件が適用されるか否かにかかわ らず、公衆がアクセス可能な物理的な場所をいう;
(40) 「法執行当局」とは、以下をいう:
(a) 公共の安全に対する脅威の保護および防止を含め、刑事犯罪の防止、捜査、検挙、訴追、 または刑事罰の執行について権限を有する公的機関。
(b) 公共の安全に対する脅威の保護及び防止を含む、刑事犯罪の予防、捜査、摘発若しくは訴追又は刑事罰の執行を目的とする公権力及び公権力の行使を加盟国の法律により委託されたその他の機関又は団体;
(41) 「法の執行」とは、刑事犯罪の予防、捜査、探知若しくは訴追又は刑事罰の執行のために法執行当局が行う活動をいい、公共の安全に対する脅威の保護及び防止を含む;
(42) 「国内監督当局」とは、加盟国が本規則の実施および適用、当該加盟国に委託された活動の調整、欧州委員会に対する単一の窓口としての役割、および欧州人工知能理事会における加盟国の代表としての責任を委ねる当局をいう;

(43) 「国内管轄当局」とは、国内監督当局、届出当局および市場監視当局をいう;
(44) 「重大インシデント」とは、直接的または間接的に以下のいずれかにつながる、つながった可能性がある、またはつながった可能性があるインシデントをいう:
(a) 人の死亡、人の健康、財産または環境への重大な損害、
(b) 重要インフラの管理および運営における、深刻かつ不可逆的な混乱。
第4条
附属書Iの改正
欧州委員会は、第73条に従い、附属書Iに列挙された技術および手法のリストを、同リストに列挙された技術および手法と類似する特徴を基礎とする市場および技術の発展に合わせて更新するために、委任法を採択する権限を有する。

規則
第1条
主題

  1. 本規則の目的は、域内市場の機能を改善し、人間中心の信頼できる人工知能(AI)の導入を促進することであり、同時に、域内におけるAIシステムの有害な影響に対して、健康、安全、民主主義、法の支配、環境保護を含む憲章に明記された基本的権利の高水準の保護を確保し、イノベーションを支援することである。

  2. 本規則は以下を定める:
    (a) 組合内でのAIシステムの上市、使用開始、使用に関する調和された規則;
    (b) 特定のAI慣行の禁止;
    (c) リスクの高いAIシステムに対する特定の要件と、そのようなシステムの運営者に対する義務;
    (d) 特定のAIシステムに関する調和された透明性規則;
    (e) 汎用AIモデルの市場投入に関する調和された規則

(f) 市場監視、市場サーベイランス、ガバナンス、エンフォースメントに関する規則
(g) 新興企業を含む中小企業に特に焦点を当てた、技術革新を支援するための措置。

第2条
適用範囲

  1. 本規則は以下の者に適用される:
    (a) 組合内において、AIシステムを市場に投入し、若しくはサービスを開始し、又は汎用AIモデルを市場に投入する事業者であって、当該事業者が組合内に設立されているか、若しくは組合内に所在しているか、又は第三国に所在しているかを問わない事業者;
    (b) 組合内に設置又は所在するAIシステムの配備者;
    (c) 第三国に事業所を有するか又は第三国に所在するAIシステムの提供者及び配置者であって,AIシステムによって生成された出力が同盟国内で使用されるもの;
    (d) AIシステムの輸入業者及び販売業者;
    (e) AIシステムを,その製品と共に,自己の名称又は商標の下で上市し,又は使用させる製品製造者;
    (f) 組合内に設立されていないプロバイダの公認代理人;
    (g) 組合内に所在する影響を受ける者。

  2. 附属書ⅠのセクションBに列挙されたEU調和法の対象となる製品に関連する、第6条1項に従って高リスクAIシステムとして分類されたAIシステムについては、第6条1項、第102条から第109条まで及び第112条のみが適用される。第57条は、本規則に基づく高リスクAIシステムに対する要求事項が、当該EU調和法令に統合されている限りにおいてのみ適用される。

  3. 本規則は、EU法の適用範囲外の領域には適用されず、いかなる場合においても、加盟国が国家安全保障に関する権限を委任している団体の種類にかかわらず、加盟国の国家安全保障に関する権限に影響を及ぼしてはならない。
    本規則は、AIシステムが、軍事、防衛、または国家安全保障の目的のためにのみ、市場に投入され、使用され、または変更の有無にかかわらず使用される場合、およびその限りにおいて、これらの活動を実施する主体の種類にかかわらず、適用されない。
    本規則は、当該活動を実施する主体の種類にかかわらず、出力が軍事、防衛又は国家安全保障の目的のために専ら域内で使用される場合には、域内で上市又は使用されないAIシステムには適用されない。

