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10万円で人生の「まさか」に備えよう!~映画『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』

今回の日刊かきあつめのテーマは「#10万円の使い道」だ。

急に10万円もらえるとなっても、特に欲しいものはない。もともと物欲がなく、稼いだお金はほぼ、飲食や交際費といった飲み代に消えている。

もしかしたらきっと、一緒に住んでる人がいたら違うのかなあ、と思ったりする。奥様と二人暮らしの友人は、10万円でダイニングテーブルを買い直したり、ちょっと高い肉とワインを買ったりするらしい。

自分が誰かと住んでたらどうするだろう。ダイニングテーブルやちょっと高い肉とワインも良いけれど、どうせなら普段買わないようなものがいい。もっと同居人が驚愕してくれるようなものが。


そうだ、ワニの実物大フィギュアを買おう。そのワニに頭を噛まれて死んだふりをして、同居人が帰ってくるのを待つのだ、こんな風に。

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家に帰ってきて、こんなことになってたら絶対楽しいと思うのは、一人暮らしが長いからだろうか???(でも絶対楽しいと思う)

そんなお茶目な妻と、彼女に振り回される旦那を描いたほのぼのヒューマンコメディ映画が『家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。』である。

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サラリーマンのじゅんは年下のちえと再婚して3年目を迎えようとしていた。ある日、じゅんが仕事を終えて帰宅すると、玄関で妻のちえが口から血を流して倒れている。

それを見つけて動転したじゅんだが、「ククク......」と笑うちえの傍らにはケチャップ。ちえは死んだふりをしていたのだ。それからというもの、家に帰ると必ず死んだふりをするようになったのだった。


なぜ死んだふりをするのか?
その答えは、映画を見て……も明らかにされない。

実はこの映画は、ヤフー知恵袋に寄せられた実際の質問が元ネタになっている。
実際の質問でもその理由や詳細は明らかにされていないため、映画でも明確に答えは出さず、見た人に委ねる作りになっている。

「だけどやっぱり、なんで死んだふりをするのか気になる!」という人もいると思う。そこで映画に散りばめられた設定から死んだふりの理由を考察してみる。
(ネタバレがあるので注意!)


死んだふりを読み解くカギは二つある。

まず、ちえは劇中に何度も「準備することの大切さ」について口にしている。
「人生は3つの坂でできている。上り坂、下り坂、まさか」
「人生の「まさか」はいつ起こるかわからない」
「備えあれば憂いなし」
など。

またちえの母は幼くして亡くなっていることが、ちえの父から語られる。その頃から父が仕事から帰って来るたびに、ちえが突然いなくなったふり(かくれんぼ)をするようになったエピソードが出てくる。

人はいつ死ぬかわからない。ちえは母が死んだ経験からそのことを理解し、「自分が死ぬことで大切な人を悲しませないように」と準備を始めたのではないだろうか。
つまり自分が死んだとしても、じゅんの悲しみが少なくなるように、死んだふりを通じて準備をさせていたのだと思う。

なぜそんな周りくどいことをしたのか? その周りくどさこそが、ちえの愛なのだ。

その証拠に、じゅんが「僕のことをどう思っているんだ?」と尋ねる度に「月がきれいですね」と答えるシーンが度々登場する。

かの夏目漱石が「I love you」を「愛している」と直接訳さなかったように、ちえも夫への愛を「死んだふり」で間接的に表現したのだろう。

***

今回の給付金10万円。

ただ今を楽しむために使うのではなく、今後の人生で起こりうる「まさか」に備えて使うのも良いかもしれない。

まずは実物大のワニのフィギュアを買うことから始めてみてはいかがだろうか?


編集:香山由奈

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