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掌編・短編集

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単発の掌編、短編小説を集めたマガジンです。様々なジャンルを展開します。
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#官能

【短編】BACK 〜裏垢男子の徒然

男は裸の背中に4本指でそっと触れると、女は身じろぎした。 そのまま、触れるか触れないかのタッチでうなじから背筋に指を滑らせると、女は仰け反らせ声を漏らした。 腰のくびれの辺りまで下りた時、今度は手を逆手にして撫で上げていく。 「あぁん、レイくん」 女は声を挙げたが男の表情は変わらない。楽しんでいる様子はなく、ただ冷静に反応を見ているだけ、という風な目。 女は背中が性感帯だと言う。だから背中を舐めて欲しいのだ、と。白くツルツルしていて、背面にも脱毛で金をかけるのだろうか

祈りの声が響く 〜たしかなことばをつづれ another tale 3

「どうしよう」 くぐもった遼太郎さんの声。彼に頭から抱きかかえられている。 街角の路上。 行き交う人達も特に気にすることはない、クリスマスの夜。 「どうしましょう」 私も合わせるように言った。たぶん同じことを考えている。 「離れたくない」 「…はい」 それで、一緒にメトロに乗り込んだ。 * * * * * * * * * * * 遼太郎さんにしばらくぶりに呼び出された。 彼は6つ上の元上司で、ずっと憧れの存在だった。 私が今年退職した後、偶然街で再会し、それをき