見出し画像

噛まれても、噛まれてもなお

 大概の鳥飼いさんたちは、「血が出ていなければセーフ」という謎のルールを適用している。どんなに痛くても、内出血で済めば噛まれたうちに入らないという、鳥さん溺愛ルールだ。

 言葉を発することのない鳥さんにも、色々言い分があろう。その気になれば一瞬で流血させる能力を持ちながら、内出血で済んだのであれば、それは鳥さんとしてはかなり加減してくれたと言うべきなのだ。

画像1

 鳥についてよく知らなかった頃、鳥は皆、柔らかい芋虫や木の実などを食べているのだと思っていたから、なぜこんなに小さい体でこんなに強い力があるのだろうと驚いたものだったが、今となっては、くっきりとクチバシの形に内出血し、かすかにしびれる指をさすりながら、「血が出ていないからセーフ」などと呟く余裕の中に、すっかり全てを飲み込んでいるのだから、人間の適応能力はなかなかのものだと思う。

 なればこそ、我々は鳥さんの快適な生活を守る為、鳥さんの健康に留意し、食事を整え、ケージを清潔に保ち、楽しい遊びを提供し、ありったけの愛情を注ぐ。

 まったく、噛まれても噛まれても、鳥さんは愛おしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?