器の大きい人も、器の小さい人も
「器の大きい人」という表現がある。心が広く、小さなことでイライラしない人のことを指す。
器の大きさが出るシーンてどこだろうな~、と考えて真っ先に浮かんだのが「カラオケバー」だ。
カラオケバーは全員で同じ空間でカラオケを楽しむバーなので、、歌いたいと思ったら自分でデンモクを入力して、順番が来たら歌う。
カラオケバーには、人が歌っているのは邪魔しない、みたいな分かりやすいマナー(一般的なカラオケでも同じ)など色々ある。ただその中でも、「他人が歌っている曲を、一緒に歌う」というマナーについての良し悪しは、お店の雰囲気やその時のノリとかで違う。一緒に歌いたいのなら、その辺の空気をしっかり読まなくてはならない。
とはいえ、曲を入れた本人の「器の大きさ」によっても良し悪しが変わる。
「知ってるんですか?一緒に歌いましょうよ!!」という人もいれば、「歌ってるのに何なんですか?」みたいな人もいる。
個人的には、バーというある程度パブリックな場で歌っている時点で、多少ヤジが入っても、思い通りに歌えなくても、しょうがないのでは?と思うのだが。
そんなカラオケバーでの出来事。てっぺんを2時間くらい超えて、体内にも店内にもアルコールが充満しきっている頃。カラオケが歌われ続け、最早どのグループのどの人が歌っているかもよく分からない状況の中で、いきなり「おい!!」という声が聞こえてきた。
店内に流れるイントロが、力を抜いたかのように収束していく。カラオケの演奏中止ボタンが押されたようだった。状況がつかめない店内でも、何となく笑い声がトーンダウンされ、カウンターにいた男性が、会計を済ませて帰っていった。どうやらその男性がカラオケを歌っているところに、酔った若い兄ちゃんが入っていったらしい。
「あら、器の小さい人」と思いつつ、よく聞くと帰った男性はこのお店でよく見かける常連さんだった。いつも一人ながら、歌によっては初めてきた若者グループとも一緒に歌ったりしている。自分よりも一回りも二回りも年下の人たちと楽しくしている姿を見て「器の大きな人だなあ」と思っていたのに。
あとで聞いた話では、どうやら仕事で大変なことがあって、久々にこのお店に顔を出していたらしい。そして、その日以降、彼は来なくなったそうだ。
その男性がどうとかではなく、「あの人は器の大きい」とか「この人は器が小さい」とか、決まっているものではないのかもしれない。器の大きさは、常に変わる。人が持つ器は、その時の心の余裕で大きくなったり、小さくなったりものなのではないか。自分に当てはめたってそう思う。
そもそも、「器の大きいが良い」「器の小さいが悪い」と単純な話でもない気がしてきた。その時々の自分余裕や場所に合わせればよくて、過度に大きく見せる必要もないし、小さいからと言って自己嫌悪に陥る必要もない。
自分の器を大きくしたり小さくしたり、相手や場所に合わせることから、コミュニケーションが始まるのかな~なんて、
お家のソファーで「TikTok」で大バズりしたショートフィルムを眺めながら思った。
そのショートフィルムが先日カンヌ国際映画祭の「#TikTokShortFilm コンペティション」でグランプリを受賞した『レンタル部下』である。
2分40秒で観れるショートフィルムながら、「人間の器」的な部分が垣間見れる。これを見たときの感想で、自分の器が大きい状態か小さい状態かわかる・・・かもしれない。
文章:真央
編集:鈴木乃彩子
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