  4. ただし、当該第三国または国際機関が個人の基本的権利および自由の保護に関して十分な保護措置を提供する場合に限る。

  5. 本規則は、規則(EU) 2022/2065の第II章に規定されている仲介サービス提供者の責任に関する規定の適用に影響を及ぼさないものとする。

  6. 本規則は、科学的研究開発のみを目的として特別に開発され、使用されるAIシステムまたはAIモデル(その出力を含む)には適用されない。

    1. 個人情報の保護、プライバシーおよび通信の秘密に関する連邦法は、本規則に定める権利および義務に関連して処理される個人情報に適用される。本規則は、本規則第10条第5項および第59条を損なうことなく、規則(EU)2016/679もしくは(EU)2018/1725、または指令2002/58/ECもしくは(EU)2016/680に影響を及ぼさないものとする。

  7. 本規則は、AIシステムまたはAIモデルの上市前または使用開始前の研究、試験または開発活動には適用されない。当該活動は、適用されるEU法に従って実施されるものとする。実環境におけるテストは、この除外の対象とはならない。

  8. 本規則は、消費者保護および製品安全に関連する他の連邦法によって定められた規則を損なうものではない。

  9. 本規則は、純粋に個人的な非専門的活動の過程でAIシステムを使用する自然人である配備者の義務には適用されない。

  10. 本規則は、使用者によるAIシステムの使用に関して、労働者の権利保護の観点から労働者により有利な法律、規制もしくは行政規定を、組合もしくは加盟国が維持もしくは導入すること、または労働者により有利な労働協約の適用を奨励もしくは許可することを妨げるものではない。

  11. 本規則は、フリー及びオープンソースライセンスの下でリリースされたAIシステムには適用されない。ただし、高リスクのAIシステムとして、又は第5条若しくは第50条に該当するAIシステムとして市場に出回り、又は使用される場合を除く。
    第3条
    定義
    本規則では、以下の定義を適用する:
    (1) 「AIシステム」とは、様々なレベルの自律性で動作するように設計され、配備後に適応性を示す可能性のある機械ベースのシステムであって、明示的又は黙示的な目的のために、物理的又は仮想的な環境に影響を与えることができる予測、コンテンツ、推奨又は決定等の出力を生成する方法を、受け取る入力から推論するものをいう;

(2) 「リスク」とは、危害が発生する確率とその危害の重大性の組み合わせをいう;
(3) 「提供者」とは、AIシステム若しくは汎用AIモデルを開発し、又はAIシステム若しくは汎用AIモデルを開発させ、有償であるか無償であるかを問わず、自己の名称若しくは商標の下に、AIシステムを市場に投入し、若しくはサービスを開始する自然人若しくは法人、公的機関、代理店その他の団体をいう;
(4) 「配備者」とは、AIシステムが個人的な非専門的活動の過程において使用される場合を除き、自然人又は法人、公的機関、代理店又はその他の機関がその権限の下でAIシステムを使用することをいう;
(5) 「認定代理人」とは,連合内に所在し又は連合内に設立された自然人又は法人であって,AIシステム又は汎用AIモデルの提供者から,それぞれ,この規則が定める義務及び手続をその代理として履行し,実施する旨の書面による委任を受け,これを受諾した者をいう;
(6) 「輸入者」とは、域内に所在し又は域内に設立された自然人又は法人であって、第三国に設立された自然人又は法人の名称又は商標を付したAIシステムを市場に出すものをいう;
(7) 「販売業者」とは,供給者又は輸入者以外のサプライチェーンの自然人又は法人であって,AI システムを同盟国の市場で入手できるようにするものをいう;
(8) '事業者'とは,提供者,製品製造者,配備者,公認代理人,輸入者又は販売業者をいう;

