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心に滲むバンド "tacica"

"tacica"というバンドを知っている人がどの位いるのだろうか。友人やネットで聞いてみてもほとんどの人が知らないというのだから、そこまで多くはないのだと思う。このtacicaというバンドが私にとって一番好きなアーティストだ。

私がtacicaに出会ったのは2015年か2016年、姉に連れられてライブに行ったときだった。正直な話、最初は知らない、聞いたこともないバンドのライブなんて楽しくないだろうと思っていたし、実際そんなに楽しくなかった記憶がある。何しろ、知らない曲がほとんどで、しかもドラムの音が大きすぎて声が聞き取りづらかったし、歌詞も抽象的で、何を伝えたいのかわからなかった。

そんな初対面だったのだが、ライブのMCが不器用だったことをよく覚えている。MCのほとんどが「ありがとう」という言葉で、後は、少しの思い出話とグッズの宣伝だった。この少し下手くそで不器用で、どことなく可愛らしさを感じるMCを聞いたときに、「ああ、この人は言葉で伝えるのが苦手だから、音楽を作っているんだな。」と思ったことを覚えている。自分の感情を言葉で伝えることが苦手だからこそ、自分の感情に真摯に向き合って、歌詞を書いて、曲を作ってきたんだなと伝わってきた。

そうして、少しだけtacicaの事がわかった時に、今では一番好きな歌である「アースコード(ver.118STG)」が演奏された。ライブで聞いたときは、そんなに好きではない曲調だったけど、なんでか妙に印象に残っていて、ライブの後にまた聞きたいと思ったので、ライブのその日に、姉のパソコンから携帯に取り込んで聞き始めた。

最初は歌詞の意味がよくわからなかったし、正直に言えば今も理解しているとは言えない。さらに言えば、私がこの曲に抱く感情も言葉にすることは上手くできないと思う。それでも、自分なりに解釈するなら、「どんなに辛くて忘れたい経験があっても、忘れることなんかできないし、たとえ誇ることの出来ない経験でも消すことなんかできない。未来だって明るいものじゃないし、理想的な未来なんて来ないかもしれない。それでも、今の自分はこれまでの自分の結晶であって、それは未来の自分にとっても変わらない。だから、今までの記憶も経験も、絶望も希望も全部飲み込んで、生きていこう。」 そんな感じの歌なのかなと思っている。

この解釈はあくまで私のものだし、絶対的なものではない。それでも、私にとっては、泥水に光が差すような、仄暗い霧の中に淡い光が差すような、そんな曲なのが、この「アースコード(ver.118STG)」だ。

今この記事を読んでくれている人がtacicaを好きなのかどうかは知らないし、聞いてみて好きになってくれるかもわからない。そんなことはどうでもいい。ただ、私にとって、私の心にすっと入ってくる、そういう曲を作るのはtacicaなんだと思う。歌詞は抽象的で難解でけれども、心の小さな隙間を埋めてくれる、そんな曲を作るのがtacicaだ。

最後になるが、私が「アースコード(ver.118STG)」の中で特に好きな部分の歌詞を載せて、締めくくろうと思う。

偉くもなければ、「すべてを終えよう。」と答える資格もない。

今の今まで憶えた記憶は誇れる?

目で耳で鼻で口で指で刻む今日も自分と呼んだ。

ここからも同じように何時でも奏でる。

アースコードを。

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