005.音楽における「9」という数字

だいぶ久々の記事になる。

・・・毎回これで始まってる気がするが、まあ気が向いたままなのでそうなるのも必然である。

閑話休題。

先日櫻坂46は6月26日(水)に9枚目となるシングル「自業自得」の発売、そして初の3期生から山下瞳月がセンターを務めることが発表された。
今週末には東京ドームでの「4th ARENA TOUR 2024 新・櫻前線 –Go on back?–」追加公演が控えており、ここで初披露されることはほぼ確実であろう。
そして発表と合わせて話題になっていたのが、欅坂46のシングルの8枚目を超えたという話。

これを聞いてクラオタとしての私がすぐ思い出したのが「9番目の呪い」とも言うべきジンクスである。

ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェンを初め、アントニン・ドヴォルザークフランツ・シューベルトといった名だたる作曲家が9番を生み出した後に亡くなっている。
※シューベルトについては、通称「ザ・グレート」と呼ばれる交響曲は元々第7番だったものの、有名な「未完成交響曲」が発見されこれが第8番となった事で改番されて第9番、更に改番されて現在はこちらが第8番となったのでこじつけ感も否めない。

ここで注目したいのはロマン派末期ドイツの作曲家であるグスタフ・マーラー
彼の交響曲の一覧は下記である。

・第1番ニ長調「巨人」
・第2番ハ短調「復活」
・第3番ニ短調
・第4番ト長調
・第5番嬰ハ短調
・第6番イ短調「悲劇的」
・第7番ホ短調「夜の歌」
・第8番変ホ長調「千人の交響曲」
・イ短調「大地の歌」
・第9番ニ長調

「」内の副題はほとんどがマーラー本人に付けられたものではないものの分かりやすくするために敢えて併記したのだが、それは置いといて、1906年に完成した第8番「千人の交響曲」の次の「大地の歌」に番号が付されていない事に注目してほしい。
これこそが第9番への「怖れ」であり、第9番を作曲した後に亡くなった作曲家、特にベートーヴェンを意識して番号を敢えて付さなかったとされている。この「大地の歌」を1908年に完成させ、「交響曲を9曲出しても死ななかった」と安心したマーラーが第9番を1909年に完成させたものの、第10番の作曲に取り掛かった後の1911年に50歳で死去し、「9番のジンクス」に抗う事はできなかった。

この後ロシア(ソヴィエト)の作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチが1945年に第9交響曲を完成させ、1953年に第10交響曲を完成、最終的に1971年完成の第15交響曲まで完成させた他、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトは41曲、「交響曲の父」と云われるフランツ・ヨゼフ・ハイドンは番号付きに限っても104曲と、9番どころではない数の交響曲を生み出している事は補足しておく。

ただ、このジンクスは先のシューベルトの話もありあくまで後の俗説であり、「大地の歌」についても当時の交響曲に必要不可欠なソナタ形式の楽章を欠いているなど、正式な交響曲としてマーラー本人が考えていたかどうかは諸説あるところでもある。

ちなみに今回取り上げたグスタフ・マーラーだが、どこかで聞き覚えはないだろうか?

長い夜は口を閉ざし 星も見えず月は雲に隠れてる
誰かが聴いているのだろう マーラーの憂鬱な交響曲

そう、欅坂46「キミガイナイ」の歌詞の中に登場するあの作曲家である。
ちなみにこの交響曲が何番かという議論も交わされているようだが、第5番というのが有力なようである。
この曲の振りからも容易に推察できるが、「キミガイナイ」の裏には「葬送」の意味が込められており、第5交響曲の第1楽章は正に葬送行進曲(Trauermarsch)である他、この曲が収録されるデビューシングル「サイレントマジョリティー」という言葉を使ったリチャード・ニクソンが1960年の大統領選挙で戦ったジョン・フィッツジェラルド・ケネディの葬儀の際に流された曲もマーラーの第5交響曲(第4楽章)である。

欅坂46も「黒い羊」まで正式に8枚のシングルとしてリリースされたものの、ラストシングル「誰がその鐘を鳴らすのか?」は9枚目のカウントとしてリリースされる事はなく配信限定でリリースされた他、9枚目シングルとなるはずだった「10月のプールに飛び込んだ」はベストアルバム「永遠より長い一瞬 〜あの頃、確かに存在した私たち~」にのみ収録され、その後に欅坂46としての活動を終了した。

「キミガイナイ」でマーラーが使われたのは偶然ではあろうが、その後辿った運命を見ると必然であったような気もしてならない。

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