(9) 「上市」とは,連合市場においてAIシステム又は汎用AIモデルを最初に利用可能にすることをいう;
(10) 「市場で入手可能にする」とは,商業活動の過程において,有償であるか無償であるかにかかわらず,同盟市場における頒布又は使用のためにAIシステム又は汎用AIモデルを供給することをいう;
(11) 「使用開始」とは,配備者に直接最初に使用するため,又は意図された目的のために組合内で自ら使用するためのAIシステムの供給をいう;
(12) 「意図された目的」とは,使用説明書,宣伝用又は販売用の資料及び声明,並びに技術文書において提供者が提供する情報に明記されている具体的な使用状況及び使用条件を含む,提供者が AI システムを意図する用途をいう;
(13) 「合理的に予見可能な誤用」とは、AIシステムの意図された目的に沿わない使用であって、合理的に予見可能な人間の行動又は他のAIシステムを含む他のシステムとの相互作用から生じ得るものをいう;
(14) 「安全コンポーネント」とは、製品又はAIシステムのコンポーネントであって、当該製品又はAIシステムの安全機能を果たすもの、又はその故障若しくは誤動作が人若しくは財産の健康及び安全を危険にさらすものをいう;
(15) 「使用説明書」とは、特に、AI システムの意図された目的及び適切な使用方法を配備者に通知するために提供者が提供する情報をいう;

(16) 「AI システムの回収」とは、配備者に提供された AI システムを提供者に返却し、 使用を停止し、又は使用不能にすることを目的とする措置をいう;
(17) 「AIシステムの撤回」とは,サプライチェーン内のAIシステムが市場で利用可能になることを防止することを目的とする措置をいう;
(18) 「AIシステムの性能」とは,AIシステムがその意図する目的を達成する能力をいう;
(19) 「認証機関」とは,適合性評価機関の審査,指定及び通知並びにその監視のために必要な手 続きの設定及び実施に責任を負う国家当局をいう;
(20) 「適合性評価」とは,ハイリスク AI システムに関連する第 III 章第 2 節に規定された要件が満た されたかどうかを実証するプロセスをいう;
(21) 「適合性評価機関」とは,試験,認証及び検査を含む第三者適合性評価活動を行う機関をいう;
(22) 「認証機関」とは、この規則及び他の関連するEU整合化法令に従って通知された適合性評価機関をいう;
(23) 「大幅な変更」とは,AI システムの上市又は使用開始後の変更であって,提供者が実施した 最初の適合性評価では予見又は計画されておらず,その結果,AI システムの第 III 章第 2 節に規定する要件への適合性が影響を受けるか,又は AI システムが評価された意図された目的の変更をもたらすものをいう;

(24) 「CE マーク」とは,AI システムが第 III 章第 2 節に規定する要件及びその貼付を規定する他の 適用可能な連合整合化法令に適合していることを提供者が表示するマークをいう;
(25) 「市販後監視システム」とは,必要な是正措置又は予防措置を直ちに適用する必要性を特定 する目的で,AI システムの提供者が,上市又は運用を開始した AI システムの使用から 得られた経験を収集し,レビューするために実施するすべての活動をいう;
(26) 「市場監視当局」とは、規則(EU)2019/1020に従って活動を実施し、措置を講じる国内当局をいう;
(27) 「整合規格」とは、規則(EU)No 1025/2012 の第 2 条(1)の(c)に定義される整合規格をいう;
(28) 「共通仕様」とは、規則(EU)No 1025/2012 の第 2 条(4)項に定義される技術仕様のセットを意味し、本規則に基 づいて設定される特定の要件に準拠するための手段を提供する;
(29) 「訓練データ」とは、学習可能なパラメータの適合を通じてAIシステムを訓練するために使用されるデータをいう;
(30) 「検証データ」とは、特にアンダーフィッティング又はオーバーフィッティングを防止するために、訓練されたAIシステムの評価を提供し、その非学習可能パラメータ及びその学習プロセスを調整するために使用されるデータをいう;

(31) 「検証データセット」とは、固定分割または可変分割された、別個のデータセットまたは学習データセットの一部をいう;
(32) 「テストデータ」とは、AI システムの市場投入又はサービス開始前に、AI システムの期待される性能を確認するために、AI システムの独立した評価を行うために使用されるデータをいう;
(33) 「入力データ」とは、AIシステムに提供され、又はAIシステムによって直接取得され、それに基づいてシステムが出力を生成するデータをいう;
(34) 「バイオメトリクス・データ」とは、自然人の身体的、生理的又は行動的特徴に関連する特定の技術的処理の結果生じる個人データであって、顔画像又はダクチロスコピック・データをいう;
(35) 「バイオメトリクス識別」とは、自然人のバイオメトリクス・データをデータベースに保存さ れている個人のバイオメトリクス・データと比較することによって、その自然人の身元を確 認する目的で、身体的、生理的、行動的または心理的な人間の特徴を自動的に認識するこ とをいう;
(36) 「バイオメトリクス検証」とは、自然人のバイオメトリクス・データを以前に提供され たバイオメトリクス・データと比較することによって、認証を含め、自然人の身元を自動的 に 1 対 1 で検証することをいう;
(37) 「特別カテゴリーの個人データ」とは、規則(EU)2016/679の第9条(1)、指令(EU)2016/680の第10条及び規則(EU)2018/1725の第10条(1)に言及される個人データのカテゴリーをいう;

