【短編小説】雨の日に傘を閉じて・後編
そんな俺も執行役員まで昇り詰めたものの "会社を乗っ取ること" は辞めた。周囲からは「もっと早く独立すると思っていた」「このまま本当に天辺取ると思っていた」と散々言われたが、そういう期待を裏切るのもまた清々しい。
そして退職の日に社長からもらったのが、例の傘。新品をプレゼントされたんじゃない。
『俺の傘だけど、お前にやるよ』そんな感じだった。
*
社長は俺のために、何人かの幹部で簡素な "送別会" を開催してくれた。
肩書の付いたお硬い連中であったため、一次会で退散し