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【書評】〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション

ミテラボの会わない読書会という企画で読んだ「〈弱いロボットの思考〉 わたし・身体・コミュニケーション」について書評を書いていきます。


最近気づいたのですが、言葉としてアウトプットするときの方法(ミドルプット)として、視覚的にまとめる方が自分に向いていることがわかったので、手書きで全体をまとめてみました。

200927弱いロボットの思考

全体は8章で構成されており、様々な〈弱いロボット〉を通して、コミュニケーションや関係性について述べられていました。ロボットと人との関係の話がメインでしたが、人間同士にも共通する点が多く、興味深く読ませていただきました。

ちなみに、〈弱いロボット〉と聞いてまず頭に思い浮かんだのは、いつかの情熱大陸で知ったLOVOTでした。LOVOTを紹介していた際も、「役に立たないロボット」というキャッチフレーズが使われていた気がします。


■環境による価値基準の変化~目玉ジャクシロボット

本書の中で一番興味深かったのは第3章に出てきた〈目玉ジャクシの原初的サッカー〉です。一言でいうと、集団での遊びの中でどのような調整がおこなわれ、維持されているかを考えるために作られたCGによるシミュレーションです。目玉ジャクシたちは、自らの行動基準を自問自答する要素を備えているため、下記の2つの欲求を調整します。

・ボールをひたすら一人で追いかけるべきか=自己充実欲求を優先すべきか)

・他の目玉ジャクシの近くにいて一緒に遊んだほうがいいいのか=繋合希求性を優先すべきか

周りにどちらを優先する目玉ジャクシがいるかによって、目玉ジャクシごとに価値基準が変わるわけですが、本書では「社会的なニッチの獲得」という言葉でも表現していました。人間で言い換えると、会社内で自分が発揮できる強みや、人と差別化できる点にフォーカスして、自らの居場所を作っていくことと同じだなと感じました。


■共同行為を生み出すためのポイント~強みと弱みを互いに補完する

お掃除ロボットが家の障害物にぶつかりながら動いている⇒お掃除ロボットの姿を見た人間が先回りして障害物をよける⇒最終的に「部屋のなかをお掃除する」という目的を果たす

この共同行為を例に挙げ、筆者は共同行為を生み出すポイントとして、「お互いの〈強み〉を生かしつつ、同時にお互いの〈弱さ〉を補完しあ」うことを挙げていました。

先に述べたように、わたしたちの共同行為を生み出すためのポイントは、自らの状況を相手からも参照可能なように表示しておくことである。「いま、どんなことをしようとしているのか」「どんなことに困っているのか」、そうした〈弱さ〉を隠さず、ためらうことなく開示しておくことで、お掃除ロボットは周りの手助けを上手に引き出しているようなものである。もう一つのポイントは、相手に対する〈敬意〉や〈信頼〉のようなものではないだろうか。お互いの〈弱い〉ところを開示しあい、そして補い合う。一方で、その〈強み〉を称えあってもいる。 ※本書p.204より

よく、リーダーシップ関連の書籍で言われているような「弱みを見せられるリーダーは、メンバーに助けてもらえる」という話を思い出しました。

「リーダーとして弱さを見せよう」という表現だと、何をしたらよいのかわかりにくい部分がありますが、お掃除ロボットのように「メンバーが一緒に参加するための余地や余白を残そう」という表現で考えると、具体的な行動に移しやすいかもしれませんね。


自分では選ぶことがないジャンルの本だったので、はじめは自分の興味関心に結びつく点があるのか不安でしたが、読んでみると大変わかりやすく、いつもと違った視点からコミュニケーション・関係性を捉えられる内容でした。