(38) 「機微な業務データ」とは、刑事犯罪の予防、探知、捜査または訴追の活動に関連する業務データであって、その開示が刑事手続の完全性を危うくする可能性があるものをいう;
(39) 「感情認識システム」とは、バイオメトリクスデータに基づいて自然人の感情または意図を識別または推論することを目的とする AI システムをいう;
(40) 「バイオメトリクス分類システム」とは、他の商業的サービスに付随し、かつ、客観的な技術的理由により厳密に必要である場合を除き、自然人をそのバイオメトリクスデータに基づいて特定のカテゴリーに割り当てることを目的とする AI システムをいう;
(41) 「遠隔バイオメトリクス識別システム」とは、自然人のバイオメトリクスデータと参照デー タベースに含まれるバイオメトリクスデータとの比較を通じて、自然人の積極的な関与な しに、典型的には遠隔で、自然人を識別することを目的とする AI システムをいう;
(42) 「リアルタイム遠隔バイオメトリクス識別システム」とは、遠隔バイオメトリクス識別シス テムをいい、バイオメトリクス・データの捕捉、比較および識別がすべて有意な 遅延なく行われ、即時識別だけでなく、迂回を回避するための限定された短い遅延も含 まれる;
(43) 「ポスト・リモート・バイオメトリクス識別システム」とは、リアルタイム・リモート・ バイオメトリクス識別システム以外のリモート・バイオメトリクス識別システムをいう;

(44) 「公にアクセス可能な空間」とは、不特定多数の自然人がアクセス可能な、公有または私 有の物理的な場所をいう;
(45) 「法執行当局」とは、以下をいう:
(a) 公共の安全に対する脅威の保護及び予防を含む、刑事犯罪の予防、捜査、摘発、訴追又は刑事罰の執行について権限を有する公的機関。
(b) 公共の安全に対する脅威の保護及び防止を含む、刑事犯罪の予防、捜査、摘発若しくは訴追又は刑事罰の執行を目的とする公権力及び公権力の行使を加盟国の法律により委託されたその他の機関又は団体;
(46)「法の執行」とは、刑事犯罪の予防、捜査、摘発若しくは訴追又は刑事罰の執行のために、法執行当局又は法執行当局に代わって行われる活動をいい、公共の安全に対する脅威の保護及び防止を含む;
(47) 「AI事務局」とは、2024年1月24日の欧州委員会決定で規定された、AIシステムおよび汎用AIモデルの実施、監視および監督、ならびにAIガバナンスに貢献する欧州委員会の機能を意味する。本規則におけるAI事務局への言及は、欧州委員会への言及と解釈されるものとする;

(48)「国内所轄当局」とは、認証機関または市場監視当局を意味する。欧州連合の機関、機関、事務所および機関が使用するAIシステムに関しては、本規則における国内所轄当局または市場監視当局への言及は、欧州データ保護監督機関への言及と解釈されるものとする;
(49) 「重大インシデント」とは、直接的または間接的に以下のいずれかにつながるAIシステムのインシデントまたは誤作動を意味する:
(a) 人の死亡、または人の健康への重大な危害;
(b)重要インフラの管理または運用の重大かつ不可逆的な中断。
(c) 基本的権利の保護を目的とする連邦法に基づく義務の侵害;
(d) 財産または環境への重大な損害;
(50) 「個人データ」とは、規則(EU)2016/679の第4条(1)に定義される個人データをいう;
(51) 「非個人データ」とは、規則(EU)2016/679の第4条(1)に定義される個人データ以外のデータをいう;
(52) 「プロファイリング」とは、規則(EU)2016/679の第4条(4)に定義されるプロファイリングをいう;

