お料理初心者は1歳児のお弁当を作れるのかという話

私は永遠の料理初心者だ。

元々、家事全般が不得手だし好きじゃない。小さい頃はなんとなく台所に興味があったが、そもそも食べることに執着がなかったのでお手伝いを積極的にするでもなく偏食の割に自分でなんとかしようとも思わないのでとりあえず食べる専門、家庭科の調理実習前は見かねた母が家で同じメニューを作る練習を私にさせていたし(そのおかげかハンバーグと餃子はそれなりに作れる)、一人暮らしをしていた頃もほとんど自炊はしてこなかった。だから、自分が妊娠するまでにはとりあえず大人のお弁当くらいはそれなりに作れるようになってからかなぁ、子どものお弁当は大変そうだしなぁ、などと今の夫と付き合いだした頃漠然と思い描いていたのだ。そのはずが付き合って間もなく子どもができてしまい、結局お弁当はおろか、まともに料理を始めてから半年足らずで私は母になってしまった。

その後料理を始めて1年足らずで離乳食を作らざるを得ず、お世辞にも見栄えが良いとは言えないご飯を大量に作り置きして冷凍保存し、解凍したものを小分けにしたタッパーから直食いさせ、メニューは基本1週間ほぼずっと同じという食育とはなんぞや、という限界育児を繰り広げている私に9月の末赤紙が届いた。ベビイさんが通う保育園から秋の遠足のお知らせである。

コロナの影響でベビイさんの保育園でも様々な行事が中止を余儀なくされているのだが、それでも年に2回の遠足、それも春は中止となってしまっていたため規模を縮小して行ってくれたのだ。先生たちには頭が上がらない。しかし「当日はお弁当のご用意をお願いします」の一文に私は震え上がった。そもそも私は大人のお弁当すら使ったことがない。永遠の料理初心者をうたい「胃に入っちゃえば一緒よ〜!」と明るく笑う平野レミを脳内に飼う私が初めて作るお弁当がまさかの1歳児向け、つまり幼児食だ。一体どうしろと。一瞬当日休ませようかという邪念が頭をよぎったが、あまりにも身勝手すぎる。さらに当日は私もパートに行く日だ、逃げ場がない。

弱り果てた私はTwitterに飛びついた。この無知なアライグマに知恵を貸してほしいのだ、ア界隈には先輩ママもパパも料理人も保育士もいる。料理が趣味なのだ!とプロ顔負けのごはんを作るフレンズもたくさんいる。私は今までにも様々な日常の困りごとで知恵を借りてきたが、今回もお世話にならなければならない。頼む、お願いします。

次々と私のつぶやきは拡散され、先輩パパママや現場の声と思しき方々、とにかくいろんな人からアドバイスをたくさんもらうことができた。

翌日、100均でおにぎりを作る器具を見つけたので購入し、そう言えばそもそもベビイさんにワンプレートでごはんを食べさせてこなかったなとお弁当箱は家にないのでとりあえずお皿に盛って食べさせてみることにした。

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タッパーよ。

いんげんのごまあえは彩になるかと初めて作ってみたのだが、甘めの味が気に入ったようでもりもり食べてくれたため、本番にも入れることにした。冷凍のアンパンマンのさつまいもスナックも喜んで食べていたのでこちらも採用。おにぎりはベビイさんには少し大きかったようで、詰め込みがちなベビイさんはむせていた。あと手がべたべたになって本人は平気そうだが後片付けがあまり平気ではない。代わりにお好み焼きが大好きなので、主食として入れることにした。

ワンプレートごはんはベビイさんに好評で、特に気にすることなく食べてくれた。普段はガチャガチャとこぼしまくるので一品ずつ目の前に出して食べさせているし、保育園でも野菜のおかずと汁物だけ先に食べさせ、食べたらメインのおかずとごはんという順番で食べさせているので混乱するかと思ったが大丈夫らしい。少し安心だ。


しかしまだ安心できない。ネットで幼児のお弁当を調べていて「お弁当を食べる練習」が必要である、という意見を目にしたのだ。確かに、ベビイさんは外で食事をとった経験がない。外食は食べるものもないし、騒いで周りに迷惑をかけられないといつも家で食べている。外で食べることに慣れていないとびっくりして食べられない子どももいるらしい。それはまずい、私のお弁当の練習がてらベビイさんも外でごはんを食べるか実験しなくては。しかしそもそもうちにはお弁当箱がない。

こちらを購入。食洗機、電子レンジ共に利用可とかそういうのよりとにかくこぐまちゃんが可愛い。ベビイさんもこぐまちゃんは好きだが、私はもっと好きだ。作る側のテンション維持のためにも、可愛らしいお弁当箱が良い。可愛い。

そして遠足の2週間前、試しにお弁当を作って家族でピクニックに出かけることにした。

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キャベツ、にんじん、しらすのお好み焼き   鮭のめんつゆ照り焼き            いんげんのごまあえ             アンパンマンのさつまいもスナック      ゼリー

ゼリーを凍らせて保冷剤代わりにすると良いというのはア界隈で得た知識だ。ベビイさんは果物が苦手なのでデザートの代わりになって助かった。ベビイさんはお弁当箱を見るとニコニコし、外でも問題なく完食してくれた。お好み焼きは手づかみでもそこまで手が汚れないというのもポイントが高い。野菜もたくさん入るし彩も悪くないしいいことずくめだった。


メインのおかずは最後まで悩んだ。パート先の利用者さん(私は障害者の通所施設で働いている)達にも相談してみた。キャラ弁にしてやれとも言われたが、力尽きてその日仕事にならないかもしれない、と言ったらからあげやハンバーグといった非常に現実的なおかずを提案してくれた、優しい。結局からあげとハンバーグ両方作ったのだが、からあげが冷凍したところ食べられるもののかなり硬くなってしまったのでハンバーグを入れることにした。


そして当日作ったのがこちら。

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当日は予行演習を済ませていたこと、おかずの類は全て前日までに作っておいたことが功を奏し、慌てることなく間に合わせられた。当日の朝に作ろうとするととんでもない時間と労力を要するのが料理初心者である所以だろう。衛生的に問題はないので許してほしい。


お弁当はベビイさんには好評だったらしい。確かに朝お弁当作ったよ、と見せると大喜びして朝食として食べたがっていた。お迎えに行くと先生からお弁当のご協力ありがとうございました、というお礼と共に

「ベビイちゃん、お弁当に夢中でずっと頬張ってて、クラスで一番に食べ終わりましたよ!」

という講評をいただいた。

本当に良かった。


今後も数えきれないくらいベビイさんにお弁当を作ることになるのだろうが、今回の成功体験がなければ次に繋がらなかったと思うので書き残しておきたい。キャラ弁はとても作れないが、見た目が冴えなくても本人が喜んで食べてくれるならそれでいいじゃないか、胃に入っちゃえば一緒なのだ。そして2週間あまり私のお弁当どうしよう!というグダグダにその都度付き合ってくれたア界隈の皆様、本当にありがとうございました。しがない母子はあなた達に救われました。


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