見知らぬ人たちの温かみ コンタクトを落としたときの話
これは、すいぶんと前。まだ娘が私のお腹の中にいた頃の話。
その日は朝から土砂降りの雨だった。
妊婦のウォーキングついでに買い物をし、荷物を持ちながらの帰り道。
左の腕に荷物を通し、肘を曲げて傘を持つ。
傘の金属の柄の部分は、ちょうど私の顔、左の目の前あたりにあった。
人通りの多い駅前広場に差し掛かったとき。
すれ違う誰かの傘と私の傘が触れて、傘の柄が、私の顔にポンッと当たった。
一瞬だった。
次の瞬間、左目の視界が磨りガラスのようにぼんやりしてしまった。
(あ、コ