(53) 「実環境試験計画」とは、実環境における試験の目的、方法論、地理的、集団的及び時間的範囲、監視、組織及び実施について記述した文書をいう;
(54) 「サンドボックス計画」とは、サンドボックス内で実施される活動の目的、条件、時間枠、方法論及 び要件を記載した、参加プロバイダと所轄当局との間で合意された文書を意味する;
(55) 「AI規制サンドボックス」とは,管轄当局が設定する管理された枠組みであって,AIシステムのプロバイダ又はプロバイダ候補に,規制当局の監督の下,サンドボックス計画に従って,限られた期間,革新的なAIシステムを開発し,訓練し,妥当性を確認し,適切な場合には実世界の条件下で試験する可能性を提供するものをいう;
(56) 「AIリテラシー」とは、本規則の文脈におけるそれぞれの権利及び義務を考慮した上で、提供者、配備者及び影響を受ける者が、AIシステムの配備について十分な情報に基づき、また、AIの機会及びリスク並びにAIが引き起こし得る危害について認識を得ることを可能にする技能、知識及び理解をいう;
(57) 「実環境における試験」とは、信頼できる確実なデータを収集し、AIシステムが本規則の要件に適合していることを評価及び検証することを目的として、実験室又はその他の模擬環境以外の実環境において、AIシステムをその意図する目的のために一時的に試験することをいい、第57条又は第60条に規定するすべての条件が満たされていることを条件として、本規則の意味におけるAIシステムの上市又は使用開始には該当しない;

(58) 「被験者」とは、実世界試験の目的上、実世界条件下での試験に参加する自然人をいう;
(59) 「インフォームド・コンセント」とは、被験者が、参加するか否かの決定に関連する 試験のすべての側面について説明を受けた後に、実世界条件下における特定の試 験に参加する意思を、被験者が自由に与えた、具体的かつ明確な自発的表明をいう;
(60)「ディープフェイク」とは、AI が生成又は操作した画像、音声又は映像コンテンツであって、現存する人物、物、場所、実体又は事象に類似し、真正又は真実であるかのように人に誤認されるものをいう;
(61) 「広範な侵害」とは、個人の利益を保護する連邦法に反する行為または不作為であって、以下のものをいう:
(a) 当該行為または不作為が行われた加盟国以外の少なくとも2つの加盟国に居住する個人の集団的利益を害した、または害するおそれがある:
(i) 当該作為または不作為が発生した、または行われた;
(ii) 当該事業者、または該当する場合、その公認代理人が所在または設立されていること。
(iii) 配備者によって違反が行われた場合、配備者が設立されていること;

(b)個人の集団的利益に害をもたらし、引き起こし、またはもたらす可能性があり、かつ、同一の違法行為または同一の利益が侵害されていることを含む共通の特徴を有し、少なくとも3つの加盟国において、同一の事業者によって、同時に行われていること;
(62) 「重要インフラ」とは、指令(EU)2022/22/ECの第2条(4)に定義される重要インフラを意味する。
指令(EU) 2022/2557の第2条(4)に定義される重要インフラを意味する;
(63) 「汎用AIモデル」とは、そのようなAIモデルが大規模な自己監視を使用して大量のデータで訓練される場合を含め、有意な汎用性を示し、モデルが市場に投入される方法に関係なく広範囲の明確なタスクを有能に実行することができ、様々な下流のシステムまたはアプリケーションに統合することができるAIモデルを意味する(市場に投入される前の研究、開発またはプロトタイピング活動に使用されるAIモデルを除く);
(64) 「インパクトの大きい能力」とは、最先端の汎用AIモデルに記録されている能力と同等以上の能力を意味する;
(65)「システミックリスク」とは、汎用AIモデルの高インパクト能力に特有のリスクであって、その影響範囲の広さにより、又は公衆衛生、安全、治安、基本的権利若しくは社会全体に対する実際の若しくは合理的に予見可能な悪影響により、連合市場に重大な影響を及ぼし、バリューチェーン全体にわたって大規模に伝播し得るリスクをいう;
(66) 「汎用AIシステム」とは、汎用AIモデルに基づいており、直接使用する場合及び他のAIシステムに統合する場合の両方において、多様な目的に対応する能力を有するAIシステムをいう;
(67) 「浮動小数点演算」とは、浮動小数点数を伴うあらゆる数学的演算または代入を意味する。浮動小数点数は、固定精度の整数を固定底の整数指数でスケーリングすることによりコンピュータ上で通常表現される実数のサブセットである;
(68) 「川下提供者」とは、AIモデルを統合した汎用AIシステムを含むAIシステムの提供者をいい、AIモデルが自ら提供され垂直統合されたものであるか、契約関係に基づき他の事業者から提供されたものであるかを問わない。
第4条
AIリテラシー
AIシステムの提供者及び配備者は,技術的な知識,経験,教育及び訓練並びにAIシステムが使用される文脈を考慮し,AIシステムが使用される対象者又は対象者のグループを考慮した上で,最善の範囲内において,職員及び職員に代わってAIシステムの操作及び使用に対処するその他の者の十分なレベルのAIリテラシーを確保するための措置を講じなければならない。

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