起業の年から申告?失敗しないママ起業と確定申告のお話
失敗しないママ起業専門税理士のあさかわひろきです。
今回のテーマは、確定申告のお話です。
起業すると、どーしても気になるのが、確定申告。
起業したばかりの方から、
「起業の年は儲かってないから、確定申告しなくていいですよね?」
というご質問をよく受けます。
確定申告は、税金は払う”だけ”の手続きではありません。
確定申告をする必要がなくても、進んで確定申告をした方がよい人も、実はいるのです。
今日は、確定申告の基本をしっかり学んで、
確定申告に備えてください!
確定申告も怖くない!『失敗しないためのママ起業講座』(オンライン)
1. 確定申告って、なんのためにするの?
確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日)の間に所得(利益)のあった人が、所得税などの税金を計算し、確定申告書を提出することです。
確定申告は、実は、税金を払う”だけ”の手続ではありません。
後でお話しますが、
・払い過ぎた税金がある場合、これを返してもらう
・今年赤字となった場合、将来の黒字と相殺するために、赤字をキチンと申告しておく
といったケースにも行う場合があります。
つまり、
・確定申告しなければならない人
・確定申告した方がいい人
の2パターンあるのです。
2. 確定申告しなければいけない人は誰?
確定申告をしなければならない人は、どんな人でしょうか?
国税庁のHPによると、以下のように書いてあります。
『各種の所得の合計額(譲渡所得や山林所得を含む。)から所得控除を差し引いた金額(課税される所得金額)に所得税の税率を乗じて計算した所得税額から配当控除額を差し引いた結果、残額のある方』
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/teishutsu.htm)
、、、いろいろと専門用語が出てきて、よくわかりませんね、、。
ざっくり言うと、
「所得(利益)がプラスで、税金がでる人」
です。
これだけのルールですと、勘の良い方は、
「サラリーマンのほとんどが、この”所得がプラスで、税金がでる人”にあたるけど、確定申告してないよね。。。」
と、思いますよね。
そうなんです。
国民の大半を占めるサラリーマンを確定申告の対象にしてしまうと、
税務署は大混乱? 確定申告しない方も続出?
になるかどうかわかりませんが、色々な大人の事情もありまして、
大半のサラリーマンの場合は、会社が年末調整をしてくれることを条件に、確定申告を免除しています。
その意味では、年末調整とは、「会社がやってくれる確定申告の簡易版」みたいなものです。
ただし、そうはいっても、年末調整は確定申告の簡易版。やはり、限界があります。全てのサラリーマンを年末調整のみで終らせてしまうと、色々と不都合がでてくる場合があるので、以下の方は、たとえサラリーマンでも、確定申告を義務付けています。
・給与の年間収入金額が2000万円を超える人
・1カ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人
・2カ所以上から給与の支払いを受けている人で、主な給与以外の給与収入金額と給与所得および退職所得以外の所得金額の合計額が20万円を超える人
このように、確定申告をしなければならない人は、原則、税金がでる人なのですが、サラリーマンは例外的に一部の人を除いて、年末調整で終了し、確定申告は免除ということになります。
3. 確定申告の種類(青色申告、白色申告)
確定申告には、2種類の制度があります。
青色申告と白色申告です。
青色申告
青色申告の届出を出して、しっかり帳簿を付ければ、ご褒美として、色々な税金の優遇が受けられる制度です。
白色申告
青色申告以外の人の制度です。
何も届出をしなければ、自動的に、白色申告になります。
青色申告の届出の期限は、事業を開始してから、2ヶ月以内です。
青色申告制度を受けたい方は、忘れずに、届出を行いましょう。
4. 確定申告しないと、どうなるの!?
国民の3大義務の1つである、納税義務。
今年の確定申告は、翌年の3月15日までに申告・納税しなければなりません。
確定申告の義務があるのにしなかった場合、以下のようなペナルティーが待っているので、気をつけましょう。
無申告加算税
確定申告を期限までに提出しなかった罰則として、払うべき税金の15%から20%を払うことになります。悪質な場合は、重加算税といって35%から40%を払う必要があります。
一方、期限後でも自主的に申告した場合には、罰則が軽減されることもあるので、いずれにしても、早めの申告が肝心です。
延滞税
もう1つの罰則が、延滞税です。決められた期限(3月15日)から遅れて払うまでの日数に応じて、延滞税がかかります。気になる税率ですが、年度や遅れる日数によって異なります。
令和2年の場合、最初の2か月は2.6%、それ以降は8.9%です。
これも、気を付けたいですね。
5. 確定申告した方がよい人とは?
確定申告は、税金を払う義務のある人だけが行うものではありません。
確定申告する義務がなくても、進んでやった方がよい人もいます。
確定申告した方がよい人とは、どんな人でしょうか?
