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私の父は年下 3

私が中学1年生の秋。

その頃父は
もう以前の父ではなかった。

釣りをすることも
パチンコに行くことも
麻雀をすることも
旅行に行くことも、

それどころか
会話をする事も
笑い合うことも

できなかった。

病院の個室のベッドの上で

天井を見つめるか
寝ていることがほとんどだった。

急にそうなったわけではない。
徐々に、
徐々にそうなっていった。

癌が
脳に進出してきたためだった。

基本は母が看病していたが
祖母や叔母が交代で
父を見守る間に
母は家に帰り、
入浴したり買い物をしたりしていた。

私は家で、
祖母と2人で生活していた。

寂しくないと言えば嘘になる。
だけど、
幼い時からのことだったので
寂しくて寂しくてたまらないといった気持ちは
記憶にない。

中学校へ行き、
友達と遊び、
部活をし、
いつも笑顔で楽しく過ごしていたと思う。

悲しい気持ちは
あったと思う。

でも、それを周りに悟られないように
していた。

そんな生活をしている中、
中学校の体育祭があった。

その体育祭の振替休日の前日から
私は母と一緒に
父の病室に泊まることになった。

その日、
いつもは天井の一点をみつめている父が
パタパタ動き回る母を
目で追っていた。

表情も柔らかい。

母は嬉しそうに笑っていた。

私もそんな2人を見ていて
嬉しくなった。

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