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エッセー【沼】秘密たちの屍骸

「これは知られたらマズい」とか「こんなことをしている(していた)自分を知られたら軽蔑される」みたいなどろりとした何かを抱えている人は、同じようなものを抱えた人を巧妙に嗅ぎ分けて、まるでドブさらいをお願いするかのように底の見えない沼を見せ合う。

ドロドロに手を突っ込んでもらうと自分でも思いもよらない物が出てきたりして、自分でも知らなかった自分の感情や「あの時の私は、そうだったんだ」というような発見があったりして。

そんな風にドロドロに手を突っ込み合っていると、お互いのドロドロが段々と入り混じって、これは私の感情だっけ? あなたの記憶だっけ? どれがどちらか分からなくなりやがてひとつの深い沼になる。

そういう「沼」を共有する関係性は、とても危険で心地よい。沼の深淵で、何も聞かず、何も見ず、秘密たちの屍骸を抱きしめて死んだように眠る。

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