①税金が戻ってくる人
実感がないかもしれませんが、大半の方は、少しずつ、税金(源泉税)を払っています。
サラリーマンの方は、給料から源泉税が引かれています。
個人事業主の方も、業種によっては、請求金額から源泉税を引かれて払われます。
源泉税は、税金の「前払い」のようなものです。
サラリーマンの方は、年末調整で、この税金の前払いの帳尻を合わせます。毎年、12月の給料が少し多めにもらっている記憶がある方がいれば、まさにこの影響です。
一方で、今年マイホームを買って初めて住宅ローン控除がある人や大きい金額の医療費がかかってしまった人は、年末調整では対応できません。
確定申告をして、払い過ぎた税金を取り戻すことができます。
赤字の個人事業主の方も、源泉税を引かれて入金がある場合、
引かれた源泉税>本来払うべき税金
であれば、確定申告をすることで税金が戻ってきます。
②赤字の繰り越し
確定申告をしなければならない人は、税金が出る人です。
なので、赤字の人は、確定申告しなくてよいことになります。
しかし、それでも青色申告でしっかり確定申告をすると、
この赤字が翌年以降も繰り越され、将来の黒字と相殺でき、税金を減らすことができます。
繰り越せる期限は3年です。
赤字だからこそ、しっかり青色申告で確定申告したいですね。
6. 確定申告しなくていい!?20万円ルールとは?
「所得(利益)が20万円までなら、確定申告しなくていいと聞きました!」
というご質問も、結構多いです。
この20万円ルール、実は誤解があります。
「2. 確定申告しなければいけない人は誰?」でもお話しましたが、20万円までなら確定申告しなくてよい人とは、
年末調整をしたサラリーマンで、お給料(退職金含む)以外の所得が20万円以下の人
です。
つまり、お給料をもらわず、年末調整をしていない個人事業主は、儲けが20万円以下でも、税金がでる限り、確定申告する必要があります。
ここは、誤解が多いので、特に個人事業主の方は、気を付けたいですね。
7. 赤字だからこそ確定申告!そもそも赤字とは?
そもそも赤字とは、なんでしょうか?
赤字とは、大雑把に言うと、
収入(売上) < 経費
となってしまうことです。
(黒字は、その逆ですね)
通常、赤字が続くと、お金はどんどん減っていきます。
事業が続かなくなる一番の理由は、お金が尽きることです。
そうならないためにも、赤字はなるべく避けたいですね。
8. 確定申告で赤字と黒字の相殺:白色申告と青色申告の違い
そんな赤字ですが、
青色申告でしっかり確定申告を行うと、
税金面で、赤字の有効活用ができます。
その有効活用とは、
過去の赤字を、将来の黒字と相殺できる!
です。
ちょっと、何言っているのか、よくわかならいと思いますので、事例で見ていきます。
【事例】
第1期:100の赤字
第2期:35の黒字
第3期:35の黒字
第4期:35の黒字
だったとします。
白色申告の場合
白色申告の場合、赤字の優遇はありません。
第1期は100の赤字なので、税金は0。
第2期以降は、35の黒字なので、35に税率をかけた金額の税金がかかります。
青色申告の場合
青色申告では、過去の赤字と将来の黒字の相殺が可能です。
まず、第1期は100の赤字です。
赤字なので、税金は0です。
白色申告の時と、結果は同じです。
違いがでるのは、第2期以降です。
第2期は35の黒字が出ていますが、第1期の赤字と相殺できます。
そうすると、黒字35が赤字35と相殺され、利益はなんと0になります。
利益が0なので、税金は0です。
第3期も35の黒字ですが、第1期の赤字がまだ65(=100-35)余っているので、
35の黒字全部と相殺できます。
利益はまたも0になり、税金も0です。
第4期も35の黒字です。
そして、第1期の赤字が、まだ、30(=100-35-35)余っています。
そこで、黒字の35と残っている赤字の30を相殺して、利益は5になります。
税金は、当初の利益35でなく、5に税率を乗じた金額だけかかることになります。
いかがでしょうか?
白色申告であれば、
1期目の赤字は過去の遺物となって切り捨てられ、
2期目以降の黒字に税金がかかってきます。
一方、青色申告であれば、
1期目の赤字が2期目以降の将来の黒字を減らしてくれます。
赤字をうまく使えば、大きな節税効果が期待できます。
この意味でも、青色申告で確定申告をしっかりやっていきたいですね。
9. 赤字にも有効期限ある?
赤字の有効活用ですが、無期限に認められるわけではありません。
実は期限が決まっています。
個人だと、3年間です。
つまり、1年目で発生した赤字は、2年目から4年目の3年間しか使えません。
3年間で使い切れなかった赤字は切り捨てられ、それ以降に黒字が出ても、相殺できません。
赤字の有効期限は3年です。
ちなみに、法人の場合、
赤字の有効期限は、なんと9年です。
(平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生ずる欠損金額の繰越期間は10年)
10. 起業したら青色申告で確定申告!
起業した年は、
・起業準備等で出費が多い
・集客の関係で、売上が安定するのに時間がかかる
等々の理由で、どうしても赤字になってしまうことが多いです。
「売上少ないし、赤字だから、今年の確定申告はやめようかな、、」
「赤字だし、青色申告は黒字になってからでいいかな、、」
なんて思っている、あなた!
赤字だからこそ、しっかり青色申告で確定申告をし、
将来の節税対策をしておきましょう!
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