オラの国へ

「そうだ、スペインに行こう!」

翌年3月末で退職し、日本を出発するのは4月と決めると半年しかない。  留学をサポートしてくれるエージェントを探し、面接して希望を伝えた。 よくよく考えると「スペイン」について何も知らないことに気が付いた。 どこに行きたいですか?と聞かれてもマドリッドとバルセロナしか知らない。大きな街に行って大丈夫かなと思い、とにかく自分の状況からどこが良いかアドバイスをいただきながら、、、スペイン、アンダルシア州のマラガという街に決まった。マラガ? 聞いたことない、どこにあるの、日本人一人で大丈夫なの?

マラガといってもマラガではなく、そこから電車で20分くらいかかるベナルマデナという街にある語学学校に決まった。そこには日本人のスタッフがいるので右も左もわからない私に良いのでは・・・とのことらしい。とにかく行き先を決め(航空券の手配も保険の手配もお願いし)大使館や警視庁に行って必要書類を集めた。問題は職場にいつ辞めることを言うか、だった。 下働きとは言っても経理にかかわっていると決算があり、政治資金の決算は12月で報告書の提出は3月末、普通なら悠々とクリアーできるはずなのだが…私は3月末で退職するとなるとかなり慌ただしい。引継ぎもある。3か月前に言うとなると1月には言わないといけない。

そしてもう一つの問題は語学、スペイン語だ。6カ月しかない。慌ただしくセルバンテス東京(スペイン国営のスペイン語学校)に受講申し込みをして「付け焼刃」を始めた。その頃はスペイン語を話せなくても「スペインに行く!!」という気持ちは揺らがず、仕事辞めることに酔っていたような・・とにかく仕事を終わらせて日本を飛び出すことにすべてをかけていた。    スペイン語を話せなくて大丈夫なの?という心の声は聞こえていなかった。   実際クラスでは初心者と言ってもある程度話せたり、文法を学んだことがある人が多く、まったくの初心者は私一人。先生(メキシコ人の)が質問していることもわからない状態だった。そんな私がスペインに立つ直前にみんなに宣言したとき「ザワッ」としたような気がした。

「辞めよう」と思ったきっかけの一つは決めた一年か二年前に面接があり、「そろそろ自分の人生を考えたらいいんじゃないか」みたいなことを言われたのが引き金になっている。「辞めろ」ということですか?と聞くと「いや、そういうことじゃないよ」「じゃ、なんなのよ」と心の声。     その頃から辞めてどうするか、まだ元気だから家にいて何もしない、訳にはいかないし、多分後悔するだろう。上司から言われてからその後何も言われないのを良いことに2年位ぐずぐずしていた。が、いつまでもこのままいて「辞めろ」と言われて辞めるのはごめんだ、と思ったときに、ケーナの先生との話がポンと背中を押してくれたように思う。背中を押されたらもう止まらない。

期間は一年、とにかく一年、旅行じゃない、住むんだ。スペインに住むんだ。決めてからの半年はあっという間に過ぎ、日本を後にしたのは桜が満開の時だった。

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