見出し画像

「ももいろクローバーZ 〜アイドルの向こう側〜〈特別上映版〉」を観て率直に思ったこと(ネタバレ有)

今年の春、TBSドキュメンタリー映画祭で公開され大反響を呼んだ「ももいろクローバーZ 〜アイドルの向こう側〜」に撮り下ろし映像などを加えた<特別上映版>が8月19日から全国のスクリーンで公開されました。

ドキュメンタリー映画祭のときのディスプレイ

本作品のアウトラインは公式サイトや各種映画サイトに詳しいのでそちらをご参照ください。

以下、ネタバレを盛大に含む雑感(というか思ったことを書き留めてるだけ)になりますので、未見の方はここで引き返してくださいますよう、よろしくお願いします。

それでは始めます。


本作品はモノノフを公言する監督が手がけたドキュメンタリーです。
これまで、ももクロをドキュメント的に追った作品はライブBD/DVDの特典映像としてのメイキング作品や、映画「幕が上がる」の撮影現場を追いかけた作品「幕が上がる、その前に」、そしてももクロの歴史を紐解く「はじめてのももクロ」などがありました。これらは佐々木敦規氏や本広克行氏という長年に渡りももクロにすぐ近くから関わってきた演出家の方々が撮った作品です。
それに対して今作は、TBSの現役プロデューサーでモノノフを自認する酒井祐輔氏が、ファン目線を取り入れつつ独自の切り口でまとめ上げたものです。
特に区切りのいい周年記念とかではなく、日々の活動を映像作品に残していただけるのはとても貴重な機会です。あの時どんな気持ちであの場所にいたのか、舞台の向こう側とこちら側をシンクロさせてくれるとても有難い場面がたくさんありました。
ただ一方で、コロナでの活動制限が強まったり緩んだりを繰り返す中で、彼女たちと周りのスタッフがどうやってそれに立ち向かい乗り切ってきたのか、というリアルな姿をもっと見せてもらいたかったという気持ちも少なからずあるのです。

2021年の夏は大箱ライブが直前に中止、苦肉の策でスタジオライブを生配信し、明治座公演も延期して空いたスケジュールで浪江女子発組合とももクロが単独ライブを東京都民限定で開催。これだけでも掘り下げるには充分な素材だと思うのですが、その辺りは最低限だけ触っていますが、ももクロの活動の根幹にも繋がる重要な意思決定や振舞いがあったとも思うのです。
ドームライブを直前で中止せざるを得なかった忸怩たる思い、ソウルメイトたるDMB(ダウンタウンももクロバンド)とのセッションの敢行。明治座が延期した穴埋めをどうするか?というところからのJA浪江の起用と限定ライブの立ち上げ。これらを脅威のスピード感を以て実行に移していく企画力と決定力、そしてメンバーの対応力の速さ。この2ヶ月ぐらいの出来事だけでも圧巻のドキュメントたり得ると思います。
どこを切り取って何をお見せするかお見せしないか、という取捨選択はグループのイメージ戦略上最高難度のハンドリングを要すると思いますが、川上氏がそうしたのであればそれが唯一かつ最良の判断なのでそれが全てなのです。
ですが、この先行きが見えない波乱の日々にももクロがどう歩んできたのか。あのももクリの玉井詩織さんの涙に至る葛藤と苦悩はどうやって昇華されたのか。そこを掘り下げてほしかったというのも率直な思いです。

もうひとつ気になったところ。
百田夏菜子さんの国立競技場での宣言を取り上げています。権利の都合かも知れませんが当時の映像は使わず、夏菜子ちゃん本人がその言葉を朗読するという形で再現していました。
ももクロを語る上で「みんなを笑顔にするという部分で天下を取りたい」という宣言は絶対に外せない重要なファクターです。
しかし、それから既に8年。彼女たち自身にも途轍もなく大きな転機がありました。
むしろ今響いてくるのはその後の言葉。
「目の前が真っ暗になってしまった時は皆んなのサイリウムを目印に歩いていきたい」
コロナで人と会えない、ライブが行えないという期間を経て、音楽活動は不要不急とまで言われて切り捨てられそうになった時期さえありました。
モノノフのサイリウムは彼女たちの目印になっていたのか。それを映像で証言することは野暮の極みなのかも知れませんが、何かのカタチでその部分に触れてほしかったです。
モノノフが10人いれば10通りのももクロ論があると思うので、ももクロの一定期間を自由に映像に纏めることが許されたとしたら、おそらく10人の作品は誰一人として同じものにはならないでしょう。ですから、酒井監督が掘り下げたいファクターが自分のそれと合わないことなど当然のことです。
では、ももクロをフラットに見る立ち位置の演出家にお任せした作品を観れる機会がこの先あったら、また違う切り口で考察することもできるのでは、と期待しています。

ちょうど始まったばかりの
ワンピースのオブジェととともに。

パンフレットが膨大な活字の嵐でちょっとビビりました。大箱ライブのパンフレットの別冊?というボリュームなので必見です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?