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私の話

今日は私の話です。
私はお父さん子でした。
公務員をしていて真面目でとてもいいお父さんでした(別に死んでないです)。

そんなお父さんが大好きで、小さい時は帰って来るのまだかなって玄関を何度も見に行ったりしてた。
あの頃の私かわいい。

そんな私も小学生高学年になるとちょっと思春期。
急に疎ましく思うようになりました。

きっかけは多分そう。

小学生の時に宿題で「自分の名前の意味を調べてください」というものが出されました。
皆さんもありましたか?
私はそれまでそんなこと考えたことなかったから急に気になって、走って家に帰ったのを覚えています。

お母さんに聞いたら苦笑いして
「帰ってきたらお父さんに聞いてみて。」
と言われました。
お母さんが話してくれたらいいのにと思ったんだけど、素直にお父さんが帰ってくるのを待つことにしました。

ガチャって鍵を開ける音が聴こえて玄関まで駆けていった。
お父さんに抱きついて
「なんでまといなの?」って。
さすがのお父さんもいきなりのことで驚いたみたいな顔になって。
そんなお父さんにすかさずお母さんが宿題のことを話していました。
「ああ、そういうことか。じゃあ御飯食べながら話そうか。」
お母さんはまた苦笑いです。

「両津勘吉が好きでなあ。」
そう話始めました。
「それ主人公の名前でしょ。」
お母さんが言って、
「ホモやホモや!」
って学校みたいにきゃっきゃ言ってました。
当時、両さんを観てはいませんでしたが名前で両さんが男の人ってことくらいはわかりました。
「そんなこと言わないの」「どこで覚えてくるの」とか叱られたり小言言われたりしました。

「お父さんが昔、読んでたマンガに『こちら葛飾区亀有公園前派出所』ってものがあってな、そのキャラに両さんの再従兄弟の纏って子がいてな、その子からとってん。」
そう言われました。

私はよくわかっていないような顔をしていたのでしょう、お母さんがアニメのキャラクターと一緒の名前だよと教えてくれました。

ようやく話の内容がわかった私は自分の名前にモデルがあるなんて、まるで自分が物語の主人公にでもなったみたいに感じることができてとても喜びました。

「その子がな、男前ないい女でな、こんな風に育ってくれたらええなって思ってん」
お父さんはそう話してくれました。

その時、私はその話の中の“いい女”というフレーズに引っかかってしまいました。
そして、そのたった一言が私を変えました。

私の中でお父さんが「お父さん」ではなくひとりの「男」に見えたのです。

学校の男子が「ちんこ、おしり、おっぱい」なんて言うのを聞くのは子供っぽいって思うから嫌でしたが、その感情はそういう場面に出会った時だけのことでした。

でも、お父さんに感じたそれは子供みたいな可愛いらしいものじゃなくて、なんかこうどろっとした濃厚な大人の感触というか、単にエロさみたいな生々しさでした。

そう感じたから、その課題は参観日の授業で皆発表することになってたのを思い出して、余計に恥ずかしくて嫌になったのをよく覚えています。

それからが永い反抗期でした。
ほんと思春期ですよね。

でもお父さんも悪いと思います。
その思いは今でも変わりません。

それまではお父さんはお父さんだったのに、それ以降は結構デリカシーのないようなこと言ってるなって思うようになったから。

いま思えば、それまで子供で気づけなかったことに気づくようになっただけのことだったのでしょう。

反抗期は永くて中高は本当にお父さんのことを避けていました。全然お父さんと話した記憶がありませんでした。私はお母さんに対する反抗期はあまりひどくなくて落ち着いて話せることも多かったです。

当時のことをお父さんに聞いたことがあります。
なんでも本当は話しかけたかったけど、距離を取る選択をしたのだとか。
そう話すお父さんがシュンと小さくなっているのが申し訳ないと思う反面、可愛いなとも思いました。

大学は地方に行って一人暮らしをしました。
帰るのは長期休暇の少しくらいでした。
たぶん3回生の正月だったと思うけど、あまりにも暇で実家をわけもなく捜索したことがありました。

押入れをガサゴソしてると古い「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が出てきました。
フラッシュバックみたいに昔のことが流れてきて一瞬イラっとしました。
けれど昔と違って、いろんなことを経験していたし見聞きしてたからすぐに落ち着くことができました。

纏さん(名前の由来だけど私にとっては他人だったからさん付け)ってどんな人だろう。
あの日以来、両さんを見かけても気分が悪くなって避けていました。
だから、纏さんがどんな人か知らなかった。
冊数は多いけど暇にかこつけて読みました。

おもしろかった。
親子だからでしょうか、ツボが一緒なんですね。
設定なんかは繰り返しばかりなのに、なぜか続きを読んでしまう。
そんな魅力のある漫画でした。

そして纏さんの登場です。
かっこいいって思いました。
こんな人になりたいなって。
ハッとなりました。
あぁ、お父さんもこんな気持ちだったのかなって。

お父さんが言った“いい女”にはたぶん女の人を差別するようなニュアンスも少なからずあったと思います。
そういう時代の人だから。
男を立ててなんぼみたいな。
男の人にとってはそういう意味でも纏さんは“いい女”なのだと思います。

けれど、それ以上に纏さんは腕っ節とか気構えとか心意気とか生き方がかっこよかったです。

正直、子供の頃のショックだった気持ちは嘘じゃないし、今でも悲しいとこだったと思っています。
けれど今はそんなことは関係なく親に感謝しています。
自分の名前が好きだって自信を持って言えます。

それに結構便利なことも。
私は自分から話しかけるのは苦手だけど話しかけられたら話せるタイプで、男の人には「もしかして両さんの纏が由来?」みたいな感じで話しかけられることもあるから。

これ別にデリカシーもセンスもない声のかけ方だけど、話しかけてくれること自体には嫌な気はしないです。
モテるのとは違うのがちょっと不満ですけどね。

なんで名前の由来なんて書こうと思ったかというと、女の人は絶対に上に書いたようなことは聞いてこないから。
だって普通少年漫画の「こちら葛飾区亀有前公園前派出所」のヒロインの1人が名前の由来なんて言われても女の人は嬉しくないもん。
全然、かわいくないもん、それは。
訊いたわけしないけど、そう思う子が多いんじゃないかな。
だから面と向かって聞いてきた女の人は今までいませんでした。

わざわざ聞いてほしいなんて思ってはないけど、なんか伝えたかったから。

私は自分の友達にnoteをやってることは言ってないです。
だけど、なんか書きたかった。

こんな感じでたまには自分のことも書いていこうと思います。

そういうのもたまにはいいですよね。

いつもよりもずいぶん長くなってしまいました。
オチもないのに。

読んでいただいてありがとうございました。

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