バシャーン、パラパラ
ぼくはどこかにいた。
見知らぬ少女と2人で。
(夢か)とすぐにわかった。
『夢じゃないわ』
少女は言った。
『でもそれなら良かったのにと、そう思うわよ』
そこは部屋で一面真っ白だ。
入ってすぐのところにお皿が積み重ねられたカートが置いてある。
お皿は、これまた真っ白…、ではない。
そういうものもあるけど絵皿の方が多い。
カラフルなもの、モザイク画のもの、風景画。
それらが大皿と呼ばれる種類だったかは知らないけど、どれも大きすぎるほどに大きい。
少女はそのうちの1つをおもむろに手に取る。
おもむろに取るにはサイズが大きく、両手で抱えるようにだ。
と思うが早いか、入口と逆の方、部屋の奥に向かって体全体でそれを投げ出した。
回って、砲丸投げみたいに。
バシャーン、パラパラ
ぼくは訳がわからず、息するしかできない。
一枚二枚三枚、三昧。
何枚かわからない。
ちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
播州皿屋敷かと心の中で突っ込んだ時、
『面白くないわ』
と少女は呟いた。
ギクッとして、少女を見ると、ただ、こっちを見ているのだった。
部屋を出て歩き出した。
『今のはお皿の部屋なの』
『割るためにあるのよ』
「でしょーね」
ぼくにはそれしか言えない。
『あなたって変ね』
「そうかな?」
『だって普通の人は聞くもの』
「何を?」
『しかも、天然。』
そう言ったギリ、その子は何も言わずに前を行くのだ。
気づいたら壁の左側の壁に扉があった。
『そこは絵の部屋。』
『絵を描くためにあるのよ』
通り過ぎる。
(入らないのかよ)
『変なのか普通なのかどちらかにしなさいよ』
読まれてる。
けど...、まぁ、いいか。
『そういうところ、好きよ』
ギシッ
軋む音がした。
見下ろすと廊下(そうだと思うんだけど)に扉がある。
『絵がある部屋よ』
『絵を飾るための部屋なの』
彼女はドアノブ横にスライドさせた。
「引き戸なんだ」
『面白くないわ』
そして、また歩き出した。
(………、)
『早いわね』
『そういうところも好きよ』
さっきは壁があったから廊下だって思ったんだけど、いつの間にか壁がなくなっていて見渡す限りがただ一面の白の空間だった。
壁もないのに地平線は見えなくて、真っ白。
どこかにいることは確実なのにどこなのかわからない。
部屋にいた。
最初と同じだ。
突然。
床は木切れや紙くずが腐葉土みたいだ。
『絵を破る部屋なの』
聞きもしないのにそんなことを言ってきた。
ガガガガ、ビリリリ、シューーーー。
(切ってんじゃん)
『女の子に向かって、お前はないんじゃない?』
『そんなことが聞きたいんじゃないわ』
『気が利かないわね』
『ゆきって言うのよ』
『誕生日にはお人形さんが欲しいわ』
『意味なんてヒトが勝手に付けるものよ』
何々なに?
処理してる暇もなく矢継ぎ早にまくしたてられる。
(覚めるんだ)
そうとわかった。
「夢オチ…。やっぱり夢じゃん。」
『でもそれなら良かったのにと、そう思うわよ』
それは耳元。
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