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のこりもの【全4話】

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同期から”残念なイケメン”と言われてしまったアラサーサラリーマン、飯嶌優吾の恋愛奮闘記。いつも残り物のお惣菜を買うスーパーでレジを打つ女性が気になっているのだけど、割引された残り… もっと読む
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のこりもの【1/4】

そのスーパーは20時を過ぎると、お惣菜が安くなる。 そこら辺にいる人はみんな、店員さんが20%引きシールの上に50%のを貼るのを、今か今かと待ち構えている。 僕は一人暮らしで、毎日仕事帰りにこのスーパーに寄って、安くなるお惣菜を買って帰る。 でも毎日寄るのは、お惣菜のためだけじゃないんだ。 -------------------------------------- 入社して5年、この街で一人暮らしを始めて3年たった。 後輩も増えて「まだ20代」と思っていても、周

のこりもの【2/4】

数日後。 僕はいつものようにスーパーのレジに、彼女の列に並ぶ。 しかし今日のカゴの中は、割引シールの貼られた惣菜じゃない。 缶ビール2本。お菓子など細々したものをなるべくたくさん。 彼女が商品のバーコードを読み取らせている間、僕は身体中が心臓にでもなったような気分になっていた。 ウカウカしていると商品が全て読み取り終わってしまう。 僕は意を決して口を開いた。 「あ、あの…」 彼女は無言で僕の顔を見る。 「あの…その…」 「何でしょうか?」 怪訝顔の彼女。 「

のこりもの【3/4】

「…こんばんは」 背後から声をかけられてハッとする。 水曜の18時45分。駅の改札で彼女と待ち合わせをした。 彼女のシフトが休みの日に合わせて、僕がなるべく早めに会社を上がった。 「あ、じゃ、じゃあ、行きましょう…」 僕はオドオドしまくりだ。こんなことではいけない。 彼女もぎこちない表情で付いてくる。 僕たちは駅の近くの和風居酒屋へ入った。 本当は小粋なイタリアンなどに入りたかったが、僕はこんな状態のうちに、かしこまったレストランのテーブルに着いて向かい合わせて座

のこりもの【4/4】

気がつくと、明るかった。 自分の部屋だ。 着替えもせずに寝ていたようだ。 あれ、僕は何をしていたっけ、と考えた瞬間、飛び起きた。 時計は9:24を指している。 「やっちまった…」 スマホを見ると何度も上司から着信が入っていた。 「すみません。今起きました…」 恐る恐る電話をすると、上司は『生きてるんならとりあえず良し。早く来い』と言って切った。 大急ぎで支度をしながら、僕は昨夜、美羽さんと会っていたのだと思い出す。 あれ、でも僕は家で寝ていた。 どうやって帰