ウイスキーと私

2021年5月6日 00:39

札幌の Beer+MaltWhisky バー「Maltheads」（モルトヘッズ）です。

今回の受検にあたって失った勘を取り戻すために、土屋守『モルトウイスキー大全』1995年初版巻末についていた「モルトマスターのための練習問題集」で勉強しました。

この本を引っ張り出すと思い出すのですが、実はこの問題集こそが当店Maltheadsの原点なのです。

土屋守『モルトウイスキー大全』との出会い

話は1997年に遡ります。

当時住んでいた東京の新小岩（実家でもあります）で兄の紹介からバーに通うになり、そこでシングルモルトにハマりました。その行きつけのバーでマスターに薦めてもらって知ったのがこの『モルトウイスキー大全』です。

マスターは、当時から著者の土屋守氏と交流のある方でした。

ウイスキーを味わいながら細かい話を聞き、そして貪るようにこの本を読みました。

マスターは当時、古谷三敏の『BAR レモンハート』の監修に近いことをしていました。当時の『レモンハート』を読むと、そのころ実際に飲んだウイスキーがたくさん登場します。「お願いできますよ」と言うので手持ちの本にサインもいただきました（古谷先生に直接はお会いしていません）。

初版『モルトウイスキー大全』巻末には、最初の写真の「モルトマスターのための練習問題集」があります。今からして思えば、土屋氏は当時から「ウイスキー検定」のようなことをやりたかったのでしょうね。

しかし、その後の改訂版（第３版ごろ？）からは掲載がなくなります。初期の版から読んでいる方しかご存知ない貴重な資料かもしれません。

そしてなんとこの問題集には「解答編」がありません。

その分、火が付きました。全問解きたい一心になり、相当に本編を読み込むことができました。完全に解くことはできませんでしたが、この問題集でウイスキーの基礎知識が付いたのは間違いありません。

「ウイスキー検定１級合格は諦めていない」という決意は、当時の自分に対する返答でもあるのです。

この本を薦めてもらったバーは、今から考えてもとんでもないお店でした。オールドボトルだけを取り揃えているバーだったのです。

マスターはいつも「80年代以降のウイスキーはありません」と説明されていました。つまり筆者は70年代のオールドボトルでウイスキーの味を覚えていったのです。

90年代後半といえば、日本では「ウイスキー冬の時代」。スコットランドでもようやくアイル・オブ・アランが創業したくらいでした。

世界的なウイスキーブームにもなる直前ですから、70年代のものでもそれほど目の飛び出る値段ではありませんでした。少なくとも月３回通っても生活には響かない程度。

いま、当時飲んだボトルを見かける機会があるとお値段を確かめるのですが、時間経過を差し引いたとしても、もう手の届かないお酒になっています。

そういうのでお酒にハマったんなら、そりゃ20年も経てばこんな仕事もしてるよ、って感じです。

しかし、筆者はウイスキーのバーデンダーにはならなかったのです。それにはこういう続きがあります。

あるときマスターに「ウイスキーにもソムリエみたいな資格はあるんですか？」と訊いてみました。

すると「ウイスキーでそういう資格はないのですが(*)、ビールにはあるようですよ」、と教えてもらいました。それでビアテイスターの存在を知りました。

＊「スコッチ文化研究所」や「ウイスキーコニサー」ができるのはその後21世紀に入ってからです

「ビールか。同じ麦のお酒だしね～」と興味をもって調べてみると、なんと自宅の沿線にビールの専門店がありました。

それがいまや「ビアバーの聖地」と言われる両国のポパイでした。まだ創業者の青木さんがお店にも立っているころ（タップもまだ15くらいしかなくボトルがメイン）で、青木さんに直接ビールのことをいろいろと教えていただきました。

札幌へ移住してから、あるいは、この仕事を始めてからは、ビールばかりでウイスキーから離れてしまったのは確かです。

幸いにしてビールの方では、開店時からいろいろと繋がりがあったので、Maltheads がビールのお店ということはすぐに認知をしていただけました。一方で、ウイスキーを出しているのはどうして？と訊かれることは今でも多いです。

しかし、決して「片手間」でも「酔狂」でもないのです。
実は店主の原点はウイスキーの方にあるのです。

最後に。この記事のタイトルは、もちろん竹鶴政孝へのオマージュです。

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