新織灯世

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尤なる愚者

                             人生の軌道はどこで転じるか分からない。その各所はいわば点であり、それが線を成して未来へと伸びてゆく。今の私へと繋がった起点の処は数年前の東京だった。  当時の私は高層ビル群に本社を置く商社の営業としてノルマに追われる毎日を送っていた。変事があったその日は常習化した上司の同輩いじめが特に酷く、私は我慢できずに弁難したのだ。  我が部署の皆は性悪な上司に一太刀浴びせた私を称賛して、その晩に飲み屋で急遽祝賀会を設けた。私は

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