夢を食べる
家の近所に小さな物件がある。店の大きさは3畳ぐらいだろうか。
駅から近いし、以前使っていた人が今風に可愛くリノベーションしたので、見栄えはいい。しかし、そこで商売をはじめた人はなぜか半年ほどで店じまいをする。
時にはシューズリペアの店だったり、北欧の雑貨屋さんだったりと職種も広い。それなのに、店はなかなか長続きしない。
不景気だから、と言われるかもしれないが、他の店はそんなにすぐに潰れないで長く続いている。
他の場所でも、その特定の店だけコロコロ変わるというのがある。風水がよくないのだろうか?
ということで、家に帰る途中ふとあの物件を見ると、新しくメンズ用のカジュアルショップができていた。小さな店のなかに所狭しとTシャツやらパーカーなどがディスプレイしてある。
どうやらオーナーは若い男子のようだ。店のなかでひとりポツンといる。
翌日の夜、店の前を通ると、店のオーナーは、黄色い「2割引き」のシールがついた大きな菓子パンを店の外で齧っていた。
もしかしたらあれは夕飯なのだろうか?
もし、そうであっても一城の主なのだ。多分、洋服が好きで自分が好きな洋服に囲まれながらそれを仕事にしたいという夢が叶って頑張っているに違いない。
そうであれば、賞味期限ギリギリの大きな菓子パンが夕飯でも我慢できるかもしれない。
なんか夢を食べているみたいだな、と思って家路についた。
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